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佐藤航陽『世界2.0』要約・感想

佐藤航陽『世界2.0』表紙

  1. メタバースの可能性と佐藤航陽の洞察
  2. テクノロジー進化の3つの特徴
  3. 日本のコンテンツ力とメタバース
  4. ゲーミフィケーションとコンテンツ戦略

佐藤航陽の略歴・経歴

佐藤航陽(さとう・かつあき、1986年~)
実業家。
福島県の生まれ。早稲田大学法学部を中退。大学在学中に起業。20代で東証マザーズに上場。
『お金2.0』が20万部を超える。2018年のビジネス書の売り上げで日本一。

『世界2.0』の目次

序章 メタバースとは何か?
第一章 メタバースの衝撃
第二章 世界の創り方Ⅰ【視空間】
第三章 世界の創り方Ⅱ【生態系】
第四章 競争から創造の世紀へ
第五章 ポストメタバースの新世界
終章 世界の真実は自分の目で確かめるべき

『世界2.0』の概要・内容

2022年3月31日に第一刷が発行。幻冬舎。262ページ。

副題は「メタバースの歩き方と創り方」。

『世界2.0』の要約・感想

  • 佐藤航陽とは何者か? その経歴と才能
  • メタバースとは何か? 言葉の起源とその可能性
  • テクノロジー進化の不変の法則
  • 熱狂の初期を見抜く先見性
  • 大企業が抱えるイノベーションの壁
  • コンテンツ大国・日本の潜在力とメタバース
  • 『世界2.0』が示すメタバースの歩き方と創り方
  • 人間社会を突き動かす3つの原動力
  • 佐藤航陽の原点と早稲田大学への道
  • VR技術の最前線:人間の目を超える解像度へ
  • 秋元康に学ぶ、大衆の心を掴むコンテンツ戦略
  • 人を夢中にさせる「ゲーミフィケーション」の魔力
  • 佐藤航陽のルーツ:永野修身との繋がり
  • 『世界2.0』を読むということ:未来への羅針盤

佐藤航陽(さとう・かつあき、1986年~)が描き出す未来の設計図、『世界2.0』を読み解く。

この記事では、実業家として知られる佐藤航陽の著書『世界2.0』を、メタバースという切り口から徹底的に解説する。

本書は単なる技術解説書ではなく、新しい世界を創造するための思考法、そして私たち自身の生き方にも通じる普遍的な法則を提示する一冊である。

佐藤航陽とは何者か? その経歴と才能

本書の著者である佐藤航陽は、日本の実業家である。

福島県に生まれ、早稲田大学法学部を中退後、大学在学中に起業。若干20代で自身の会社を東京証券取引所マザーズ市場へ上場させた経歴を持つ。

彼の名を一躍有名にしたのは、20万部を超えるベストセラーとなり、2018年のビジネス書年間売上ランキングで日本一に輝いた『お金2.0』であろう。

その鋭い洞察力と未来を見通す力は、一部で佐藤航陽は天才ではないかとも評されるほどだ。

本書『世界2.0』では、その才能がいかんなく発揮され、メタバースという概念を通じて、これからの社会のあり方、そして世界の創り方について深く考察している。

彼の言葉は、これからの時代を生きる私たちにとって、多くの示唆を与えてくれるはずである。

メタバースとは何か? 言葉の起源とその可能性

まず、本書の核心であるメタバースとは何かについて触れておかなければならない。

メタバースとは、インターネット上に作られた3D(3次元)の仮想空間のことです。1992年、アメリカの作家ニール・スティーヴンスンが、『スノウ・クラッシュ』というSF小説を発刊します。メタバースという言葉は、この小説の中で初めて使われました。「メタ」(meta=概念を超える、上位概念を指し示す)+「ユニバース」(universe=宇宙)を組み合わせた造語です。(P.13「序章 メタバースとは何か?」)

このメタバースという言葉の語源は、アメリカのSF作家であるニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson、1959年~)の作品『スノウ・クラッシュ』(原書『Snow Crash』)にあったというのは、意外と知られていないかもしれない。

1992年という、インターネットが一般に普及し始める前の時代に、このような概念が提示されていたことに驚きを禁じ得ない。

2025年現在、一時期の熱狂的なブームは落ち着きを見せ、メタバースという言葉自体を耳にする機会が減ったように感じる向きもあるかもしれない。

だが、その根底にある思想や技術は、確実に私たちの生活やビジネスのあり方を変えつつある。

佐藤航陽は、このメタバースというレンズを通して、世界の構造と未来の可能性を解き明かそうと試みているのだ。

テクノロジー進化の不変の法則

佐藤航陽は、テクノロジーの進化について、興味深い3つの本質的な特徴を提示している。

あらゆるテクノロジーの本質的な特徴は、次の3つに絞られます。テクノロジーは①人間を拡張するものであること、②いずれ人間を教育し始めること、最後に③掌から始まり、宇宙へと広がっていくことです。(P.18「テクノロジーの進化を予測する方法」)

この指摘は、非常に的を射ていると言えるだろう。

①の「人間を拡張する」というのは、例えばメガネが視力を拡張し、自動車が移動能力を拡張するように、テクノロジーが人間の能力を補い、増幅させる役割を指す。

②の「いずれ人間を教育し始める」というのは、テクノロジーが普及することで人間の行動様式や思考法が変化し、新たなスキルや知識の習得が促されることを意味する。

そして③の「掌から始まり、宇宙へと広がっていく」というのは、パーソナルコンピュータやスマートフォンのように、最初は個人的なツールとして登場したテクノロジーが、やがて社会全体、さらには宇宙規模のインフラへと発展していく可能性を示唆している。

これらの法則を理解することは、メタバースのような新しいテクノロジーの将来像を予測する上で、極めて重要となる。

テクノロジーは、私たちの生活や社会にとって不可欠な要素であり、その進化の方向性を正しく捉えることが、未来を生き抜くための鍵となるのだ。

熱狂の初期を見抜く先見性

新しいテクノロジーやビジネスモデルが登場した際、その将来性を見極め、早期に参入することの重要性は、歴史が証明している。

ギークたちが熱狂しているのを見て初期に参入した人たちは大きなリターンを手にしたはずです。コンピュータもそうですし、インターネットも全く同じでした。(P.26「周囲の反応はリトマス紙」)

いわゆる「先行者利益」と呼ばれるものである。

コンピュータの黎明期やインターネットの普及初期において、その可能性にいち早く気づき、行動を起こした人々が、後に大きな成功を収めた例は枚挙にいとまがない。

佐藤航陽は、メタバースもまた、同様の可能性を秘めていると示唆しているように感じられる。

もちろん、すべての新しいものが成功するわけではないが、一部の熱狂的な人々、いわゆるギークたちが注目し、その可能性を信じて突き進む現象は、大きな変化の前触れである場合が多い。

周囲の反応をリトマス試験紙のように捉え、本質を見抜く洞察力が求められる時代と言えるだろう。

大企業が抱えるイノベーションの壁

一方で、既に成功を収めている企業が、新たな変化の波に乗り遅れてしまうケースも少なくない。その背景には、特有のジレンマが存在する。

企業は規模が大きくなるにつれて資金・人材・信用があることが逆に足枷になってしまい新たな可能性をつかめなくなってしまうというジレンマを、この一件で身をもって知ることになりました。(P.38「失敗から学んだ意思決定の難しさ」)

これは、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン(Clayton Magleby Christensen、1952年~2020年)が提唱し著書にもなった『イノベーションのジレンマ』(原書『The Innovator’s Dilemma』)として知られる現象である。

企業が持つ資金力、優秀な人材、そして築き上げてきた信用といった強みが、既存事業の維持や漸進的な改善には有効に働く一方で、破壊的なイノベーションや不確実性の高い新規事業への挑戦を躊躇させ、結果として大きな機会を逸してしまうという皮肉な現実を指す。

大企業ほど、失敗のリスクを恐れ、短期的な収益性を重視する傾向があるため、将来大きな成長が見込めるかもしれないが、

現時点では市場規模が小さく、収益性も不透明な分野への投資には慎重にならざるを得ない。

このジレンマを克服し、持続的な成長を遂げるためには、既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想と、失敗を恐れずに挑戦する企業文化の醸成が不可欠となる。

実際に、佐藤航陽も体験して実感したこと。そのために、新しい企業を作り上げていったのである。

コンテンツ大国・日本の潜在力とメタバース

日本は、世界的に見ても独自の文化やコンテンツを数多く生み出してきた国である。その強みは、メタバースという新しい領域においても活かされる可能性がある。

スマホゲームでもユーザー一人あたりの課金額は日本が世界でぶっちぎりの1位です。(P.47「コンテンツ大国日本の強み」)

アメリカのアプリ調査会社SensorTowerが2021年(令和3年)に発表したデータによると、Google PlayとApp Storeのアプリ・ゲームにおける国民一人当たりの課金額で、日本は149米ドルと、2位の韓国(95米ドル)、3位のアメリカ(90米ドル)を大きく引き離してトップに立っている(調査対象から中国は除外)。

これは、単純計算で1ヶ月あたり約2,000円をアプリやゲームに費やしていることになり、日本のユーザーがいかにコンテンツに対して積極的にお金を使うかを示している。

この背景には、古くは『源氏物語』に代表されるような物語文化の伝統や、現代のアニメ・漫画・ゲームといったポップカルチャーの世界的な人気があるのかもしれない。

日本には優秀なクリエイターが多く存在し、質の高いコンテンツを生み出す土壌がある。

この「物語を愛し、コンテンツに価値を見出す」という国民性は、仮想空間であるメタバースにおいて、魅力的な世界観や体験を創造し、ユーザーを惹きつける上で大きなアドバンテージとなり得るだろう。

日本の伝統的な美意識や独特の世界観は、メタバース上で新たな表現を獲得し、世界中の人々を魅了する可能性を秘めている。

『世界2.0』が示すメタバースの歩き方と創り方

本書『世界2.0』は、メタバースに関する単なる知識の羅列ではなく、読者がメタバースという新しい世界をどのように理解し、そして関わっていくべきかを示す羅針盤となることを目指している。

メタバースの「歩き方」と「創り方」を通して、世界というものの普遍的な法則に気がつき、理解を深められるように構成しています。(P.52「メタバース産業に取り残される最悪なシナリオ」)

本書の序章は全体の約5分の1を占め、メタバースの基本的な概念や歴史的背景、そしてテクノロジーの進化に関する普遍的な洞察が丁寧に解説されている。

これは、読者が本格的なメタバース論に入る前に、しっかりとした基礎知識と考え方のフレームワークを身につけるための準備運動と言えるだろう。

そして本編では、メタバースを構成する要素や、その中で人々がどのように活動し、経済圏が形成されていくのか、さらにはメタバースが社会や人間の意識にどのような変革をもたらすのかについて、具体的な事例や著者の鋭い考察を交えながら論じられていく。

本書を読むことで、私たちはメタバースという現象の表面的な部分だけでなく、その深層にある構造や法則性を理解し、未来を能動的に「創り出す」ためのヒントを得ることができるはずだ。

人間社会を突き動かす3つの原動力

佐藤航陽は、人間社会が変化し、発展していく原動力として、3つの要素を挙げている。

人間社会は、①経済、②感情、③テクノロジーという3つのベクトルが引っ張っています。(P.58「テクノロジーとは「運命に抗う武器」だ」)

①の「経済」は、言うまでもなく人々の生活の基盤であり、富の分配や生産活動を通じて社会を動かす力である。

②の「感情」は、喜び、怒り、悲しみ、共感といった人間の内面から湧き上がるエネルギーであり、時に経済合理性だけでは説明できない行動を引き起こし、社会運動や文化の創造にも繋がる。

そして③の「テクノロジー」は、先にも述べたように人間を拡張し、新たな可能性を切り拓く力である。

これら3つのベクトルが複雑に絡み合い、互いに影響を与えながら、人間社会の進むべき方向を決定づけていると佐藤航陽は分析する。

メタバースという現象も、この3つのベクトルの相互作用の中で理解することができる。

経済的なインセンティブ、仮想空間での新たな体験やコミュニケーションがもたらす感情的な充足、そしてそれを実現するVR/ARなどのテクノロジー。

これらが一体となって、メタバースという新しい社会の形を創り上げているのである。

佐藤航陽の原点と早稲田大学への道

本書では、佐藤航陽自身の個人的な背景についても触れられている箇所があり、彼の思想形成の一端を垣間見ることができる。

私は福島県の母子家庭に生まれました。世帯年収は100万円台前半です。いくら物価が安い地方都市といえど、紛れもなく貧困世帯でした。(P.60「テクノロジーとは「運命に抗う武器」だ」)

このような厳しい環境から、後に20代で企業を上場させるまでに至った彼の道のりは、決して平坦なものではなかっただろう。

この経験が、彼の「テクノロジーとは運命に抗う武器だ」という言葉に、より深い説得力を持たせているのかもしれない。

世帯年収100万円台前半という状況から、なぜ学費の高い私立の早稲田大学を目指したのか、という疑問を持つ読者もいるかもしれない。

国公立大学や、学費免除の特待生制度を利用するという選択肢もあったはずである。この点に関しての具体的な話は無かったし、他の媒体でも聞いたことはない。

しかし、彼の選択には、逆境を乗り越えようとする強い意志や、より大きな可能性を求める野心があったのかもしれない。

このあたりの個人的な背景は、彼の著作や活動の根底にあるエネルギーの源泉を理解する上で、興味深いポイントである。

確か、もともとは弁護士を目指していたが、時間が掛かり過ぎるために、事業や企業、ビジネス方面にシフトしたとの発言がどこかであったはず。

佐藤航陽の母親が貴族の家系であるといった噂や、佐藤航陽の父に関する情報などは公にはあまり語られていないが、彼の並外れた知性や行動力の背景には、何らかの特別な教育や影響があった可能性も想像される。

曽祖父に関しては後で詳しく触れる。

VR技術の最前線:人間の目を超える解像度へ

メタバース体験の質を大きく左右するのが、VR(仮想現実)端末の技術的進化である。

より現実に近い没入感を得るためには、ディスプレイの解像度が重要な要素となる。

一般的には人間の目が認識できる最大の角画素密度は60PPD(Pixel Per Degree、視野角当たりの解像度)程度とされていますが、Varjo社の最上位モデルは最大70PPDを実現できると謳われていて、世界中から注目が集まっています。(P.77「VR端末が普及するための技術的ハードル」)

ここで言及されているVarjo Technologies Oyは、フィンランドに本拠を置くVR/AR/MRヘッドセットのメーカーである。

2016年に元ノキアやマイクロソフトの幹部らによって設立され、特に人間の目に匹敵するほどの高解像度デバイスの開発に特化している。

人間の目が認識できる限界とされる60PPDを超える70PPDという解像度は、まさに驚異的であり、メタバース空間での視覚体験を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。

こうした技術的ブレイクスルーが積み重なることで、VR端末はより小型軽量化し、価格も手頃になり、一般への普及が加速していくだろう。

そうなれば、メタバースは一部の技術愛好家のものではなく、誰もが日常的にアクセスする空間へと変貌を遂げるに違いない。

秋元康に学ぶ、大衆の心を掴むコンテンツ戦略

メタバースが多くの人々にとって魅力的な空間となるためには、そこで展開されるコンテンツの質が極めて重要となる。

日本を代表するプロデューサーである秋元康(あきもと・やすし、1958年~)のコンテンツ戦略は、そのヒントを与えてくれる。

誰もが受け入れてくれる王道のコンテンツで8割を構成して、残りの2割で違和感を意図的に作り出すことで、人々の心に引っかかって記憶に残りつつも、友達と「あの」で言い合えるという粒度の作品を意図的に作り出しています。(P.130「秋元康の世界のとらえ方」)

作詞家、音楽プロデューサー、放送作家として、数多くのヒット作を世に送り出してきた秋元康。

彼の手がけるコンテンツは、常に大衆の心を捉え、社会現象を巻き起こしてきた。その秘訣の一つが、この「8割の王道と2割の違和感」という絶妙なバランス感覚にある。

多くの人が安心して楽しめる普遍的な要素、王道をベースにしつつ、そこに少しだけ異質なもの、意外性のあるもの、違和感を混ぜ込むことで、ありきたりではない新鮮な驚きを生み出し、人々の記憶に深く刻まれる作品を創り上げる。

そして、その「違和感」が適度な引っかかりとなり、「ねえ、昨日のあれ見た?」「あの曲、面白いよね」といったように、人々の間で話題となり、口コミで広がっていく。

メタバースにおけるコンテンツ制作においても、この秋元康の戦略は非常に参考になるだろう。

多くの参加者を引き込み、熱中させるためには、万人受けする要素と、あっと驚かせるような斬新なアイデアの組み合わせが鍵となる。

人を夢中にさせる「ゲーミフィケーション」の魔力

人々を特定の行動に熱中させ、継続させるためのテクニックとして、「ゲーミフィケーション」という考え方が注目されている。

予測不能なバグが発生するゲームに、人間の脳みそは本能的に夢中になってハマってしまいます。ただし報酬系の刺激は中毒性が強いため、悪用には要注意です。ちなみに、3、4回に1回ぐらいの確率で成果が出るものに人間は最もハマりやすいです。(P.174「参加者個人を惹きつける仕掛け」)

これは「ランダム・フィードバック」と呼ばれるもので、いつ報酬が得られるか予測できない状況が、かえって人の期待感を煽り、行動を持続させる効果がある。

パチンコやスロットマシーンといったギャンブルが、まさにこの原理を利用している。

麻雀なども、4人でプレイする中で、誰がいつアガるか分からないという不確実性が、ゲームの面白さを高めていると言えるだろう。

佐藤航陽は、こうしたゲームデザインの技法を他の分野に応用する「ゲーミフィケーション」のテクニックとして、以下の5つを挙げている。

①ランダム・フィードバック
②届きそうな目標の設定
③難易度のエスカレーション
④社会的相互作用の可視化
⑤進歩している実感の提供(P.176「参加者個人を惹きつける仕掛け」)

これらのテクニックは、SNSの「いいね!」機能や、お店のスタンプカード、ポイントシステム、オンラインゲームのレベルアップやランキング表示など、私たちの身の回りの様々なサービスやプロダクトに巧みに組み込まれている。

メタバース空間においても、参加者を惹きつけ、コミュニティを活性化させるためには、これらのゲーミフィケーションの要素を効果的に導入することが不可欠となるだろう。

ビジネスを設計する上でも、これらの要素を意識的に取り入れることで、顧客エンゲージメントを高め、継続的な利用を促すことが可能になる。

佐藤航陽のルーツ:永野修身との繋がり

本書の終章では、佐藤航陽自身のルーツについて、非常に衝撃的な事実が語られている。

ひいおじいちゃんは戦時中の軍隊を指揮する立場にあり、真珠湾攻撃や太平洋戦争の責任を取って敗戦後にA級戦犯として獄中で死んだ人物でした。(P.253「終章 世界の真実は自分の目で確かめるべき」)

この「ひいおじいちゃん」とは、この書籍では詳しく触れられていない。

だが、後に佐藤航陽自身がYouTubeの動画で明かしたところによると、第24代連合艦隊司令長官や第38代海軍大臣、第16代軍令部総長を歴任した永野修身(ながの・おさみ、1880年~1947年)元帥海軍大将のことである。

A級戦犯として東京裁判の公判中に巣鴨プリズンで病死し、靖国神社に合祀されている人物だ。

このような歴史上の重要人物の血を引いているという事実は、佐藤航陽という人物のスケールの大きさや、物事の本質を見抜こうとする彼の姿勢に、何らかの影響を与えているのかもしれない。

また別の動画では、その曽祖父からの恩を返したいと思っていてくれている家柄の人物もいるとの話もあって驚いた。

「血筋というのは、かくも大きな物なのか」と、改めて考えさせられるエピソードである。

彼の家系図や血筋といった背景を知ることで、佐藤航陽が持つ独特の視点や、困難な状況下でも未来を切り拓こうとする強い意志の源泉の一端に触れることができるような気がする。

『世界2.0』を読むということ:未来への羅針盤

佐藤航陽の著書『世界2.0』は、メタバースという現代的なテーマを扱いながらも、その根底にはテクノロジーと人間社会に関する普遍的な洞察が流れている。

本書を読み終えたとき、メタバースに関する知識が深まることはもちろん、それ以上に、変化の激しい現代を生き抜き、未来を創造していくための思考法を学ぶことができるだろう。

個人的な感想としては、メタバースに関する様々な側面が網羅的に解説されており、入門書としても、ある程度知識のある人がさらに理解を深めるための一冊としても有益だと感じた。

特に、テクノロジーの進化の法則や、人間の心理を巧みに利用したゲーミフィケーションの解説などは、メタバースに限らず、様々なビジネスや企画に応用できる普遍性を持っている。

一方で、「ファン向け的な感じかな。深みはないか」という見方も一部にはあるかもしれない。

確かに、個々の技術的な詳細や、より専門的な経済分析を求める読者にとっては、物足りなさを感じる部分もあるかもしれない。

しかし、本書の真価は、細部の専門性よりも、未来を構想するための大きな視座を提供してくれる点にあると考える。

佐藤航陽という稀代の起業家が、自身の経験と洞察に基づいて描き出す未来図は、私たちに新たな気づきと行動への勇気を与えてくれる。

本書は、来るべき新しい世界の「歩き方」と「創り方」を学びたいと考えるすべての人々にとって、価値ある一冊となるだろう。

佐藤航陽が示す未来の断片を辿りながら、自分自身の目で世界の真実を確かめ、新たな一歩を踏み出すきっかけとしてほしい。

彼の言葉は、まさにこれからの時代を生きる私たちにとって、頼りになる羅針盤となるはずだ。

書籍紹介

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