隆慶一郎の略歴
隆慶一郎(りゅう・けいいちろう、1923年~1989年)
時代小説家。脚本家。
東京の生まれ。東京市赤坂尋常小学校を卒業。同志社中学校を卒業。第三高等学校文科丙類を繰り上げ卒業。東京大学文学部仏文科を卒業。本名は、池田一朗(いけだ・いちろう)。
『隆慶一郎を読む』の目次
口絵◉隆慶一郎に逢う
第1章 隆慶一郎かく語りき
【対談】日本史 逆転 再逆転 縄田一男+隆慶一郎
【インタビュー】家康は関ヶ原で殺された [聞き手]植村修介
第2章 隆慶一郎論――その魅力と文学の世界
隆慶一郎論 かぶいた神々の群れ 縄田一男
わがブルース隆よ…… 宮本昌孝
異形性の文学 隆慶一郎の世界 山口昌男
【対談】隆慶一郎の世界 網野善彦+縄田一男
「無縁・公界・楽」の行方 網野善彦
隆慶一郎と小林秀雄 秋山駿
歴史の陰を描いた作家 小和田哲男
時代小説の再規範化 山口昌男
生き遅れた若者たち 森村誠一
隆慶一郎と池田一朗 長部日出雄
ドン・キホーテの唄 隆慶一郎の中のフランス 羽生真名
闇の時代小説家 隆慶一郎の謎 安宅夏夫
【鼎談】歴史小説の流れを変えた異才 池宮彰一郎+小和田哲男+縄田一男
第3章 追憶の隆慶一郎
永遠なる彗星――隆慶一郎 安部龍太郎
隆先生のこと 漫画のこと 原哲夫
眼前の山 北方謙三
チャンバラ復活 逢坂剛
黄昏――病院にて 羽生真名
第4章 隆慶一郎の読み方・味わい方
『かくれさと苦界行』 縄田一男
『風の呪殺陣』 縄田一男
『捨て童子・松平忠輝』その1――◉隆慶一郎の人と作品 縄田一男
『捨て童子・松平忠輝』その2――◉骨太に闊達に描き切った「鬼」と「人」との凄絶な暗闘 倉本四郎
『見知らぬ海へ』 縄田一男
『死ぬことと見つけたり』その1 縄田一男
『死ぬことと見つけたり』その2――◉【対談】男の生き方、男の死に方 清原康正+縄田一男
『一夢庵風流記』 秋山駿
『花と火の帝』 秋山駿
『柳生非情剣』 山口昌男
『かぶいて候』 縄田一男
『影武者徳川家康』その1 縄田一男
『影武者徳川家康』その2――◉その虚実皮膜を楽しむ 小和田哲男
『鬼麿斬人剣』 縄田一男
第5章 名作再録 隆慶一郎
【小説】柳枝の剣
【小説】異説猿ヶ辻の変
【小説】死出の雪
第6章 隆慶一郎 年譜+全作品リスト 新潮社[編]
第二回柴田錬三郎賞受賞における選評――『一夢庵風流記』
著者・執筆者略歴
『隆慶一郎を読む』の概要
2010年10月22日に第一刷が発行。『歴史読本』編集部。新人物往来社。319ページ。ソフトカバー。148mm×210mm。A5判。
歴史時代小説を数多く残した作家・隆慶一郎のすべてをまとめた著作。交流のあった文芸評論家から長女の羽生真名(はにゅう・まな、1951年~)、またさまざまな作家たちの文章も掲載されている。
最初の口絵には、隆慶一郎自身や書斎、自筆原稿、万年筆や眼鏡、名刺、扇子などの遺愛品の写真も。
文庫本などの解説や雑誌のインタビューなどが集められたり、多くの文芸評論家や作家が書き下ろしたりした文章がまとめられている。
隆慶一郎に影響を与えた歴史学者・網野善彦(あみの・よしひこ、1928年~2004年)。
『一夢庵風流記』を『花の慶次 ―雲のかなたに―』として、小説『影武者徳川家康』を同名の漫画『影武者徳川家康』へと描いた原哲夫(はら・てつお、1961年~)。
隆慶一郎が最後に会いたがった男とも呼ばれる作家・安部龍太郎(あべ・りゅうたろう、1955年~)。
最後に「著者・執筆者略歴」があるので確認しやすいのもポイント。
以下、著者・執筆者の概要を列挙。
縄田一男(なわた・かずお、1958年~)…文芸評論家。東京都の主神。専修大学大学院文学研究科博士課程を終了。
宮本昌孝(みやもと・まさたか、1955年~)…作家。静岡県浜松市の出身。日本大学芸術学部を卒業。
山口昌男(やまぐち・まさお、1931年~2013年)…文化人類学者。北海道網走郡の出身。網走中学校、網走高等学校(現在の北海道網走南ヶ丘高等学校)を卒業。東京大学文学部国史学科を卒業。東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻修士課程を修了。
網野善彦(あみの・よしひこ、1928年~2004年)…歴史学者。山梨県笛吹市の生まれ。幼少期に東京に転居。東京高等学校尋常科、高等科文科、東京大学文学部国史学科を卒業。
秋山駿(あきやま・しゅん、1930年~2013年)…文芸評論家。本名は、同じ表記で読みの異なる秋山駿(あきやま・すすむ)。東京都の生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科を卒業。報知新聞社を経て、評論活動を行なう。
小和田哲男(おわだ・てつお、1944年)…歴史学者。静岡県静岡市の生まれ。東京都の育ち。私立城北高等学校を卒業。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修を卒業。早稲田大学大学院文学研究科博士課程を満期退学。後に文学博士を取得。
森村誠一(もりむら・せいいち、1933年~)…作家。埼玉県熊谷市の出身。埼玉県率熊谷商業高等学校を卒業。青山学院大学文学部英米文学科を卒業。1969年に『高層の死角』で江戸川乱歩賞を受賞。
長部日出雄(おさべ・ひでお、1934年~2018年)…作家。青森県の生まれ。早稲田大学第二文学哲学科を中退。1973年に『津軽じょんから節』と『津軽世去れ節』で直木賞を受賞。
羽生真名(はにゅう・まな、1951年~)…作家・隆慶一郎(池田一朗)の長女。旧姓名・池田真名(いけだ・まな)。東京生まれ。日比谷高校、上智大学哲学科を卒業。
安宅夏夫(あたか・なつお、1934年~2020年)…文芸評論家。本名は、安宅敏雄(あたか・としお)。石川県金沢市の生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業。高校の国語教員を経て作家に。
池宮彰一郎(いけみや・しょういちろう、1923年~2007年)…作家。東京都の生まれ。静岡県沼津市の育ち。静岡県立沼津商業学校を卒業。1992年に『四十七人の刺客』で新田次郎文学賞を受賞。1999年に『島津奔る』で柴田錬三郎賞を受賞。
安部龍太郎(あべ・りゅうたろう、1955年~)…作家。福岡県八女市生まれ。久留米工業高等専門学校機械工学科卒業。2004年に『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞、2013年に『等伯』で第148回直木賞を受賞。
原哲夫(はら・てつお、1961年~)…漫画家。東京都渋谷区の生まれ。埼玉県越谷市の育ち。私立本郷高等学校デザイン科を卒業。駒澤大学仏教学部を中退。代表作に『北斗の拳』、『花の慶次』など。
北方謙三(きたかた・けんぞう)…作家。佐賀県唐津市の生まれ。後に神奈川県川崎市に転居。私立芝中学校・高等学校、中央大学法学部を卒業。1982年に『眠りなき夜』で日本冒険小説協会大賞と吉川英治文学新人賞を受賞。
逢坂剛(おうさか・ごう、1943年~)…作家。東京都の生まれ。私立開成中学校・高等学校、中央大学法学部を卒業。博報堂に勤務しながら作家活動。1986年に『カディスの赤い星』で日本冒険小説協会大賞を受賞。翌1987年に同作で、直木賞と日本推理作家協会賞を受賞。
倉本四郎(くらもと・しろう、1943年~2003年)…文芸評論家。兵庫県神戸市の生まれ、熊本県天草市の育ち。熊本電波高校を卒業。新聞社や雑誌社を経て、フリーに。
清原康正(きよはら・やすまさ、1945年~)…文芸評論家。満州鞍山の生まれ。同志社大学を卒業。出版社勤務を経て執筆活動に従事。1993年に『中山義秀の生涯』で大衆文学研究賞を受賞。
『隆慶一郎を読む』の感想
隆慶一郎に一時期かなりハマって読み漁った。
何なら全ての作品を再読している。
というわけで、隆慶一郎の関連書籍。
隆慶一郎の長女である羽生真名の文章も。羽生真名で言えば『歌う舟人 父隆慶一郎のこと』という著作もある。こちらもオススメである。
その他にも、歴史時代小説を描く小説家たちの言葉も。
北方謙三や逢坂剛など。
北方謙三の作品はいくつか、逢坂剛の作品は大半を読んだことがあるので、この辺りもとても興味深かった。
基本的に文芸評論家の縄田一男などの文章は、文庫作品の解説などと重複する感じではある。
ただ、それを一つにまとめて、一気に読むことができるというのが大きな特徴。
ページ数は、そこまで多くないが、内容はかなり濃厚なので、じっくりと時間をかけて読むのが良いかも。
また、カラーではないが、要所要所に、さまざまな隆慶一郎のプライベート写真が載っているのも、魅力の一つである。
隆慶一郎の作品を好きな人、さらに深く、その背景を知りたい人などには、非常にオススメの本である。
歴史学者・網野善彦の著作や、他の作家の歴史時代小説の作品など、手を広げていくのに良い契機になるかもしれない。