『スモールビジネスの教科書』武田所長

武田所長の略歴

武田所長(たけだしょちょう)
経営者、事業家。
東京大学を卒業後、戦略系コンサルティングファームに入社。
退職後に、20以上のビジネスを展開し、それぞれの売上は年間数百万円~10億円。
トレンディ・ハイリスクなベンチャービジネスではなく「安定・着実」に売上100億円程度を目指すスモールビジネスを推奨。

『スモールビジネスの教科書』の目次

はじめに
序章 スモールビジネスの概要
スモールビジネスとは何か
第1章 スモールビジネスの戦略を立案する
戦略構築ステップ1 自分の経験を振り返り探査領域を定める
戦略構築ステップ2 探査領域において儲かっている企業を発見し儲かる手法を知る
戦略構築ステップ3 対象顧客セグメントを明確にし、バーニングニーズを発見する
戦略構築ステップ4 成功企業の「儲かる手法」を改変しマイナーチェンジコピー品を創出する
第2章 スモールビジネスの戦略を実行する
検討の進め方
事業計画の作成と市場への参入戦略
ラクスル事例から考えるスモールビジネス
代理店と直販の考え方
スモールビジネスを実行する
スモールビジネスその後
謝辞
解説 事業家bot

概要

2022年4月7日に第一刷が発行。実業之日本社。ソフトカバー。231ページ。127mm×188mm。四六判。

3,000万円~100億円の目標売上を、3カ月~2年の期間で、達成させるようなスモールビジネスについて、詳しく解説する著作。

『金儲けのレシピ』の著者であり、経営者でもある事業家bot(じぎょうかぼっと)がプロデュース。解説も書いている。

ちなみに解説に

そこで、私が旧知の仲であり大学時代の同級生でもある武田氏に「スモールビジネスの教科書」という企画を持ちかけ、武田氏に応じて頂いてできたのがこの本だ。(P.228「解説」)

と書かれている。

事業家botは、東大を中退しているという経歴。つまり、大学時代の同級生ということは、武田所長も東大となる。

ベンチャーやリスクテイクといった領域の事業とは異なり、自由度を重視し、オーナーの生き方を制約しないように、自己資本での運営を基本とするスモールビジネスについての教科書。

さらに、2023年11月2日には続編『スモールビジネスの教科書【実践編】』が発売されている。

感想

恐らく、Twitter経由で知ったような気がする。

もともと事業家botをフォローしていて、『金儲けのレシピ』も読んでいた。

武田所長のTwitterもフォローしていた。そのような流れで、この著作も購入。

自分の性格や生き方に合った内容で、とても参考になった。

かなり堅実的な戦略で、スモールビジネスを成功させようという主旨。

歯切れもリズムも良い文章。分かりやすい構成。サクサク読めてしまう。

だが、実際にその内容を、現実に落とし込んでいこうとすると、膨大な思考量と行動量が必要になってくる。

ちなみに、既に二回読んでいる。

でも、まだまだ、血肉となっていないので、もう少し時間を置いてから、さらに読んでみようと思っている。

以下、引用とともに紹介。

スモールビジネスに向いているビジネスの基本条件
基本条件1 課題自体に多くの人が気付きづらい
基本条件2 自分の趣味、経験があるからこそ出来ること
基本条件3 属人性がある
基本条件4 称賛されない
基本条件5 既に類似サービスに金を払っている市場が存在する
(P.20~25までの抜粋「スモールビジネスの概要」)

「属人性がある」というのは、つまりはその人物の人柄や性格、信用、特技、経歴、人脈など。

大規模な事業の拡大を狙っていないスモールビジネスだからこそのポイント。また属人性があることで、他者・他社の参入障壁にもなる。

「称賛されない」というのは、悪どいことをやりなさいという意味ではない。

むしろ、カッコイイこと、オリジナリティーがあること、褒められること、といった、ある種の自己承認欲求を、抑制しなさい。止めなさい、という感じ。

泥臭く、現実を見て、大きなリスクを取らずに、失敗しないように、ビジネスを進めるという方法。

「既に類似サービスに金を払っている市場が存在する」というのは、それまでの基本条件のまとめ的なもの。

ゼロから作り出すのではなく、既存の類似サービスを、丹念に勉強、研究しなさい、という方向性。

大企業は、かなり多くの機会損失を出しているので、スモールビジネスでは、そこを狙っていくと効果的であるという話。

スモールビジネスの戦略立案骨子
スモールビジネスでは革新的なことは目指さない。そうなってくるとアイデアを考える方法はシンプルである。

・自分の経験を振り返り探査領域を定める
・探査領域に儲かっている企業を発見し、儲かる手法を知る
・対象顧客セグメントを明確にし、バーニングニーズを発見する
・成功している企業の「儲かる手法」を改変し、マイナーチェンジコピー品を創出して大手が捨てた市場の一部を頂く
(P.36「第1章 スモールビジネスの戦略を立案する」)

先述の、スモールビジネスに向いている基本条件に対して、さらに具体的に戦略立案の骨子についての提示。

ざっくりとまとめてしまえば、自分の強みを活かしながら、対象顧客を定めて、成功している企業の儲かる手法を応用して、スモールビジネスに落とし込む、というスタイル。

文章にしてしまうと簡単なように思えてしまうが、かなりの調査が必要である。

後の記述にあるが、武田所長は、新しい業界への参入を検討する際には、業界紙や業界本を10冊ほどは購入するとのこと。

何よりも見るべきは行動なのである。
このニーズに対して人は金を使っているのか? いないならばそれは取るに足らないと、少なくとも顧客自身は考えているということだ。ここで重要なのは、あなたではなく、顧客自身が金を使うほど重要なニーズだと思っているか否かである。(P.69「第1章 スモールビジネスの戦略を立案する」)

自分の考えや理想、哲学を押し付けてはいけない、というもの。

そのような個人的な観念や観点ではなく、顧客の行動、つまり顧客が何にお金を払っているか、をしっかりと見極めなさい、ということ。

これは、またスモールビジネスに向いている基本条件の4にある「称賛されない」にも、つながってくる。

自分の考えで、誰もやっていないことを、実行して、成功したい。褒められたい。

そのようなものはダメ。顧客の行動を、観察してスモールビジネスを考えなさいということである。

自分がしそうな失敗は既に他人がしてくれている。多くの淘汰を経た結果としてビジネスモデルが存在するのだ。他人が落ちた落とし穴にもう一度あなが落ちる必要はない。ゼロベースで課題解決案を考えるという思考は、プロ中のプロのみに許された道である。素人が挑むには危険過ぎる方法なのだ。(P.76「第1章 スモールビジネスの戦略を立案する」)

この部分も、先述の内容と関連している。

ゼロからオリジナルで考えるのではなく、今あるもの、成功しているもの、稼いでいるものから学びなさい、という主張。

この辺りは、そこそこ、繰り返される内容。つまり、多くの人が、陥ってしまう罠であるということ。意識的に注意しなければならない。

「自分は普通に求められているものを普通に納品する」
これでよい。当たり前と言われることが出来れば実は世の中の上位0.1%くらいにはなれる。いや、さらに上位かもしれない。スモールビジネスの運営にイノベーティブやリスクテイクなど全く必要ないのだ。普通に努力して欲しい。(P.162「第2章 スモールビジネスの戦略を実行する」)

第1章では、スモールビジネスの戦略を立案する、第2章では、スモールビジネスの戦略を実行する、といった内容。

ではあるが、やはり、とてもシンプルな点に注意しなさいと伝えている。

求められているものを、普通に納品。

なので、求められている、つまり、バーニングニーズを、正確に把握するというのが肝か。

あとは、淡々と普通に業務をこなして、納品しなさい、というもの。

論理というのは、現実世界を戦う武器として非常に頼りないことを重々承知して欲しい。特に論理的思考力が高い人は、論理というものに価値を置き過ぎる傾向がある。

論理という虚構よりも現実から始めなさい!(P.174「第2章 スモールビジネスの戦略を実行する」)

論理は、意外に創り上げることが可能。

でも、それって、現実なの?

ちゃんと顧客がお金を払ってくれるの?

という強いメッセージ。

論理の積み上げよりも、まずは、顧客の行動、現実を見詰めて、サービスを提供しなさい、というもの。

ロジカルシンキングに強い人は、特に意識した方が良いかもしれない。

別に、論理ではなくて、情緒を大切にしなさい、という意味ではない。

繰り返しになるが、顧客がお金を払うかどうか、が重要という話。

いやはや、着実に安定的に稼ぐのは、ある種の修行に近いのかもしれない。

フリーランスや個人事業主はもちろん、自由度の高いビジネスをしたい学生にも、オススメの著作である。

また「聴く読書」として、Audible(オーディブル)のオーディオブックの利用も。移動や運動の際に、ながら聴き出来るのがメリットである。

書籍紹介

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