『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』越前敏弥

越前敏弥の略歴

越前敏弥(えちぜん・としや、1961年~ )
翻訳家、翻訳講座講師。
石川県生まれ。筑波大学附属駒場中学校・高等学校、東京大学文学部国文科を卒業。ゲームセンター従業員、学習塾自営、留学予備校講師などを経た後、フェロー・アカデミーで翻訳を学ぶ。37歳からエンタテイメント小説の翻訳を始める。
アメリカの小説家であるダン・ブラウン(Dan Brown、1964年~)の『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』などを手掛ける。

『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』の目次

まえがき
本書の使い方
誤訳を防ぐための3か条
第1部 日本人が誤訳しがちな50問
第2部 誤訳・誤読を大きく減らすための30問
付録 文法項目チェックテスト
あとがき

概要

2014年3月20日に第一刷が発行。ディスカバー携書。219ページ。

前著『日本人なら必ず誤訳する英文』『日本人なら必ず悪訳する英文』があり、そのシリーズの続編。正確には『日本人なら必ず誤訳する英文』の続編。前著の復習も兼ねた内容。

大きく二部構成で、第1部で50問、第2部で30問、付録の文法項目チェックテストが50問。

第1部、第2部に関しては、非常に詳細な解説がなされる。

合間合間に「学習相談Q&A」が「Part 10」まであり、英語学者の人たちの質問に回答する形。

感想

越前敏弥のこのシリーズは、先述の通り、前著『日本人なら必ず誤訳する英文』『日本人なら必ず悪訳する英文』がある。

それぞれ読み終えたので『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』も読んでみる。

kindle unlimitedで。

いやはや、難しかった。

細かい文法。決まり文句など、忘れているのか、そもそも憶えていないのか。かなり凹む。

しかも、前著などで出てきた内容で、ミスをしたり、勘違いをしていたりするので、またまた凹む。

ただ、面白いし、楽しい。

実際にどのような問題が出されるか、一つ引用。

問題15
・I don’t just like her.
・I just don’t like her.
(P.30「第1部 日本人が誤訳しがちな50問」)

それぞれの単語は非常に簡単である。

また文法も、至ってシンプルで分かりやすい。

ただ、justの位置によって、どのような意味になるのか。

難しい。

・I don’t just like her.
⇒ぼくは彼女がただ好きなだけじゃない。
(彼女が大好き!)

・I just don’t like her.
⇒ぼくはただ彼女が好きじゃないだけだ。
(彼女が嫌い!)

justの位置だけで、大きく意味が異なってしまう。というか、反対の意味になる。

英語の難しさというか、翻訳の難しさというか、言葉の難しさを痛感する。

英語の解説をしていくと長大になってしまうので「学習相談Q&A」で気になった部分を引用。

Q.辞書はどんなものを選ぶべき?
初学者ならともかく、この本の読者は中級者以上でしょうから、紙の辞書か電子辞書かという質問には、当然電子ですとお答えします。(P.98「学習相談Q&A Part 5」)

電子辞書の一択。

電子辞書の方が紙の辞書よりも引きやすい、という点。

電子辞書以外の選択は無い、といった主張。

というのも、電子辞書の大きなメリットが、複数の辞書を串刺し検索できること。

越前敏弥は、約20種類の辞書を同時に串刺し検索しているという。

さらに、1日の仕事で、辞書を引いたり、ネット検索したりするのが、数百回。

経験を積めば積むほど、調べることが多くなるというのが実情とも。

これは、仕事の正確性、責任性のことでもある。

自分も、いろいろと電子辞書の準備というか、設備投資をしていきたい。ipad proの12.9サイズと物書堂アプリなど。

Q.TOEICや英検などを受ける意味は?
翻訳者の立場で言えば、その種の試験の結果にはほとんど興味がないというのが本音です。TOEICの満点や英検の1旧をとったという人に、いざ翻訳させてみると、誤訳だらけでまったく使い物にならなかった例をいくつも知っています。(P.168「学習相談Q&A Part 9」)

英語をある程度、読んだり、聞いたり、書けたりする能力。

英語を読み解いて、日本語にする能力。

それらの能力は別物であるということ。

精度の高い読み方の問題。翻訳の場合には読者への気配り、調べ物の徹底など粘り強さが重要。

試験系は、短時間に大量の英文を読んで、高得点を取るという性質だから、異なるのは当然。

Q.なぜ訳すことが必要なのですか?
単純な日常の挨拶などはともかく、ある程度こみ入った内容のものがほんとうに深く理解できているかどうかを知るためには、どうしても訳読が必要です。逆に言えば、訳読せずにそれを判定する方法があるなら、ぜひ教えてもらいたいところです。(P.185「学習相談Q&A Part 10」)

訳読は深い理解を判定するために必要。

また、学校教育では、読み書きを中心とした自ら学ぶための基礎となる土台を固める方が、現実的で効果的と越前敏弥は考えている旨も。

他の英語学者や英語教育者も同様かも。英文学者の斎藤兆史(さいとう・よしふみ、1958年~)とか。

基礎固めが教育の基本ということか。

基礎を固めて、あとは旅行だったり、ビジネスであったりとか、必要に応じて、自らが勉強するだけである。

あとは、アメリカ人だろうがイギリス人だろうが、構造の込み入った文章は、読み解くのが難しいだろう。

日本人でも、複雑な日本語の文章を読めない人が多いのと同様に。

どちらにしても、読解力の判定には、構造の質問が必要。日本語であれば、現代文とかのテスト。

日本人が英語を理解しているかを判定するには、英文和訳が必須ということ。

今後も、英語の勉強を続けていこうと改めて思う。

英語の力試しに、英語の文法などの確認に、など英語学習に興味のある人には非常にオススメの本である。

また『日本人なら必ず誤訳する英文』『日本人なら必ず誤訳する英文 リベンジ編』の2冊を加筆、修正、再構成した『日本人なら必ず誤訳する英文 決定版』も。

この辺りもチェックしておくと良いかも。

書籍紹介

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