安部龍太郎『血の日本史』

安部龍太郎の略歴

安部龍太郎(あべ・りゅうたろう、1955年~)
小説家。
福岡県八女市の生まれ。久留米工業高等専門学校機械工学科を卒業。
2004年『天馬、翔ける』で第11回中山義秀文学賞、2013年『等伯』で第148回直木賞を受賞。

『血の日本史』の目次

大和に異議あり
蘇我氏滅亡――前編
蘇我氏滅亡――後編
長屋王の変
応天門放火
鉄身伝説
北上燃ゆ
陸奥の黄金
比叡おろし
鎮西八郎見参
六波羅の皇子
鬼界ガ島
木曽の駒王
奥州征伐
八幡宮雪の石階
王城落つ
異敵襲来
大峰山奇談――前編
大峰山奇談――後編
霧に散る
山門炎上
道灌暗殺
末世の道者
松永弾正
余が神である
沈黙の利休

姦淫
大坂落城
忠長を斬れ
浪人弾圧
男伊達
雛形忠臣蔵
お七狂乱
団十郎横死
絵島流刑
加賀騒動――前編
加賀騒動――後編
世直し大明神
外記乱心
大塩平八郎の乱
銭屋丸難破
寺田屋騒動
孝明天皇の死
竜馬暗殺
俺たちの維新
解説 縄田一男

『血の日本史』の概要

1993年8月25日に第一刷が発行。新潮文庫。624ページ。

1990年12月に刊行した単行本を文庫化したもの。

日本の通史を基にした時代小説。

527年の“筑紫国造・磐井、征神羅軍を阻み叛乱”の「大和に異議あり」から、1877年の“西南戦争起こり隆盛自刃、翌年の大久保利通暗殺”の「俺たちの維新」までの歴史的事項を、それぞれ短編に仕上げてある。

以下、各種の短編ごとの主要人物を列挙。

筑紫磐井(ちくしのいわい、生年不詳~528年?)…6世紀前半の豪族。

蘇我入鹿(そがのいるか、611年?~645年)…飛鳥時代の豪族。
山背大兄王(やましろのおおえのおう、生年不詳~643年)…皇族。
中大兄皇子(なかのおおえのおうじ、626年~672年)…第38代天皇・天智天皇(てんじてんのう)。

長屋王(ながやおう、676年 or 684年~729年)…官吏。高市皇子(たけちのおうじ、654年?~696年)の長男。

伴善男(とものよしお、811年~868年)…公卿。

平将門(たいらのまさかど、903年?~940年)…関東の豪族。

源頼義(みなもとのよりよし、988年~1075年)…平安時代中期の武士。河内源氏の第2代目の棟梁。

源義家(みなもとのよしいえ、1039年~1106年)…平安時代後期の武将。源頼義の長男。

仁寛(にんかん、生年不詳~1114年)…真言宗の僧。阿闍梨。後に蓮念(れんねん)と改名。

源為朝(みなもとのためとも、1139年~1170年)…平安時代末期の武将。後に、九州に追放され一帯を制覇し、鎮西八郎と名乗る。

平清盛(たいらのきよもり、1118年~1181年)…平安時代末期の武将で公卿。

俊寛(しゅんかん、1143年~1179年)…真言宗の僧。

源義仲(みなもとのよしなか、1154年~1184年)…信濃源氏の武将。木曽義仲(きそ・よしなか)の名でも知られる。

源頼朝(みなもとのよりとも、1147年~1199年)…鎌倉幕府の初代征夷大将軍。

源実朝(みなもとのさねとも、1192年~1219年)…鎌倉幕府の第3代征夷大将軍。
公暁(くぎょう、こうきょう、1200年~1219年)…僧侶。鎌倉幕府の第2代将軍・源頼家(みなもとのよりいえ、1182年~1204年)の子供。

後鳥羽天皇(ごとばてんのう、1180年~1239年)…第82代天皇。

護良親王(もりよししんのう、1308年~1335年)…皇族。後醍醐天皇(ごだいごてんのう、1288年~1339年)の子供。

高師直(こうのもろなお、生年不詳~1351年)…武将。室町幕府の初代征夷大将軍・足利尊氏(あしかがたかうじ、1305年~1358年)に仕える。

太田道灌(おおた・どうかん、1432年~1486年)…関東の武将。
上杉定正(うえすぎ・さだまさ、1443年 or 1446年~1494年)…武将、守護大名。扇谷定正の名でも知られる。

大内義隆(おおうち・よしたか、1507年~1551年)…武将、守護大名。
陶隆房(すえ・たかふさ、1521年~1555年)…大内氏の家臣、武将。後に晴賢(はるかた)と改名。

松永久秀(まつなが・ひさひで、1508年 or 1510年~1577年)…武将。大和国の戦国大名。官位を合わせた松永弾正(まつなが・だんじょう)の名で知られる。

織田信長(おだ・のぶなが、1534年~1582年)…武将、戦国大名。

千利休(せんのりきゅう、1522年~1591年)…茶人。

豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし、1537年~1598年)…武将、大名。
豊臣秀次(とよとみ・ひでつぐ、1568年~1595年)…武将、大名。秀吉の姉・日秀尼(にっしゅうに、1534年~1625年)の長男。

烏丸光広(からすまる・みつひろ、1579年~1638年)…公卿、歌人、能書家。

豊臣秀頼(とよとみ・ひでより、1593年~1615年)…武将。豊臣秀吉の三男。

徳川忠長(とくがわ・ただなが、1606年~1634年)…大名。江戸幕府の第2代将軍・徳川秀忠(とくがわ・ひでただ、1579年~1632年)の三男。

由比正雪(ゆい・しょうせつ、1605年~1651年)…軍学者。

水野成之(みずの・なりゆき、1630年~1664年)…旗本。水野十郎左衛門(みずの・じゅうろうざえもん)の名で知られ、旗本奴の代表的人物の一人。

八百屋お七(やおやおしち、1668年?~1683年)…江戸本郷の八百屋の娘。放火事件により火刑に処されたとされる。

市川団十郎(いちかわ・だんじゅうろう、1660年~1704年)…元禄歌舞伎を代表する江戸の役者。

絵島(えじま、1681年~1741年)…大奥の役職の大年寄。表記は“江島”とも。

大槻朝元(おおつき・とももと、1703年~1748年)…通称は、伝蔵(でんぞう)。加賀藩の藩士。

佐野政言(さの・まさこと、1757年~1784年)…旗本。通称は善左衛門(ぜんざえもん)。

松平忠寛(まつだいら・ただひろ、1791年~1823年)…旗本。通称は、松平外記(まつだいら・げき)。

大塩平八郎(おおしお・へいはちろう、1793年~1837年)…儒学者、大坂町奉行組与力。

銭屋五兵衛(ぜにや・ごへえ、1774年~1852年)…加賀の商人、海運業者、金沢藩の御用商人。

島津久光(しまづ・ひさみつ、1817年~1887年)…武士、政治家。島津家の第27代の当主であり、薩摩藩の第10代の藩主・島津斉興(しまづ・なりおき、1791年~1859年)の五男。

孝明天皇(こうめいてんのう、1831年~1867年)…第121代の天皇。諱は統仁(おさひと)。称号は煕宮(ひろのみや)。

坂本龍馬(さかもと・りょうま、1836年~1867年)…土佐藩士。

西郷隆盛(さいごう・たかもり、1828年~1877年)…武士、政治家、陸軍軍人。
大久保利通(おおくぼ・としみち、1830年~1878年)…武士、政治家。

以上のような人物たちの歴史的な物語が短編として描かれる。

解説は、文芸評論家・縄田一男(なわた・かずお、1858年~)で「隆慶一郎が最後に会いたがった男」というタイトル。

つまり、病魔に冒された小説家・隆慶一郎(りゅう・けいいちろう、1923年~1989年)が、最後に会いたがったのが、安部龍太郎であったというエピソードが語られる。

『血の日本史』の感想

安部龍太郎の作品に初めて触れたのがこの『血の日本史』

解説のタイトルにもある通り、隆慶一郎が最後に会いたがったのが、安部龍太郎という事で、さらに興味が湧いたので読んで見る。

まぁ、凄い。本当に、壮大な物語。それぞれが短編ではあるが、連作的な感じでもあるし。

人間の醜さや欲望、祈り、矜持が浮き彫りにされる。

血。性欲。食欲。地位。名誉。家族。家柄。

人間とは愚かである。しかし、希望もなくはない。といった感じ。

日本史好きな人には、非常にオススメ。シンプルに物語も面白いし。

解説も含めて624ページではあるが、一気に読めてしまう著作である。

ちなみに、何故この連作の仕事が安部龍太郎に巡って来たのかという理由は、『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』に詳細が書かれている。

こちらもオススメ。

書籍紹介

関連書籍

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神田明神:平将門

東京都千代田区外神田にある神社。大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなひこなのみこと)とともに、平将門も祀られる。

公式サイト:神田明神

築土神社:平将門

東京都千代田区九段北にある平将門を祀る神社。

公式サイト:築土神社

宝仙寺:源義家

東京都中野区中央にある真言宗豊山派の寺院。源義家の開基。

公式サイト:宝仙寺

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宮城県石巻市渡波にある曹洞宗の寺院。源義家の開基。

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能福寺:平清盛

兵庫県神戸市兵庫区北逆瀬川町にある天台宗の寺院。最澄(さいちょう、766年 or 767年~822年)が804年に創建。平清盛廟とも呼ばれる平相国廟がある。

公式サイト:能福寺

義仲寺:源義仲

義仲寺(ぎちゅうじ)は、滋賀県大津市馬場にある天台宗系の寺院。源義仲の墓がある。松尾芭蕉(まつお・ばしょう、1644年~1694年)の墓もある。
公式サイトは特に無い。

龍穏寺:太田道灌

埼玉県入間郡越生町龍ヶ谷にある曹洞宗の寺院。太田道灌の墓がある。

公式サイト:龍穏寺

達磨寺:松永久秀

奈良県北葛城郡王寺町にある臨済宗南禅寺派の寺院。松永久秀の墓がある。

公式サイト:達磨寺

本能寺:織田信長

京都市中京区下本能寺前町にある法華宗本門流の大本山の寺院。織田信長の最期となる本能寺の変の舞台。

公式サイト:本能寺

さかい利晶の杜:千利休

堺出身の歌人・与謝野晶子と、千利休の記念館。大阪府堺市堺区宿院町西にある。

公式サイト:さかい利晶の杜

功運寺:水野成之

東京都中野区上高田にある曹洞宗の寺院。

水野成之の墓がある。また、高家旗本・吉良義央(きら・よしひさ、1641年~1703年)や、浮世絵師・歌川豊国(うたがわ・とよくに、1769年~1825年)、小説家・林芙美子(はやし・ふみこ、1903年~1951年)の墓も。

公式サイト:功運寺

新勝寺:市川団十郎

千葉県成田市成田にある真言宗智山派の寺院。山号は成田山。

市川団十郎は付近の出身で、成田山・新勝寺で子宝祈願をして跡継ぎとなる長男が授かったと伝わる。屋号・成田屋の由来でもある。

公式サイト:新勝寺

石川県銭屋五兵衛記念館:銭屋五兵衛

石川県金沢市金石本町口にある銭屋五兵衛に関する記念館。

公式サイト:石川県銭屋五兵衛記念館

泉涌寺:孝明天皇

泉涌寺(せんにゅうじ)は、京都市東山区泉涌寺山内町にある真言宗泉涌寺派の総本山の寺院。

孝明天皇などの天皇陵がある。皇室の菩提寺として、御寺(みてら)とも呼ばれる。

公式サイト:泉涌寺

高知県立坂本龍馬記念館:坂本龍馬

高知県高知市浦戸城山にある坂本龍馬に関する記念館。

公式サイト:高知県立坂本龍馬記念館

西郷南洲顕彰館:西郷隆盛

鹿児島県鹿児島市上竜尾町にある西郷隆盛を顕彰する文化施設。西郷隆盛の号である南洲を名前に冠する。南洲公園内にあり、南洲神社もある。小高い丘にあるので、桜島もよく見える場所。

公式サイト:西郷南洲顕彰館
公式サイト:南洲神社