フランス・ヨハンソン『成功は“ランダム”にやってくる!』

フランス・ヨハンソンの略歴

フランス・ヨハンソン(Frans Johansson)
実業家、作家。
スウェーデン出身。アメリカのブラウン大学で環境科学の学士を取得。ソフトウェア会社を設立。ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得。

『成功は“ランダム”にやってくる!』の目次

INTRODUCTION
PARTⅠ 予測不可能な世界
CHAPTER 1 成功の法則は、ある。
CHAPTER 2 セリーナ・ウィリアムズ 強さの秘密
CHAPTER 3 ノキアはなぜ迷走したのか?
CHAPTER 4 空前のベストセラー小説『トワイライト』が生まれた理由
CHAPTER 5 ランダム戦略

PART Ⅱ チャンスをつかめ!

CHAPTER 6 ダイアン・フォン・ファステンバーグの三つのランダム戦略
CHAPTER 7 クリック・モーメントとは何か。
CHAPTER 8 クリック・モーメントを起こす方法
一・ボールから目をそらせ
二・交差的に考える
意図的に、自分とは異なる分野、文化、産業を探索する
多様性のあるチームを作る
接点の多い環境を作る
他部署の会議や会合に出席する
意外なものを探す
三・好奇心に従う
四・予測可能な道を避ける
CHAPTER 9 目的ある賭けとは何か。
CHAPTER 10 目的ある賭けをする方法
一・何回も賭ける
二・小さく賭ける
三・実行可能な小さな一歩を踏み出す
四・投資収益率(ROI)ではなく、許容損失額を計算する
五・情熱をモチベーションにする
CHAPTER 11 複雑エネルギーとは何か。
CHAPTER 12 複雑エネルギーを利用する方法
一・大きな留め金を作る
二・驚きに注目する
三・好機を探す
四・好機と熱意に気づく
五・倍賭けをする
EPILOGUE
謝辞
原注

『成功は“ランダム”にやってくる!』の概要

2013年12月1日に第一刷が発行。314ページ。阪急コミュニケーションズ。

副題は“チャンスの瞬間「クリック・モーメント」のつかみ方”。

原題は『The Click Moment』。副題は「Seizing Opportunity in an Unpredictable World」。2012年8月30日の発行。

訳者は、翻訳家の池田紘子(いけだ・ひろこ、1975年~)。群馬県の生まれ。獨協大学外国語学部英語学科を卒業している人物。

成功者は、偶然の出会い、突然のひらめき、予期せぬ結果などを経験している。彼らは運命を変えた瞬間のことを振り返り、「あの瞬間がすべての始まりだった」と言う。誰にでも訪れるこの瞬間を、私は「クリック・モーメント」と名づけた。(P.7「INTRODUCTION」)

日本語では、副題に記載されているクリック・モーメントの定義。

原題では、文字通り『The Click Moment』となっている。

つまり、この本の主題というか、超重要な言葉。

目次にもある通り、この本は二部構成。

「PARTⅠ」では「なぜ世界が予測不可能なのかを検証」している。

「PARTⅡ」では「偶然、運、ランダムな出来事に出会う機会を増やし、見込みのありそうな出来事を活用する方法を紹介」している。

25、26ページに、本書の構成が記載されている。

『成功は“ランダム”にやってくる!』の感想

ネットで知って、調べてみたら、kindle unlimitedにあったので読んでみたのが、この『成功は“ランダム”にやってくる!』

鋭い論理は成功への近道だと信じている。しかし、もし成功への道が論理的だったら、誰もがすぐにその道を発見できることになり、結局その道は効果的ではなくなってしまう。(P.69「PARTⅠ 予測不可能な世界」)

ああ、これは、ヤバい。

確かに成功への道が論理的であれば、論理的な人に真似をされてしまい、競争にさらされて効果は下がってしまう。

成功の再現性の難しさ。

でも、論理的であることは大切。あとは、タイミング。論理を超えた何か、といった感じか。

まぁ、あとは、論理の出発点だな。情緒的な。

本章で述べた三タイプのランダム性を使えば、成功した人々が魅力的で、勤勉で、才能に恵まれている理由の一部を説明できる。(P.126「PARTⅡ チャンスをつかめ!」)

社交性があると、本書で語られているクリック・モーメントに遭遇しやすくなる。

試行回数が多ければ、当然その結果である成功の確率も高まる。

クリック・モーメントが土台となって、試行回数と成功が増えれば、複雑エネルギーの影響も大きくなる。

社交性があるということは、魅力的。

試行を継続できるのは、勤勉。

その根本に才能、分かりやすく述べると、得意な分野があるといった感じか。

人と人との繋がりが大事ってことなんだな。

人間は一つのこと――今回の場合は選んだカード――だけに集中すると、周囲で起きていることをすべて見逃してしまうからだ。まったく見えなくなってしまうとも言える。この現象は「非注意性盲目」といい、人間の特性のなかでは頻繁に研究されている現象だ。(P.156「PARTⅡ チャンスをつかめ!」)

「非注意性盲目」。英語だと、Inattentional blindness もしくは、perceptual blindnessと表記される。

バスケットボールのパスの回数とゴリラの登場。心理学研究で有名な実験。パスの回数に集中していると、ゴリラには気づかいない、というもの。

「selective attention test」という題名で動画もある。

色々な書物でも登場してくる。集中すると、他は見えなくなってしまう。人間の特性。怖いな。

他の本とかで、このバスケットボールのパスとゴリラの話は読んだことがあった。

さらに「非注意性盲目」って、飛行機事故のパイロットとかも、そういった感じだったかな。

何かに集中することは、別の何かに対して不注意であること。

だから、ぼんやりと全体を見ることが重要な時もあるのか。格闘技とか、武術とか、そういうことか。

心理学にリスク・ホメオスタシス理論という考え方がある。これは、人間には許容できる危険レベルが決まっており、そのレベルを維持しようとする性質があるという考えに基づいた理論である。(P.193「PARTⅡ チャンスをつかめ!」)

最初から、許容範囲は決まっている。

あるリスクが減ると、別のリスクを増やそうとする。そういう性質。

だから常に、総合的にリスクは変わらない。これも怖いな。

ちなみに、ホメオスタシスは、homeostasisの表記。日本語であれば、恒常性となる。

生物において、その内部環境を一定状態に維持しようとする性質。

お金で考えても、あるな。何かが割引で安くなったら、その分、別の物を購入してしまうとか。

本能と理性。直感と合理。この辺りのバランスか。

たとえば、同等確率の原則に従えば、もっとも優れた論文を書いた科学者は、もっとも質の低い論文も書いていることになる。(P.198「PARTⅡ チャンスをつかめ!」)

これも面白いな。

偉大な作家や芸術家たちは多作で有名である。そのため、素晴らしい作品を残していることが多い。

同時に、質の低い作品も。

アメリカの心理学の教授・サイモントン(Dean Keith Simonton、1948年~)は、論文だけではなく、作曲など他の分野でも、同様の関係があることを発見。

勝率が同じであるならば、試行回数が超重要。

諦めない心、折れない心。
失敗が当然という姿勢。失敗を前提にした取り組み。

最初から、膨大な回数を前提にしておくとか。最初の計画に、取り入れておくこと。

その後には、パブロ・ルイス・ピカソ(Pablo Ruiz Picasso、1881年~1973年)の話も。

生涯に5万点以上の作品を描いたという逸話。10万点以上という説もあるとか。

その他に、トーマス・アルバ・エジソン(Thomas Alva Edison、1847年~1931年)や、アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein、1879年~1955年)の話も。

確か『新宿鮫』シリーズで有名な小説家・大沢在昌(おおさわ・ありまさ、1956年~)も似たようなことを言っていたし。

『天才 その「隠れた習慣」を解き明かす』にも似たようなエピソードがまとめられていたし。

挑戦する回数を大切にするということだな。

目的ある賭けをする場合、はるかに有益な計算がある。しかも、これはすぐに答えが出る。ROIではなく、許容損失額に注目するのだ。(P.217「PARTⅡ チャンスをつかめ!」)

ROIというのは、Return On Investmentの頭文字を取ったもので、投資収益率や投資利益率と呼ばれる。

その収益や利益ではなく、許容できる損失額に着目するのがポイント。

許容損失額という用語は、サラス・サラスバシー(Saras Sarasvathy、1959年~)の論文「起業家を起業家的にする方法」からの引用。

これを計算しておくと、プロジェクトが失敗した時に、どれほど危険な状態になるのか、前もって理解できるというもの。

この判断も面白いな。というか、全く考えも及ばなかった。

どの程度の失敗を許容できるか、損失を許容できるのか。

ある種、自分の器の大きさを計測するかのような感じだな。

全体的に、予想以上に面白かった。こういった本を読むのは、とても楽しい。偶発性みたいな感じ。根拠もしっかりと揃っているし。科学的であるし。他の著作も読んでみたいと思った。

というわけで、科学的であったり、論理的であったり、さらにそこを超えるような飛躍もあるような、非常にオススメの本である。

書籍紹介

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