『天地明察』冲方丁

冲方丁の略歴

冲方丁(うぶかた・とう、1977年~)
小説家。
岐阜県各務原市の生まれ。シンガポール、ネパールで育つ。
埼玉県立川越高等学校を卒業。早稲田大学第一文学部を中退。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、舟橋聖一文学賞、北東文芸賞を受賞し、第143回(2010年上半期)直木賞にノミネート。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。

『天地明察』の目次

【上巻】
序章
第一章 一瞥即解
第二章 算法勝負
第三章 北極出地

【下巻】
第四章 授時暦
第五章 改暦請願
第六章 天地明察
解説 養老孟司

概要

2012年5月21日に第一刷が発行。角川文庫。上下巻。上巻は288ページ。下巻は290ページ。

2009年11月に発売した単行本を上下巻に分冊し文庫化。
文庫化の際に加筆修正を実施。

時は、第4代将軍・徳川家綱(とくがわ・いえつな、1641年~1680年)の治世。

主人公は、碁打ちの名門に生まれた渋川春海(しぶかわ・はるみ、1639年~1715年)。囲碁棋士、神道家、天文歴学者でもある人物。

和算家・関孝和(せき・たかかず、1640年頃?~1708年)や、会津藩の初代藩主・保科正之(ほしな・まさゆき、1611年~1673年)、水戸藩の第2第藩主・徳川光圀(とくがわ・みつくに、1628年~1701年)なども登場。

改暦のための責任者に選ばれた渋川春海の生涯を描いた時代小説である。

下巻の解説には、医学者で解剖学者の養老孟司(ようろう・たけし、1937年~)。

感想

この『天地明察』を読むまでの1年半くらいは全く小説を読んでいなかった。

特に理由はないのだけれど。少し調べてみたら、和田竜(わだ・りょう、1969年~)の『村上海賊の娘』『忍びの国』を読んだ以来だった。

因みに冲方丁と同様に、和田竜も早稲田大学だ。

主人公は、渋川春海。棋士であるが算術にも才能がある。というか、神道とか諸々も。

政府の重鎮たちにも認められ、暦を改定する大事業に取り組む事になる。

颯爽としている。出会いと別れ。若さと未来。老いと未来。次世代へと繋がる思想・哲学。

数学の宇宙。いや、宇宙と数学。天と数。

数学を勉強しようと思った。

それにしても、登場人物たちのキャラクター造形が素晴らしい。生き生きとしている。コミカルな感じも。そりゃ、映画化されるよね、と思った。

初恋的なもの、妻との死別、恩師たちとの死別。尊敬する友人たち。算術のもとに集まった職種や年齢も異なる仲間。

随分と要素が詰め込まれているのにも関わらず、破綻なく、淀みなく、読める。

物語や登場人物たちに魅了される素晴らしい時代小説である。

歴史や数学好きはもちろん、シンプルに小説が好きな人たちにも非常にオススメの作品。

また『天地明察』とリンクしている徳川光圀を主人公とした『光圀伝』を続けて読むのも面白いと思う。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

金王八幡宮(こんのうはちまんぐう)

東京都渋谷区にある神社。第15代天皇・応神天皇(おうじんてんのう、200年~310年)を御祭神とする。1092年に創建。併設のコンパクトな宝物館で、算額などを鑑賞できる。

公式サイト:金王八幡宮

東海寺大山墓地

東京都品川区北品川にある墓地。渋川春海の墓もある。
東海寺は臨済宗大徳寺派の寺院。1638年に第3代将軍・徳川家光(とくがわ・いえみつ、1604年~1651年)が、臨済宗の僧・沢庵宗彭(たくあん・そうほう、1573年~1646年)を招聘して開山。