板坂元『続 考える技術・書く技術』

板坂元の略歴

板坂元(いたさか・げん、1922年~2004年)
日本文学者、評論家。
中国南京の生まれ。東京大学文学部国文科を卒業。専攻は江戸文学。
ケンブリッジ大学、ハーバード大学で教鞭を執る。

『続 考える技術・書く技術』の目次

1-なぜ書けないか
2-収集と整理
3-考え方・まとめ方
4-書き方
5-時間
6-心がけ
7-態度と責任
あとがき

『続 考える技術・書く技術』の概要

1977年9月20日に第一刷が発行。講談社現代新書。195ページ。

1973年8月31日に第一刷の発行した『考える技術・書く技術』の続編である。

したがって、拡散と集中は、たえず平行しながら行なわれる。これが集中ばかりになると専門バカになっていくし、拡散ばかりだと物知りバカで終るわけである。(P.46「2-収集と整理」)

拡散は、情報を収集すること。集中は、情報を整理すること。どちらか一方に偏ってはいけない。どちらも重要で、同時並行で進めるもの。

拡散と集中は、仕事が完成する前の状況なので、なかなか良い事例が見つけにくいもの。

ただ運が良い事に、日本には好例が残っていると言い『柳田国男・南方熊楠往復書簡』を挙げている。

南方熊楠(みなかた・くまぐす、1867年~1941年)が拡散。

柳田国男(やなぎた・くにお、1875年~1962年)が集中。

テーマは民俗学。知の巨人の二人のぶつかり合いが楽しめるという。

捨てるコツとしては疲れたときを選んで点検をすること。疲れた時の利用法はいろいろあるが、大胆になるのかものぐさになるのか、とにかく思いきって捨てる気になるものである。(P.55「2-収集と整理」)

情報収集していると、書籍や資料、ファイル、カード類が溜まっていってしまう。

何度か点検した後で、あまり使えそうにない、役に立ちそうにない、と思ったら、どんどん捨てていった方が良いという話。

無駄な物を持っていても仕方がないし、スペースの問題もある。捨てるコツは、疲れた時。疲れた時の利用法という発想も面白い。

英語ではジョージ・オーウェルを読んでいる期間がもっとも長い。主観的な意見といわれるかもしれないが、オーウェルの英語は、知的で明晰という点では、現代最高のものだと思う。(P.133「4-書き方」)

ここでは文章を書くために、名文を沢山読むようにといった方針。

英語では、イギリスの作家で、ジャーナリストのジョージ・オーウェル(George Orwell、1903年~1950年)を好例として挙げている。

日本語の文章でも同じで、自分の好きな本を機会があるごとに、読み返しているという。

特にいまいち頭が働かない時などに読み返すと効果的という経験談。他にも日本人の作家を多く挙げている。

森鴎外(もり・おうがい、1862年~1922年)や、斎藤茂吉(さいとう・もきち、1882年~1953年)、志賀直哉(しが・なおや、1883年~1971年)などは特に繰り返して読んでいるとの事。

いちばんすさまじいのはバルザックで、彼は毎日六時間から十二時間書いていたという。フローベールは七時間、コンラッドは八時間と伝えられている。モーム四時間、オルダス・ハックスレー五時間、ヘミングウェー六時間、こうなるとプライムタイムとか何とか関係なしに、プロは連日重労働をやっているわけだ。(P.149「5-時間」)

自分の頭が一番働く時間帯であるプライムタイムを見つけて、その時間帯に集中して仕事をすると良いという部分。

ただし、プロの物書きの場合には、例外となるかもしれないという話。上述の作家を以下に、列挙。

オノレ・ド・バルザック(Honoré de Balzac、1799年~1850年)は、フランスの小説家。

ギュスターヴ・フローベール(Gustave Flaubert、1821年~ 1880年)は、フランスの小説家。

ジョゼフ・コンラッド(Joseph Conrad、1857年~1924年)は、ポーランド出身のイギリスの小説家。

ウィリアム・サマセット・モーム(William Somerset Maugham、1874年~1965年)は、イギリスの小説家、劇作家。

オルダス・レナード・ハクスリー(Aldous Leonard Huxley、1894年~1963年)は、イギリスの著作家。

アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ(Ernest Miller Hemingway、1899年~1961年)は、アメリカの小説家。

文を書くということは、自分の考えや気持ちを他人にわかりやすく正確に伝えることが目的なのだから、読みやすく書くことは基本的な条件である。(P.157「6-心がけ」)

ここでは、当時は原稿に自筆で文字を書き、編集者が読み、また最終的な原稿を、印刷所でも実際に読む必要があった。

そのため、読みやすく見やすい文字、つまり草書や行書ではなく、楷書で分かりやすい文字を書きましょうという部分。

板坂元は、これを楷書の精神と呼ぶ。

これは各種のテキスト関連ソフトがあり、ほぼ手書きが必要のない現代でも当てはまる精神。

文章や構成、送付時のメールの文面。他人が読んで、見て、分かりやすい状態で、提出すべきという風にも読める箇所である。

福沢は、あるとき尾崎行雄に対して、「猿を相手に書け。俺は猿に読ませるつもりで書くが、それで丁度世にあてはまるのだ」と語ったともいう(『尾崎咢堂全集』七巻)。(P.169「7-態度と責任」)

教育者の福沢諭吉(ふくざわ・ゆきち、1835年~1901年)が、政治家の尾崎行雄(おざき・ゆきお、1858年~1954年)に語ったというエピソード。

極限まで分かりやすい文章を書くという話。

誤読や誤解のない、明晰な文章を心掛けて書く。漢字の使い方や配分などにも注意を払う。

先述の楷書の精神と同様の部分である。

誰にでも分かるように書き直しを繰り返して、福沢諭吉が世に出した『学問のすゝめ』はベストセラーになったという。

『続 考える技術・書く技術』の感想

前著『考える技術・書く技術』を読んだので、もちろん続編であるこの著作も読む。

「あとがき」にも書かれているように、前著に書き足りなかった事やその後に集めた資料を利用して、書き上げたのが『続 考える技術・書く技術』。前著と同様にとても興味深く読む。

日本並びに海外の作家などの具体例も出て来るので非常に分かりやすいし、日本史や世界史の勉強にもなる。確かこの本のおかげで南方熊楠を知ったように思う。

またやはり世界的に名を残した作家たちは、時間を掛けて、大量に文章を書いているのも改めて驚いた。

一日に何時間も、それを数十年と継続する技術と才能、体力と気力。私も文筆業の端くれなので、さらに気を引き締めようと思った。

楷書の精神というのは、日常生活の様々な部分でも役立つと感じるので、こちらも忘れずに心掛けていきたい。

日々の暮らしや仕事などで、文章を書く人には非常に推奨できるシリーズである。

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