『戦略がすべて』瀧本哲史

瀧本哲史の略歴

瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)
経営コンサルタント。投資家。教育者。
日出学園小学校、麻布中学校・高等学校を卒業。東京大学法学部を卒業。
東京大学大学院法学政治学研究科助手やマッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、京都大学産官学連携センターの客員准教授も務める。

『戦略がすべて』の目次

Ⅰ ヒントコンテンツには「仕掛け」がある
Ⅱ 労働市場でバカは「評価」されない
Ⅲ 「革新」なきプロジェクトは報われない
Ⅳ 情報に潜む「企み」を見抜け
Ⅴ 人間の「価値」は教育で決まる
Ⅵ 政治は社会を動かす「ゲーム」だ
Ⅶ 「戦略」を持てない日本人のために

概要

2015年12月20日に発行。新潮新書。256ページ。

『日経プレミアPLUS』の特集及び連載「瀧本哲史の時事評論」、『新潮45』の連載「逆張り(コントラリアン)日本編」を元に再編集したもの。

コンピューターをしのぐ編集者というのは、コンテンツの精査と販売戦略の両方に通じ、かつそれを有機的につないでヒットを生み出せる編集者だ。(P.71:Ⅱ 労働市場でバカは「評価」されない)

何となく、この「Ⅱ 労働市場でバカは「評価」されない」の「6.コンピューターにできる仕事はやめる――編集者の方程式」の部分を読んで思い浮かんだ。

その人物は、幻冬舎の編集者・箕輪厚介(みのわ・こうすけ、1985年~)。

実業家・堀江貴文(ほりえ・たかふみ、1972年~)や、さまざまな起業家の本を世に送り出してヒットを飛ばした仕掛け人。

NewsPicksの書籍販売の仕組み化。TwitterやFacebook、Amazonに関するハックなど。

そもそも、箕輪厚介は、幻冬舎の社長である見城徹(けんじょう・とおる、1950年~)の方法をトレースしていると自ら語っていた事もあった気がする。

確かに見城徹もコンピューターをしのぐ編集者である。

各種の内容や方法を、有機的につなげる。とても分かりやすい。そして、とても重要な部分である。

一定の割合で少数の人が効率を無視して投資するという考え方が必要である。大学も企業も個人も、社会全体が「非民主的戦略的非効率」をとらなければ先細るのだ。(P.111:Ⅲ 「革新」なきプロジェクトは報われない)

非連続な変化を生み出す卓越したアイディアや、競争ゲームを変えてしまうような新発見は、現代社会の主流になっているような、民主主義や効率化では、決して生れることがない。

では、どうしたら、良いのか。

敢えて、意図的に、非民主的で、非効率を選ぶ。すると、連続的ではない、新しいものが生み出される可能性が大きくなる。

誰もが同じようなルールで、同じような思考方法を使っているのであれば、一般化、コモディティ化してしまう。また市場としてもレッドオーシャンである。

ちなみに上記の引用は「10.多数決は不毛である――ips細胞の方程式」という小見出しが付いている部分。

戦略を考えるというのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み・弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることなのだ。(P.245:Ⅶ 「戦略」を持てない日本人のために)

本の構成としては、最後であり、総まとめの部分。特に小見出しなどはない。

現実社会の競争では、他の人とは全く異なる道を選んだり、今までのルールを変更したり、さまざまな視点から勝利を手にする必要がある。

そのためには、戦略をしっかりと考える。では、その戦略とは何かというのが、上記の引用。

特に日本人は、そのような革新的な部分が弱いという。第二次世界大戦や戦後の経済成長などを例に挙げて説明。

日常的に身の回りのことを、戦略的な視点で眺めるようにして、普段から分析のトレーニングをすると良いという助言も。

感想

この本も既に、二度読んでいる。

なかなか自分の日常生活に落とし込めていないので、さらに読んで実践していきたいところ。

内容に関しては、AKB48や五輪招致、RPG、ネットビジネス、英語入試、地方創生など、とても身近で、興味や関心の高い話題を取り上げているので、読みやすい。

ただ読みやすいからといって、直ぐに自分の中に取り込めないのが難しいところ。頭で分かっても行動が必要である。

古典的な分類では、意思決定は、上から戦略、作戦、戦術となるという。上位では抽象度が高く、下位では具体度が高くなる。

まずは大きな方向性を定める。その中で、どのような方法を取るかを決める。そして、具体的な手段を考える、といった感じか。

瀧本哲史が好きな人には、もちろんオススメである。

特にビジネスに携わっている人向けではあるが、戦略的な思考法を学びたい人であれば、とても良い本である。

書籍紹介

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