瀧本哲史の略歴
瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)
経営コンサルタント。投資家。教育者。
麻布中学校・高等学校を卒業。東京大学法学部を卒業。
東京大学大学院法学政治学研究科助手やマッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、京都大学産官学連携センターの客員准教授も務める。
『武器としての交渉思考』の目次
ガイダンス なぜ、いま「交渉」について学ぶ必要があるのか?
1時限目 大切なのは「ロマン」と「ソロバン」
2時限目 自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる
3時限目 「バトナ」は最強の武器
4時限目 「アンカリング」と「譲歩」を使いこなせ
5時限目 「非合理的な人間」とどう向き合うか?
6時限目 自分自身の「宿題」をやろう
『武器としての交渉思考』の概要
2012年6月25日に第一刷が発行。星海社新書。336ページ。
瀧本哲史が京都大学で学生に教えていた「交渉の授業」を一冊にまとめたもの。
「バトナ」とは、英語の「Best Alternative to a Negotiated Agreement」の頭文字をとった言葉です。簡単にいえば、「相手の提案に合意する以外の選択肢のなかで、いちばん良いもの」という意味になります。(P.139:3時限目 「バトナ」は最強の武器)
ここでは、選択肢を複数持ってから交渉の場に出ることが、基本的で強力な戦術であるというふうに述べている部分。
バトナの内容により、交渉時に相手との関係性が変わる。バトナが良いものであれば、強い立場になる。バトナが悪いものであれば、弱い立場となる。
交渉は、相手のバトナと自分のバトナの良し悪しの調整の場となる。
その「合意できる範囲」のことを「ゾーパ」と呼びます。
ゾーパとは、「Zone of Possible Agreement」の略で、日本語にすると「合意が可能となる範囲」といった意味になります。(P164:3時限目 「バトナ」は最強の武器)
その「合意できる範囲」とは、相手と自分の条件の範囲のこと。
ただ、そもそもゾーパが無い時もある。双方が合意しない方が、双方にとってメリットがある。
逆を言えば、双方が合意してしまうと、双方にとって損であるという状態。
なので、そのような場合には、交渉は継続せずに、そこで終了してしまうことがベスト。
またバトナやゾーパに関しては、情報収集だけで済む問題なので、その部分は徹底的に行なっておくことが重要。
アンカリングとは、さきほども少し説明したように「最初の提示条件によって、相手の認識をコントロールすること(もしくは、認識がコントロールされてしまうこと)」です。(P.190:4時限目 「アンカリング」と「譲歩」を使いこなせ)
最初の提示条件が、一つの基準になってしまうという話。
そのために、最初にどのような条件を提示するかで、交渉そのものが大きく変化してしまう。
また自分が相手から提示条件を出された場合には、その条件の設定自体に、何か問題はないのかを確認する。
そして、自分がアンカリングを使う時には、高い目標、現実的、説明が可能、というのが大切。
また、相手にとって価値が高く、自分にとって価値が低い、つまり自分にとって影響が少ない部分で、譲歩をするという方法も。
最終的には、相手のあらゆる分析が超重要であるということ。
『武器としての交渉思考』の感想
この本も二回読んでいる。交渉について学ぶ機会というのは、ほとんどないので、とても勉強になった。
ちなみに瀧本哲史で星海社新書の『武器としての決断思考』と同様に、最初にガイダンスがある。
それぞれ◯時限目と分けられて、さいごに◯時限目で手に入れた武器として、まとめが掲載されている。
その章の内容を、端的に総復習ができる構成。
また一つの特徴というか、ポイントとしては、一般的な「まえがき」の部分である、ガイダンスがとても長い。49ページまで続く。
そして、50ページから目次となる。
全体的にも、新書としては、なかなかの分量で、332ページから成っている。内容も丁寧で、読み応えもある。読書した感、勉強した感も、副次的に味わえる。
特に営業に携わっている人や個人で事業を行なっている人にはオススメだと思う。
バトナもゾーパもアンカリングも、とても役立つ概念。
相手の納得感を減少させてしまうため、無条件な譲歩をしない。全てを論理的に説明できるようにしておくと、納得感が出る、など。
直ぐに使える内容。さらに、本文には各種の具体的な例が掲示されているので、とても分かりやすい。
ビジネスに関わる人はもちろん、交渉について知りたい人にはとても有用なオススメの本である。