『時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法』佐藤航陽

佐藤航陽の略歴

佐藤航陽(さとう・かつあき、1986年~)
実業家。メタップス創業者。
福島県福島市の生まれ。福島県立福島高等学校を卒業、早稲田大学法学部を中退。
2007年にイーファクター株式会社(現在のメタップス)を設立。2015年に東証マザーズに上場。

『時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法』の目次

はじめに
国家の未来
領土の重要性が低下する
当面、国民は「形式的に」国家に所属し続ける
国家の権力が、企業に脅かされる
そして、新しい国家のあり方が生まれる
政治の未来
選挙と議会が中抜きされるようになる
国家にも経営政略が必要となる
第1章 未来に先回りしたものだけが勝ち残る
未来予測はなぜ難しいのか?
予測が難しいからこそ、強力な武器になる
未来予測の鍵は「パターン」
予測の次は、タイミングの見極め
第2章 未来予測の技法
常に原理から考える
すべては「必要性」からはじまる
イノベーションの正体
テクノロジーの進歩と社会の変化に潜むパターン
パターンはビジネスの世界から見えてくる
自らパターンを見出すには行動あるのみ
すべての企業の「目的地」はひとつ
おわりに

概要

2018年1月30日に第一刷が発行。182ページ。ディスカヴァー・トゥエンティワン。

電子書籍も同時。電子書籍では、137ページ。

2015年に発売した前著『未来に先回りする思考法』に修正を入れて、未来予測のための技法を抽出する形で再構成した書籍。

前著は、テクノロジーの進歩の流れをベースにしたもの、今作は、より未来予測のための方法論に重点を置いたもの、といった仕上がり。

もちろん、再構成されたものであるため、重複は多い。そのため、読書の目的によっては注意が必要。

どちらも未読である場合、しっかりと内容を読みたい人は、前著『未来に先回りする思考法』を、サクッと内容を読みたい人は、今作『時代を先読みし、チャンスを生み出す 未来予測の技法』を、選ぶと良い。

前著を読んでいる場合、内容の復習を兼ねるといった気持ちで、読み進めると良い。

感想

佐藤航陽の書籍は、ほとんど読んでいる。メタバースについて論じた2022年に発売の『世界2.0』は、まだ読んでいないけれど。

今回の作品はkindle unlimitedで読む。

取り敢えず、まだ読んでいなかったので、この書籍を手に取る。

まぁ、感想としては、やはり復習的な感じ。

テクノロジーの進歩の流れをベースにした、未来を見通すための汎用的な思考体系をお伝えしようとした前著『未来に先回りする思考法』に大きく手を入れ、未来予測のための技法を抽出するような形で再構成することにいたしました。(P.1「はじめに」)

上記のように、最初に著者の佐藤航陽が読者に伝えている。

内容や関連情報を気にせずに購入した場合には、あれっ? といったように、既視感を覚える人もいるかもしれない。

その辺りは、気をつけておきたい点である。

実は、彼らが、コミュニケーション能力が高く、リーダーシップや人望にあふれたなんでもできるスーパービジネスマンであることは稀です。彼らが共通して持っているのは「世の中の流れを読み、今どの場所にいるのが最も有利なのかを適切に察知する能力」です。(P.37「第1章 未来に先回りしたものだけが勝ち残る」)

ここでの彼らというのは、短期間で大きな企業をつくり上げた企業経営者のこと。

別に物凄いマルチプレイヤー的なビジネスマンではなく、未来を先読みしているかのような能力を持っているのではないか、というもの。

ただ、この点に関しても、常人よりも、桁外れのビジネスマンの能力があることは、間違いないであろう。

先読みや未来予測だけができれば良いというわけではないと思う。

成否の鍵は、垂直統合型と水平分業型というビジネスモデルの違いにありました。垂直統合型は成功すれば高い利益率を叩き出すモデルですが、全プロセスを自社で完結させることになるため、資金力とノウハウが求められます。一方で、水平分業型の場合、足りないプロセスについては他社に任せ、自社は得意なところだけに特化することができます。(P.47「第1章 未来に先回りしたものだけが勝ち残る」)

これは、アップルとマイクロソフトの違いを述べた部分。

アップルは垂直統合型で、マイクロソフトは水平分業型。

アップルは、ハードもソフトも全てを、担って販売する。マイクロソフトは、ハードではなくソフトをメインに販売。

そこに大きな違いがある。

そして、佐藤航陽は、垂直統合型よりも水平分業型の方が、柔軟で、各種のリソースも少なく、成功をしやすいと考えた。

加えて、データなどを分析した結果、オペレーティング・システムを、iOSではなく、Androidを利用した事業で成功した、といった結末。

「原理」とは船が海に流れていかないようにするための碇のようなものです。原理に常に立ち返ることができれば、自分の乗った船が流されることはありません。(P.57「第2章 未来予測の技法」)

原理や原則の大切さを語る。

原理や原則というのは、かなり当たり前のことが書かれていることが多い。

そのため、一見すると、そんなことは分かっている、という風になってしまう。

だが、そこで、簡単に流してしまうのではなく、改めて立ち止まって、考え直すことが重要である。

佐藤航陽は、データなどを分析して、原理や原則などに照らし合わせて、自分の直感とは異なる選択をして、上手くいったことがあるという。

この辺りなども、自分の生活やビジネスなどに、取り入れていきたいところである。

自らの趣味嗜好や直感ではなく、原理や原則、統計など、そちらを重視する選択。

思い切りや決断力が必要な感じである。

この人口わずかな国が、イノベーションを起こし、ノーベル賞を受賞し続ける根底には、切実な「必要性」がある。(P.59「第2章 未来予測の技法」)

この人口わずかな国、というのは、イスラエルの話。

イスラエルは、シリコンバレーと同様、あるいはそれ以上に、イノベーティブなIT企業が多いような国。

イスラエルは、エルサレムを首都とした西アジアに位置する共和制の国。実質的な首都は、テルアビブ。ユダヤ人が中心。

宗教や地理的な側面から、とても不安定になりやすい国の情勢。

そのため、常に危機感があり、民間企業、教育研究機関、軍事機関、政府などが、協力して、一つにまとまりやすい。

結果として、世界でも優秀な人材や企業が生まれるといった話。

かなり、ザックリとまとめた感じではあるが。

「必要性」というのは、歴史的に見ると、さまざまな部分で、表出しているので、そこを掘り下げていくと、新しい知見が得られるかもしれない。

物事がうまくいかない場合、パターンを認識するために必要な試行回数が足りていないことがほとんどです。サンプル数が必要だと頭ではわかっていながらも、感情的な理由から十分な数が集まる前にあきらめてしまうことが本当に多くあります。(P.122「第2章 未来予測の技法」)

単に、定量的に足りない。

にも関わらず、自らの心といった、定性的な部分の判断で、諦めてしまう場合が多い。

なので、感情に振り回されずに、あくまでも機械的に、回数をこなすことも大切。

大きな失敗はいけないが、小さな失敗を繰り返すのは、有りといった感じ。

一喜一憂せずに、パターンや法則を見つけるための実験と割りきって、量をこなす。

データ集めであると、前向きに考えて取り組むことが重要といった話。

内容に関しても、そこまで難しいものはなく、文量も137ページと少ないので、さらりと読めてしまう作品。

時間がない時でも、一気に読めるので、佐藤航陽の著作を試したい人などに、非常にオススメである。

また『未来に先回りする思考法』の復習、あるいは予習などにも利用できる作品。

内容の重なりが多いので、目的によって、読むこと、読まないことを決めると良いかも。

書籍紹介

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