『一夢庵風流記』隆慶一郎

隆慶一郎の略歴

隆慶一郎(りゅう・けいいちろう、1923年~1989年)
時代小説家。脚本家。
東京生まれ。東京市赤坂尋常小学校を卒業。同志社中学校を卒業。第三高等学校文科丙類を繰り上げ卒業。東京大学文学部仏文科を卒業。本名は、池田一朗(いけだ・いちろう)。

『一夢庵風流記』の目次

かぶき者
無念の人
松風
駿足
敦賀城
七里半越え
聚楽第
決闘ばやり
男惚れ

女体
死地
佐渡攻め
傀儡師舞い
子供狩り
治部
唐入り
伽耶琴
伽姫
漢陽
帰還
唐入り御陣
難波の夢
天下取り
会津陣
最上の戦い
講話
風流
後書
解説 秋山駿

概要

1991年9月25日に発行。新潮文庫。564ページ。

1989年に読売新聞社から刊行された単行本を文庫化したもの。

主人公は、戦国時代末期から江戸時代初期にかけての武将の前田慶次郎(まえだ・けいじろう、1532年頃~1605年 or 1612年)。

通称は、慶次郎、慶次など。諱は、利益、利太など(どちらも「とします」と読む)。

高い文化的素養を持ちながら、華美な服装で異様な振る舞いをした人物。いわゆる、かぶき者。その生涯を綴った時代小説が『一夢庵風流記』

物語は、作者が、かぶき者についての身近なエピソードを語る「かぶき者」という章から始まる。『日本書紀』に書かれた素戔嗚尊(すさのおのみこと)についても触れる。

続く「無念の人」で、前田慶次郎についての略歴が紹介される。

どのような環境や人間関係で育ち、生活をしていたか。時代背景や勢力関係なども記載される。

そして、前田慶次郎と前田家とのつながりの終わり。

「松風」から、実際の物語が始まる。

感想

解説を含めて、564ページの長編時代小説。

だが、その長さを感じさせないくらい登場人物たちが魅力的で、物語の力強さに押し切られてしまう。

ちなみに解説は、文芸評論家の秋山駿(あきやま・しゅん、1930年~2013年)が担当。

加えて、1989年には柴田錬三郎賞を受賞している。

柴田錬三郎賞は、時代小説家・柴田錬三郎(しばた・れんざぶろう、1917年~1978年)の功績を記念して創設された文学賞。

恐らくのこの時代小説『一夢庵風流記』よりも、週刊少年ジャンプで連載されていた漫画『花の慶次 ―雲のかなたに―』の方が一般的に知られているのかもしれない。

実際に私も『花の慶次 ―雲のかなたに―』を読んでいた。それから何年も経てから、原作である『一夢庵風流記』を手に取った。

主要な歴史上の登場人物は、次の通り。

慶次郎の叔父・前田利家(まえだ・としいえ、1539年頃~1599年)。

利家の家来・奥村助右衛門(おくむら・すけうえもん、1541年~1624年)。

上杉家に仕える武将・直江兼続(なおえ・かねつぐ、1560年~1620年)。

天下人・豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし、1537年~1598年)。

秀吉の側近・石田三成(いしだ・みつなり、1560年~1600年)など。

仲間たちとの交流、主従、友情、戦の描写、死生観など、さまざまな見所がある。

漫画『花の慶次 ―雲のかなたに―』が好きな人は、もちろんのこと、歴史が好きな人にも、非常にオススメの作品である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

堂森善光寺

堂森善光寺は、山形県米沢市にある真言宗豊山派の寺院。
前田慶次の供養塔がある。また近くには、前田慶次の住居・無苦庵跡や利用していたと伝わる湧き水の地・慶次清水もある。

公式サイト:堂森善光寺

宮坂考古館

宮坂考古館は、山形県米沢市にある米沢藩の文化財や歴史に関する資料館。前田慶次が所有したと伝わる甲冑等が展示。

公式サイト:宮坂考古館