「武士道といふは死ぬことと見つけたり」という強烈な一節で知られる『葉隠』。
江戸時代の武士の心得を記したこの古典は、現代においても多くの人々に影響を与え、生き方や死生観を問い直すきっかけを提供しています。
しかし、いざ『葉隠』を読んでみようと思っても、様々な解説書や現代語訳があり、どの本を選べば良いか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなあなたのために、『葉隠』を深く知るためのおすすめ本を10選+番外編として小説2選の合計12冊をご紹介します。
初心者向けの分かりやすい入門書から、深く掘り下げた研究書、全文完訳版まで、あなたの知的好奇心を満たし、『葉隠』の世界への理解を深めるための必読書がきっと見つかります。
この記事を読めば、あなたにぴったりの『葉隠』の関連書籍の選び方がわかり、武士道の精神に触れる貴重な読書体験を得られるでしょう。
1.『葉隠入門』三島由紀夫
目次
- プロローグ 「葉隠」とわたし
- 一 現代に生きる「葉隠」
- 二 「葉隠」四十八の精髄
- 三 「葉隠」の読み方
- 付「葉隠」名言抄(笠原伸夫訳)
- 解説 田中美代子
おすすめのポイント
三島由紀夫が独自の視点で『葉隠』を解説した書籍です。三島の鋭い洞察力と美しい文章で、『葉隠』の持つ行動哲学や美意識、そしてそのラディカルな精神性が浮き彫りにされます。
単なる古典解説にとどまらず、三島自身の思想と『葉隠』が共鳴する様は圧巻です。この本を通じて、『葉隠』の新たな一面を発見できるでしょう。
次のような人におすすめ
『葉隠』の表面的な理解だけでなく、その深層にある思想や美学に触れたい方。三島由紀夫文学に関心があり、彼の『葉隠』解釈を知りたい方。
現代における『葉隠』の意義を、独自の視点から考察したい読者層に最適な一冊です。
2.『文庫 葉隠 超入門(草思社文庫)』市川スガノ
目次
- まえがき
- 第1章 あの人生ではなく、この人生を
- 第2章 死ぬことと生きること
- 第3章 気力の出し方、自信の育て方
- 第4章 外見の飾り方、内心のあらわし方
- 第5章 上昇志向と向上心
- 第6章 刀としての言葉の作法
- 第7章 生きることの意味は自分で定義する!
- 巻末付録 『葉隠』おもしろ話集
- 文庫版あとがき
おすすめのポイント
「超入門」と銘打つ通り、『葉隠』の世界へ足を踏み入れる最初の本として非常に読みやすい一冊です。難解なイメージのある『葉隠』の教えを、現代の言葉で分かりやすく、かつ親しみやすい語り口で解説しています。
『葉隠』の基本的な考え方や重要なエピソードを無理なく学ぶことができ、初心者でも挫折せずに読み進められるでしょう。
次のような人におすすめ
『葉隠』という言葉は知っているけれど、内容については全く知らない初心者の方。武士道や日本の古典に興味を持ち始めたばかりで、まずは手軽に『葉隠』の概要を掴みたい方。
難しい言葉遣いを避け、平易な解説の書籍を探している方にぴったりです。
3.『[復刻版・現代語訳] 葉隠武士道』松波治郎
おすすめのポイント
本書は、『葉隠』を武士道という観点から捉え直し、現代語訳と共にその精神性を分かりやすく解説する書籍です。復刻版でありながら、現代の読者にも通じる普遍的なメッセージを読み取ることができます。
『葉隠』が説く武士の生き様や覚悟を、具体的なエピソードを交えながら学べる構成が特徴です。この本で『葉隠』の真髄に触れてみませんか。
次のような人におすすめ
『葉隠』を武士道の精神と関連付けて深く理解したい方。現代語訳で『葉隠』を読みたいが、単なる翻訳だけでなく、その背景にある武士の倫理観や行動規範についても学びたい方。
復刻版ならではの趣を感じつつ、『葉隠』のポイントを押さえたい読者におすすめです。
4.『定本 葉隠〔全訳注〕 上(ちくま学芸文庫)』山本常朝・田代陣基
目次
- 凡例
- 解題 佐藤正英
- 序文
- 葉隠聞書 一
- 葉隠聞書 二
- 葉隠聞書 三
- 葉隠聞書 四
- 解説 吉田真樹
おすすめのポイント
「定本」および「全訳注」とあるように、『葉隠』を本格的に研究したい読者にとって決定版とも言える書籍です。原文に忠実な全訳と詳細な注釈により、『葉隠』の細部にわたる理解を助けます。
学術的な信頼性が高く、『葉隠』研究の基礎資料としても価値が高い一冊です。この本は、『葉隠』の奥深い世界を探求するための羅針盤となるでしょう。
次のような人におすすめ
『葉隠』を原文に近い形で、かつ詳細な解説と共に読み込みたい方。学術的なアプローチで『葉隠』を研究したい学生や研究者。
表面的な解釈に留まらず、『葉隠』の深遠な思想や背景を徹底的に追求したいという読者層に最適です。
5.『武士道と葉隠(タウンムック)』
おすすめのポイント
ムック形式で、『葉隠』と武士道の関連性に焦点を当てて解説する書籍です。図解やコラムなどを多用し、視覚的にも分かりやすく、『葉隠』の核心に迫ります。
様々な角度から『葉隠』を読み解くことで、その多面的な魅力を発見できるでしょう。手軽に『葉隠』と武士道の世界観を概観したい場合に便利な本です。
次のような人におすすめ
『葉隠』と武士道の関係性について、分かりやすい解説で学びたい方。堅苦しい学術書よりも、雑誌のような感覚で気軽に『葉隠』に触れたい方。
『葉隠』のポイントをビジュアルと共に理解したい読者に向いています。
6.『葉隠 現代語全文完訳』山本常朝・田代陣基/訳:水野聡
おすすめのポイント
本書は、『葉隠』の「現代語全文完訳」を謳っており、原文の持つ迫力やニュアンスを損なうことなく、現代の読者にも理解しやすい言葉で『葉隠』の全てを伝えようとする意欲的な書籍です。
『葉隠』の全体像を把握したい、あるいは特定の記述を原文の雰囲気に近い形で確認したい場合に非常に有用な本と言えるでしょう。
次のような人におすすめ
『葉隠』を抄訳ではなく、できる限り全文通して現代語で読みたい方。『葉隠』の細かな記述やエピソードまで網羅的に把握したい研究熱心な方。
他の解説書や入門書を読んだ上で、より深く『葉隠』の世界に分け入りたい読者層に最適です。
7.『図解 葉隠―勤め人としての心意気』齋藤孝
目次
- はじめに──武士道に、勤め人としての心意気を学ぶ
- 第一章 心地よく生きる術
- 第二章 大人としてのたしなみ
- 第三章 勝つための仕事術
- 第四章 リーダーの条件
- 第五章 人づきあいの極意
- おわりに──五パーセントの武士道精神が、人を強くする
おすすめのポイント
教育学者の齋藤孝氏が、『葉隠』の教えを現代の「勤め人」、つまりビジネスパーソンに向けて分かりやすく図解した一冊です。
この本は、『葉隠』の言葉を現代の職場環境や仕事における心構えに置き換え、具体的な行動指針として提示しています。
図解を多用することで、難解と思われがちな『葉隠』の思想が直感的に理解しやすくなっている点が、この本のおすすめポイントです。
次のような人におすすめ
『葉隠』の教えを現代のビジネスシーンで活かしたいと考えているビジネスパーソン。齋藤孝氏の著作に関心があり、氏の解釈する『葉隠』を知りたい方。
古典から仕事のヒントを得たいが、難しい解説書は苦手という方。図解で分かりやすく『葉隠』のエッセンスを学びたい読者におすすめです。
8.『葉隠 現代語で読む「武士道」の真髄!』奈良本辰也
目次
- 武士道の真髄―『葉隠』を読む人のために
- 1章 いかに「生きる」か
- 2章 いかに「覚悟する」か
- 3章 いかに「仕事する」か
- 4章 いかに「人と付き合う」か
- 5章 いかに「自分を高める」か
- 6章 いかに「運をつかむ」か
おすすめのポイント
著名な歴史学者である奈良本辰也氏による『葉隠』の解説書で、特に「武士道の真髄」というテーマに焦点を当て、現代語で分かりやすく解説しています。
『葉隠』を通じて、日本人が大切にしてきた武士の精神性や倫理観を深く掘り下げます。現代人が忘れがちな、潔さや覚悟といった価値観を再認識させてくれる本となるでしょう。
次のような人におすすめ
『葉隠』を通じて武士道の核心に迫りたい方。奈良本辰也氏の解説で、『葉隠』と武士道の関係をより深く理解したい方。
日々の生活や仕事において、武士道的な精神性を取り入れたいと考えている読者層に、示唆に富む一冊です。
9.『葉隠 上(教育社新書 原本現代訳)』山本常朝
おすすめのポイント
新書版で手軽に『葉隠』に触れることができる書籍です。「原本現代訳」とあるように、原文の雰囲気を感じつつ、現代語訳の助けを借りて読み進めることができます。
「上巻」であり、まずは『葉隠』の主要な部分から理解を始めたい場合に適しています。コンパクトながらも、『葉隠』の核心に触れることができる本です。
次のような人におすすめ
新書で気軽に『葉隠』を読み始めたい方。原文と現代語訳を比較しながら読みたいが、分厚い全集は敷居が高いと感じる方。
『葉隠』入門として、まずは上巻から試してみたい読者に適しています。
10.『本田有明のヘタな人生論より葉隠(河出文庫)』本田有明
目次
- 第一章 誓いを立てる―迷いなく生きるための指針
- 第二章 「今」を生きる―腹を据えて現実と向き合う覚悟
- 第三章 気を高める―逆境は心身を強くする好機
- 第四章 心を通わす―他者を受け入れ、自らを貫く
- 第五章 人を育てる―成功は相手の手柄、失敗は自己の責任
- 第六章 作法を尊ぶ―人を動かす「誠心誠意」の実践
おすすめのポイント
『葉隠』の教えを、現代の「実用書」として読み解くユニークな視点の書籍です。著者の本田有明氏が、自身の経験や思索を交えながら、『葉隠』の言葉を現代社会で生きる私たちにどう活かせるかを説きます。
武士道という枠を超え、より普遍的な生き方のヒントを『葉隠』から見出そうとする試みが特徴的な本です。
次のような人におすすめ
『葉隠』を自己啓発書や人生訓として読みたい方。古典の教えを現代の生活や悩みに具体的にどう応用できるかを知りたい方。
『葉隠』の解釈として、伝統的な解説とは異なる、よりパーソナルな視点からのアプローチに興味がある読者におすすめです。

*1『死ぬことと見つけたり 上 (新潮文庫)』隆慶一郎
おすすめのポイント
隆慶一郎氏による、『葉隠』の有名な一節をタイトルに冠した歴史小説です。武士の生き様や葛藤を、エンターテイメント性豊かに描いています。
『葉隠』の精神性を、解説書とは異なる物語の形で深く感じたい読者にとって、非常におすすめの本と言えるでしょう。上巻であり、壮大な物語の始まりを体験できます。
次のような人におすすめ
『葉隠』を骨太な歴史小説として楽しみたい方。隆慶一郎氏の作品ファン。武士の生き様やその内面に迫るドラマを通じて、『葉隠』の世界観に触れたい方。
解説書だけでなく、物語を通して『葉隠』の精神を体感したい読者に適しています。
*2『葉隠物語』安部龍太郎
おすすめのポイント
直木賞作家である安部龍太郎氏が、『葉隠』そのものや、それを遺した山本常朝の生涯を題材に描いた歴史小説です。この本は、『葉隠』がどのような時代背景や人間関係の中で生まれたのかを、物語を通じて深く理解させてくれます。
緻密な歴史描写と人間ドラマが融合した、読み応えのある葉隠関連の小説としておすすめです。『葉隠物語』も『朝ごとに死におくべし 葉隠物語』も、どちらも同一内容。『朝ごとに死におくべし 葉隠物語』は電子書籍もあります。
次のような人におすすめ
『葉隠』の成立背景や、山本常朝という人物の生涯に興味がある方。安部龍太郎氏の歴史小説が好きな読者。
史実に基づいた物語を通して、『葉隠』の言葉が持つ重みや意味をより深く感じ取りたい方。歴史小説というアプローチで『葉隠』の世界に浸りたい方におすすめです。
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葉隠発祥の地
葉隠発祥の地は、佐賀県佐賀市金立町にある山本常朝が隠棲した朝陽軒(後の宗寿庵)の跡地。