『お金2.0』佐藤航陽

佐藤航陽の略歴

佐藤航陽(さとう・かつあき、1986年~)
実業家。メタップス創業者。
福島県福島市の生まれ。福島県立福島高等学校を卒業、早稲田大学法学部を中退。
2007年にイーファクター株式会社(現在のメタップス)を設立。2015年に東証マザーズに上場。

『お金2.0』の目次

はじめに
第1章 お金の正体
第2章 テクノロジーが変えるお金のカタチ
第3章 価値主義とは何か?
第4章 「お金」から解放される生き方
第5章 加速する人類の進化
おわりに

概要

2017年11月30日に第一刷が発行。幻冬舎。263ページ。

副題は「新しい経済のルールと生き方」。

お金をメインに、世界や社会、経済、自然などを、佐藤航陽の経験を交えながら考察した著作。

「はじめに」では、どちらかと言えば貧しい家庭で育った生い立ちにも触れられる。

さらに大学進学で上京。四年間の学費は無かったので、司法試験に短期間で合格して、弁護士として働こうと思っていたが、試験制度の変更により、自らの将来も修正。

事業を始めるに到る。

そのような部分が「はじめに」で語られ、お金や経済に関する詳細へと入っていくというスタイル。

「第3章 価値主義とは何か?」で、章題にもなっている価値主義とは、可視化されたお金などの資本ではなく、資本に変換される前の“価値”を中心とした主義のこと。

国内をはじめ、中国やエストニアといった海外の事例なども登場する幅広く内容の詰まった作品。

ちなみに編集者は、箕輪厚介(みのわ・こうすけ、1985年~)。「おわりに」でも触れられている。

感想

佐藤航陽の作品に触れたのは、この『お金2.0』が初めてだった。

電子書籍のkindle版で読む。

1回目は、なるほど、といった感じで、とても勉強になった。ただ、1度だけでは、頭にしっかり入らなかったので、時間を置いて、再読。

やはり、とても刺激を受けた。

再読までの間に、佐藤航陽の別の著作である『未来に先回りする思考法』に目を通した。

重なる部分もあり、さらに深く読めたと思う。

「はじめに」でも書かれている通り、専門用語などはできるだけ使わない方針で書かれているので、とても読みやすいというのもポイントである。

お金や経済、原理原則、社会、個人などについての流れの全体像を掴める内容。

また読み直そうかなとも思っているくらいである。

以下、印象に残った部分の引用。

もちろん実際はもっと複雑で無数の要素があるのでしょうが、中でも影響力の強い3つに絞りました。「お金」「感情」「テクノロジー」の3つです。(No.196「第1章 お金の正体」)

時間軸として、現在から未来に向かう場合に、影響のある要素をシンプルに取り出してみた。

その中で、重要なものが、お金、感情、テクノロジーであると説く。

お金は経済のこと。感情は人間のこと。テクノロジーは世界を一変させる技術こと。

特にテクノロジーを注目している人は少ないとも述べる。

例えば、古代ローマの「フォルム」や古代ギリシャの「アゴラ」など、都市の公共広場は政治的にも宗教的にも非常に重要な役割を担っていたことは有名です。(No.513「第1章 お金の正体」)

現在では、Webサービスやアプリなどを開発する際に、ユーザー同士が交流できる仕組みが取り入れられている。

会社でも学校でも、参加者がコミュニケーションを絶やさいないように設計されているイベントが多々あるという指摘。

SNSでは、そのものがコミュニケーションのツールである。

これらの自然に内在する力と、それに似た経済のベクトルの強さを考えると、ある着想が湧いてきます。
それは「自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい」という視点です。(No.960「第1章 お金の正体」)

ここでは、自然の摂理と経済の原理についての着想。

そこで、分かりやすく自然構造とかけ離れた仕組みの悲劇の例として「社会主義」を提示。

「社会主義」は私利私欲を否定し、政府が経済をコントロールし、競争も否定されている。

そのため、現実では、個人の意欲は低下、お金も循環しなくなり、社会は活気を失ったというオチ。

つまり、自然の摂理に合う仕組み、設計をすることが大切。

実際は「注目」や「関心」に過ぎないものが、「評価」や「信用」という高尚な概念に「すり替わっている」ことに違和感を覚えている人が多いのだと思います。(No.1665「第3章 価値主義とは何か?」)

ここでは、ここ数年のインフルエンサー・マーケティング関連に対しての指摘。

価値主義というのは、評価や信用が重要。

ただ、現状のSNSなどの発達によるインフルエンサーの場合には、評価や信用ではなく、単なる注目や関心に、重きが置かれている。

そのために、違和感を覚える人もいる。

つまり、その違和感は正しいのである、という流れ。

人間は、自分が生まれた時にすでに存在したテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる。(No.1994「第3章 価値主義とは何か?」)

これは、佐藤航陽ではなく、イギリスの作家であるダグラス・アダムス(Douglas Adams、1952年~2001年)の言葉。

世代間の価値観の違い。若者の否定。老害化。

シンプルに解説している引用である。

ここでは、今後も新しいテクノロジーが出てきて、若い人たちに対して、上の世代が規制や批判などをするだろう、といった予想なども。

過去から連綿と繰り返されて来ている茶番というか、伝統という感じだろうか。

もちろん、皮肉として、私は上記を書き綴っているけれど。

幅広く、お金や経済、テクノロジー、社会、個人についての考えがまとめられた著作である。

さまざまな歴史的な事項や、世界の動きなども知ることができる。

お金や経済、テクノロジーだけでなく、新しい価値観などに触れたい人にも、非常にオススメの著作である。

書籍紹介

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