『豪商伝 薩摩・指宿の太平次』南原幹雄

南原幹雄の略歴

南原幹雄(なんばら・みきお、1938年~)
小説家。
東京都世田谷区の出身。本名は、安井幹雄。早稲田大学政治経済学部を卒業。
1973年に『女絵地獄』で、第21回小説現代新人賞を受賞してデビュー。1981年に『闇と影の百年戦争』で第2回吉川英治文学賞、1997年に『銭五の海』で第17回日本文芸大賞を受賞。
父親は、小説家・南条三郎(なんじょう・さぶろう、1906年~1957年)。

浜崎太平次の略歴

浜崎太平次(はまさき・たへいじ、1814年~1863年)
現在の鹿児島県である薩摩国の商人。
代々、海運業を営む薩摩国・指宿の浜崎家の長男。第8代・太平次として、家業を再興させる。
紀州の紀伊國屋文左衛門(きのくにや・ぶんざえもん、1669年?~1734年?)、加賀の銭屋五兵衛(ぜにや・ごへえ、1774年~1852年)とあわせて、江戸時代の“実業界の三傑”とも呼ばれる。

『豪商伝 薩摩・指宿の太平次』の目次

紺碧の海
浪花の遊廓
若山木
乳房
国分屋重兵衛
晩春
太平次襲名
山木小路
大坂妻
再会
隠密船
七郎ヶ島
北の豪商
生と死
梅雨の花
斉彬登場
薩摩藩政秘録
嘉永朋党くずれ
銭五の命運
黒船来航
エンフィールド銃
血風立売堀

概要

2004年3月25日に単行本が刊行。2007年10月25日に文庫本の第一刷が発行。2014年8月25日に電子版が発行。全て角川。文庫は、475ページ。

海運業の豪商として、家業を再興させ、さらに地元の薩摩国を陰ながら支援した人物である8代目・浜崎太平次。その生涯を描いた歴史時代小説。

薩摩藩の第8第藩主・島津重豪(しまづ・しげひで、1745年~1833年)、第9第藩主・島津斉宣(しまづ・なりのぶ、1774年~1841年)、第10第藩主・島津斉興(しまづ・なりおき、1791年~1859年)、第11第藩主・島津斉彬(しまづ・なりあきら、1809年~1858年)なども登場。

薩摩藩の財政を建て直した調所広郷(ずしょ・ひろさと、1776年~1849年)、またの名を調所笑左衛門(ずしょ・しょうざえもん)も。

また現在の石川県である加賀の商人・銭屋五兵衛との協力も。

家業によって、大阪や琉球、蝦夷、中国、東南アジアとの交易。

さらに薩摩の政治、江戸幕府の政治などの影響も。

といった形で、さまざまな要因が織りなすグローバルで壮大な歴史時代物語。

感想

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全く知らなかった人物・浜崎太平次。

島津斉彬から薩摩の歴史などに改めて興味を持って、その中で見つけた作品。

南原幹雄の作品としても、初めて触れた。

結論から先に述べると、非常に楽しめた物語。

海運業ということで、薩摩という地域に限らず、日本国内、さらには国外までも視野に入れたビジネス。

しかも、地元の政治の力関係。さらに、江戸幕府の力関係など、外部要因も重なっていく。

実際の歴史上の人物たちが登場したり、歴史的な事件などが盛り込まれたりしているので、リアリティーがあって、非常に面白い。

調所広郷のキャラクター造型も、とても素晴らしかった。

物語としては、大阪の妻や指宿の妻、そして琉球の友人との交流。

妻との死別の場面は、物語の大きな抑揚となっている。

温泉の町としても有名な指宿には、浜崎太平次の名前が付いた太平次公園があり、像もあるとのこと。

指宿には行ったことがあるけれど、太平次公園には行っていないので、今度、訪れてみたいと思う。

歴史時代小説が好きな人、薩摩に興味のある人、海運業や大規模なビジネスに関心のある人には、とてもオススメの作品である。

書籍紹介

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濱崎太平次像

鹿児島県指宿市湊の太平次公園にある第八代・濱崎太平次の像。