『二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?』猪瀬直樹

猪瀬直樹の略歴

猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)
作家。
長野県飯山市の生まれ、長野市の育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科を卒業。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程で日本政治思想史を研究。
1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

二宮金次郎の略歴

二宮金次郎(にのみや・きんじろう、1787年~1856年)
経世家、農政家、思想家。
相模国足柄上郡栢山村(現在の神奈川県小田原市栢山)の生まれ。金次郎は通称。本名は、二宮尊徳(にのみや・たかのり)。ただし、尊徳(そんとく)の読みで定着。
諸村、諸藩の復興に尽力し、幕臣となる。

『二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?』の目次

序章 皇室は鏡のように
第一章 人口減少社会に挑戦した男
第二章 積小為大
第三章 複利の魔力
第四章 偉大なる発明「分度」
第五章 見捨てられた領地の再生
第六章 希望の未来を指し示す
第七章 カギは農業にあり
終章 二宮金次郎は現代に蘇る
解説 船曳建夫

概要

2007年8月10日に第一刷が発行。文春文庫。205ページ。

副題は「人口減少社会の成長戦略」。題名にある「薪」は、たきぎ、と読む。

現代と同じ人口減少の社会と向き合った二宮金次郎の生涯を追いながら、その解決策を模索するノンフィクション作品。

2005年4月に刊行した単行本『ゼロ成長の富国論』に加筆、改題し、文庫化したもの。

2005年1月号「文藝春秋」に発表した「禁欲の富国論」を中心にまとめたものである。

解説は、文化人類学者の船曳建夫(ふなびき・たけお、1948年~)。東京都の出身。東京教育大学付属高等学校を卒業。パリ第4大学に留学。東京大学教養学部教養学科文化人類学を卒業。東京大学大学院社会学研究科文化人類学修士課程を修了。ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程を修了している人物。

感想

二宮金次郎といえば、小学校の片隅に薪を背負って歩きながら本を読む銅像があった。

勤勉な少年というイメージだけしかなかった。

考えてみたら、少年時代の銅像しか見たことがないので、その後の青年期や壮年期の業績というか、人生を知らなかった。

そもそも、読んでいる書物が何であったのかすらも。

この猪瀬直樹の著作を読んで初めて知った。儒教の重要な文献である『大学』であることを。

そして何よりも驚いたのが、大男であったという体格。

文政四年(1821年)の秋、身の丈六尺(180センチ)、二十五貫(94キログラム)、草鞋履きの旅装に脇差しの大男が、野州(現在の栃木県)桜町の旗本四千石・宇津釩之助の領地へ調査のために足を踏み入れようとしている。(P.26「第一章 人口減少社会に挑戦した男」)

34歳の二宮金次郎の体格である。現代でも巨漢である。

全くイメージを持った事がなかったので、この描写には本当にビックリした。そのような体格の持ち主であったとは。

また、現在で言うところの、コンサルタント。特に金融コンサルタントのような仕事をしていた人物。

因みにこの著作には、様々な数字なども多く掲載されている。それが、二宮金次郎の生きた江戸時代末期のものであったり、現代のものであったり。

グラフや表などが時折掲載されているのも特徴。

二宮金次郎の生涯を追いながら、過去と現代を照らし合わせて、社会問題を解決するための手掛かりを探す。

二宮金次郎の人物像と同時に、現代の問題についても学べるノンフィクション作品。

歴史好き、社会問題に関心のある人、ビジネスマンなど、幅広い人々にオススメできる一冊である。

記念館や資料館もあるので、今度訪問してみようと思う。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

二宮尊徳記念館

二宮尊徳記念館は、二宮金次郎の生誕の地・神奈川県小田原市にある記念館。近隣には生家や墓もある。

公式サイト:小田原市尊徳記念館・二宮尊徳生家

日光市歴史民俗資料館・二宮尊徳記念館

日光市歴史民俗資料館・二宮尊徳記念館は、栃木県日光市今市にある資料館と二宮尊徳の記念館。二宮尊徳が復興に尽力した場所。

公式サイト:日光市歴史民俗資料館・二宮尊徳記念館

報徳二宮神社

報徳二宮神社は、栃木県日光市今市にある二宮尊徳を祀る神社。

公式サイト:報徳二宮神社

二宮尊徳資料館

二宮尊徳資料館は、栃木県真岡市にある二宮尊徳の資料館。二宮尊徳が復興に尽力した場所。

公式サイト:二宮尊徳資料館