『新版 ハマトンの知的生活』P・G・ハマトン

P・G・ハマトンの略歴

P・G・ハマトン(Philip Gilbert Hamerton、1834年~1894年)
イギリスの画家、美術評論家、随筆家。
イングランド北西部のランカシャーの生まれ。

『新版 ハマトンの知的生活』の目次

訳者まえがき 私の「知的成長」の基礎をつくってくれた名著中の名著 渡部昇一
はじめに 知的生活を送る秘訣――知性を豊かに、精神を強靭にする工夫
1 Chapter 知的生活における「肉体の基礎」をどうつくるか
1 自分の能力を存分に発揮し続けるための健康習慣
2 よく働き、よく楽しんだ先人に学ぶ
3 「知的生活」と「動物的生活」の調和
4 人生の「密度」の高め方
5 自分を限りなく向上させる原則
2 Chapter 知的生活における「精神の基礎」をどうつくるか
1 自分をどこまで鍛えられるか
2 「もう一人の自分」の目で物を見る
3 “誘惑”からどう自分を守るか
3 Chapter 教養と知的エネルギーについて
1 人生の質を決定する教育
2 本当の教養、学問とは何か
3 知的エネルギーを最大限生かす勉強のやり方
4 一見“無用の学問”こそ頭の栄養になる
5 外国語を“実学”として習得するために
6 記憶のもつ“拒否力、拒絶力”を尊重すること
7 修練によって鍛えあげられた人間の能力
4 Chapter 時間のつくり方、使い方
1 「時間」を一分も無駄なく活かす法
2 限られた時間で何ができるか、どう生きるか
3 ビジネスパーソンにこそ不可欠なこの「読書法」
4 人生で重要なのは“選択”すること
5 “束の間”の時間も充実させる
5 Chapter 知的独立のための「金銭」について
1 自分という「資本」を手堅く着実に大きくする秘訣
2 本当の「贅沢」とは何か
6 Chapter 人生を豊かにする交際術と孤独について
1 “知的な友情”は賢明な契約のようなもの!?
2 人は孤独によって鍛えられ成長する
7 Chapter 創造的な知的活動の秘訣
1 結果にこだわらず進捗を大事にする生き方を
2 意欲をいつも新鮮に保つために
3 地味な努力の“天才”になること
4 知的再生産にそなえての休息
5 無用の“用”、浪費の“生産”を知る
6 つまらない「私的規則」にしばられない
8 Chapter ものを考える環境と創造する環境
1 「知的生活」を支えるための環境について
2 「集中力」を最高度に発揮できる条件
3 想像力を生み育てる条件
訳者あとがき 『知的生活』の実践者・ハマトンの生涯とその著作について 渡部昇一
新版訳者あとがき 恩師渡部昇一先生とハマトンの『知的生活』 下谷和幸

概要

2022年2月22日に第一刷が発行。三笠書房。332ページ。

1873年に『The Intellectual Life』として刊行したもの。

1991年9月6日に『知的生活』が講談社学術文庫として刊行。

1994年3月31日に『P・G・ハマトンの知的生活』が三笠書房から刊行。

訳者は、英語学者で評論家の渡部昇一(わたなべ・しょういち、1930年~2017年)。山形県鶴岡市生まれ。上智大学文学部英文学科を卒業、上智大学大学院西洋文化研究科修士課程を修了。ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(通称・ミュンスター大学)に留学、Dr.Phil(哲学博士号)を受けている。

また、もう一人の訳者は、渡部昇一の弟子で文学博士の下谷和幸(しもたに・かずゆき)。上智大学文学部を卒業。上智大学大学院文学研究科を修了している人物。

感想

文化人類学者・梅棹忠夫(うめさお・ただお、1920年~2010年)の『知的生産の技術』

そこから渡部昇一の『知的生活の方法』を読む。

そして、渡部昇一の『知的生活の方法』の原点となる書物がP・G・ハミルトンの『The Intellectual Life』

前々から気になっていて文庫を持っていた『知的生活』。何となく伸ばし伸ばしになってしまっていたところ、『新版 ハマトンの知的生活』が発売。

しかもkindle unlimitedにあったので、これは良いタイミングかなと思って読んでみた。

しかし、カントの朝食は一杯の紅茶と一服のたばこでした。その朝食をカントは毎朝5時にとり、それだけの朝食で講義をしたり執筆したり、8時間中断することなく働いたのです。午後1時に昼食をとりましたが、いわゆる食事はこれっきりでした。(P.25:1 Chapter 知的生活における「肉体の基礎」をどうつくるか)

イギリスでは、一般的にたっぷりとした朝食が、その日の労働力の源になると信じられていた。

だが、ドイツの哲学者であるイマヌエル・カント(Immanuel Kant、1724年~1804年)は、朝に紅茶と煙草、お昼に食事、夕食はなし、の生活を繰り返していた。

もともと、カントは体は丈夫な質。さらに30年以上も朝は必ず同じ時間に起床。午後は天候に関わらず散歩。昼間の食事には客を招く。ビールは嫌いで飲まない。生涯独身。

といったエピソードも挙げられている。

知的生活の上での示唆が数多く含まれている。ここで大事なのは、自分の体や性格にあった習慣を得ること。

あとは、人生の目的も。

また同じ章には、運動に関しても。

カントは散歩を毎日していたが、イギリスの詩人であるウィリアム・ワーズワース(William Wordsworth、1770年~1850年)は、徒歩旅行をよくしていたという。

肉体にも注意して生活を送ることも重要。

知力も結局のところ、体力のように思えるし。集中力も、体力か。

その誘惑の種は、知的な伴侶を熱烈に求める彼らの本性の中に、また同じく、共通の関心事で相手が知っていることをまたたく間に知り尽くしてしまうという彼らの本性の中にあるのです。(P.86:2 Chapter 知的生活における「精神の基礎」をどうつくるか)

知的な人の生き方は、一般的な人の生き方にはないような特殊なものがある。

その特殊なものが、不道徳へと誘い込まれる。

知的なパートナーを求める欲求。そして、そのパートナーから根こそぎ知識を得たいという欲求。

つまり、知的な人は、新しいパートナーを求め続けることになる。

すると、さまざまなトラブルも。結婚、不倫、自由恋愛、子供、資産、資金、愛憎。

海外だけではなく、日本でも文学者や芸術家たちの色恋沙汰の問題は多いし。仕方がないことなんだろうな。

知的渇望感からの衝動といった感じなのだろうか。

完全な修得は見込みがないことを自分でわきまえてさえいれば、不完全であっても数カ国語知っていることは役に立つかもしれないのです。(P.132:3 Chapter 教養と知的エネルギーについて)

まずは、完璧な修得は諦める。

そこをしっかりと押さえながら、外国語の勉強をする。やはり、一つくらいは外国語を使えるようになりたいところだな。

森鴎外(もり・おうがい、1862年~1922年)が、沢山のアウトプットをできのは、ドイツ語と英語での多くのインプットがあったから、みたいな話もあるし。

渡部昇一も、ドイツ語と英語が出来るし。

言語は情報収集および情報発信の基礎になるからな。地道に勉強していこう。倦まず弛まず。

要は、お金は時間を守る盾として使い、お金のために時間を浪費しないことです。知性と意志という君主を守るボディ・ガードとして利用することです。(P.206:5 Chapter 知的独立のための「金銭」について)

お金は、時間や知性、意志を守る盾。しっかりと稼いでおくことが大事。

実際に、この部分では具体的な稼ぐ方法に関しては、そこまで触れられていない。

時代によって、お金を稼ぐ方法は異なるから、意図的に詳細は書かなかったのか。どうなんだろう。

まぁ、知的生活を続けるにしても、普通の生活を続けるにしても、お金は重要な基盤となる。

計画的に資本主義の社会の中で、自らの資産を築き上げておこう。

小屋の壁には、ド・セナンクールの書物から引用した次のような文句が木炭の破片で書いてありました。「世の中にある者は己が時代を生きる。孤独なる者はあらゆる時代を生きる」(P.224:6 Chapter 人生を豊かにする交際術と孤独について)

これはP・G・ハマトンの知り合いの話。

その知人の小屋の壁には、フランスの作家であるド・セナンクール(Etienne Pivert de Senancour、1770年~1846年)の言葉が書かれていた。

青年の苦悩と彷徨を扱ったド・セナンクールの書簡体の長編『オーベルマン』は発売当時、ドイツの詩人・小説家のゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe、1749年~1832年)の『若きウェルテルの悩み』に匹敵するほど売れたという。

分かりやすく言うと読書か。

最近の本を読めば、時代を生きることもできる。

いわゆる古典といった昔の本を読めば、いつの時代も生きることができる。

むしろ、100年とか50年とか前の本の方が内容が、安定していたり、ある種の答え合わせが出来ていたりするので、落ち着いて読める。

翻訳も考えたら、時代に加えて、あらゆる国にも生きることが出来る。

読書は楽しいな。

われわれなら神経が参ってしまうような陰湿で執拗な攻撃がご家庭まで及ぶことがあっても、信念を曲げたり、落ち込んで明朗さを失ったりされたことは一切なかった。(P.325:新版訳者あとがき 恩師渡部昇一先生とハマトンの『知的生活』 下谷和幸)

はっきりと意見を言うタイプだったので、色々と敵が多かったようだ。

キャンパスで拉致されそうになったりとか、家族にも危険が迫ったりとか。

それに対して、毅然としていられるのも凄い。さらに落ち込んだり、暗くなったりしないというのも。

さすが、渡部昇一である。

いやはや凄すぎだ。

というわけで、知的生活に興味のある人や渡部昇一に関心のある人には非常にオススメの作品である。

英語のできる人は、プロジェクト・グーテンベルグで、P・G・ハミルトンの5つの作品を無料で読めるので、そちらをチェックするのも良いかと。

もしくは無料のkindle作品を探すのも。

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