『知的生産の技術』梅棹忠夫

梅棹忠夫の略歴

梅棹忠夫(うめさお・ただお、1920年~2010年)
民俗学者。文化人類学者。
京都府京都市の生まれ。京都帝国大学理学部動物学科を卒業。

『知的生産の技術』の目次

まえがき
はじめに
1 発見の手帳
2 ノートからカードへ
3 カードとそのつかいかた
4 きりぬきと規格化
5 整理と事務
6 読書
7 ペンからタイプライターへ
8 手紙
9 日記と記録
10 原稿
11 文章
おわりに

概要

1969年7月21日に第一刷が発行。岩波新書。218ページ。

発売当初から現代に到るまで超ロングセラーの名作。

ちなみに「知的生産」という言葉は、梅棹忠夫による造語である。

かんたんにいえば、知的生産というのは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら――情報――を、ひとにわかるかたちで提出することなのだ、くらいにかんがえておけばよいだろう。(P.9「はじめに」)

著作内で上記のように「知的生産」という言葉の方向性を示す。つまり、ほとんどの人間に当てはまる活動となる。

くりかえしていうが、今日は情報の時代である。(P.15「はじめに」)

1960年代の後半に書かれた文章。

2000年頃には情報技術(Information Technology)が、インターネットによりさらに発展。いわゆるIT革命という言葉が喧伝された。

現代もさらに情報に関連する技術は発達。情報量もより増大している。結局のところ、いつの時代も情報の時代である。

いつの時代も情報の時代であるならば、情報を扱う技術を学んでおくのは、老若男女を問わず、生活や仕事の上でも大切となる。

わたしは本をよむのに、じつは二重の文脈でよんでいることになる。ひとつは著者の構成した文脈によってであり、もうひとつは、わたし固有の文脈によってである。それは、まったくべつのもので、一本にはならない。(P.112「 6 読書」)

本の著者の主張や意見を読むという文脈。それとは別に読者が関心したり、興味を持ったりする視点で読むという文脈。著者の文脈と読者の文脈。

この二つの文脈を、梅棹忠夫は二重の文脈と呼ぶ。

読書というのは、ただ単に著者の意見を賛否しながら読むだけではない。それだけでは、読書の効用は少なくなってしまう。

自分の知らなかった情報や知識を得るためのものでもある。その本の主題とは全く異なる事柄を考えながら読み進めるのも良いのである。

形式が否定されてしまうと、こんどは各人の責任において、いきいきした名文をかかねばならなくなったのだ。(P.152「 8 手紙」)

手紙の章ではあるが、これは日記やレポート、論文、随筆。あるいは、文章以外にも役立つ視点の得られる部分。

誰でも、ある程度のアウトプットが出来るように形式というものがある。凡人であれば、それを上手く活用するべきだという事。

今日、すべての人にとって必要な、知的生産のための基礎技術としての文章は、ひとに感動をあたえるような、芸術的な文章ではない。ものごとと、思想とを、まちがいなく、わかりやすく、ひとに伝達できるような、機能的な文章なのである。(P.212「11 文章」)

こちらも日常的に勘違いしてしまいそうな事項。誰もが芸術的な文章を書けるわけでもないし、誰もが芸術的な文章を求めているわけでもない。

目的にあった文章を書く事が何よりも大切である。事務的で機能的な文章が必要なのである。

そのために、事実と考えを明瞭に順序立てて、論理を積み上げる。理由と結論と因果関係をきっちりと書く。

具体的な事例を入れて補足するなど、ちょっとした工夫なども取り入れる。必要なものを最小限にまとめて、読書に分かりやすいように提示する。

感想

確か梅田望夫(うめだ・もちお、1960年~)の文章の中で、この著作を知ったような気がする。

本を読む事は好きだったので、様々な知識を上手く整理して、特に仕事へ活かしたいといった願望があったのだろう。

この著作の中には、本の読み方や文章の書き方などの記述もある。さらに参考となる他の書籍も紹介されているので、興味のあるものを読み進めていくのが良い。

実際に私も、加藤秀俊(かとう・ひでとし、1930年~)の『整理学』や小泉信三(こいずみ・しんぞう、1888年~1966年)の『読書論』、川喜田二郎(かわきた・じろう、1920年~2009年)の『発想法』を知って、読了している。

確かに現代では、古くなってしまったり、各種のアプリケーションで代替できる技術や方法論もあるだろう。

ただ根本的な考え方や姿勢などは、とても勉強になるはずのオススメの本である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

京都大学

京都府京都市にある国立大学。梅棹忠夫が学び、また教鞭を執った。

公式サイト:京都大学

国立民俗学博物館

国立民族学博物館は、大阪府吹田市にある民俗学・文化人類学を中心とした研究機関並びに博物館。初代館長は、梅棹忠夫。

公式サイト:国立民族学博物館