『起業の天才!』大西康之

大西康之の略歴

大西康之(おおにし・やすゆき、1965年~)
ジャーナリスト。
愛知県の出身。早稲田大学法学部を卒業。日本経済新聞社を経て独立。

江副浩正の略歴

江副浩正(えぞえ・ひろまさ、1936年~2013年)
リクルートの創業者。
大阪府大阪市の生まれ。甲南中学校・高等学校、東京大学教育学部教育心理学科を卒業。

『起業の天才!』の目次

はじめに 江副浩正は「服を着たゾウ」――瀧本哲史氏インタビュー
序章 ふたりの天才
主な登場人物
第1部 1960
第1章 ユニコーンの誕生
第2章 紙のグーグル
第3章 進撃のダイバーシティー
第4章 「日本型経営」を叩き潰せ
第5章 APPI
第6章 打倒Y
第2部 1984
第7章 江副か稲盛か
第8章 森田の未来、真藤の未来、江副の未来
第9章 情報の海へ――ALL HANDS ON DECK!(総員配置につけ!)
第3部 1989
第10章 変容
第11章 情報が人間を熱くする
第12章 世紀のスクープ
第13章 反転
第14章 「おまえら。もっといかがわしくなれ!」
エピローグ
江副浩正 関連年表
主要参考文献

概要

2021年2月11日に第一刷が発行。東洋経済新報社。474ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

リクルートの創業者・江副浩正の生涯を追いながら、リクルートの軌跡を辿るノンフィクション。

当然、贈収賄を巡る政官財を巻き込んだリクルート事件の概要も。

リクルート関連を含めて、数多くの人物たちが登場する。

帯にも書かれているが、間接的な繋がりとして、Amazonの共同創業者であるジェフ・ベゾス(Jeffrey Preston Bezos、1964年~)。

ただし、ほんの少しだけの関わり。ここに期待し過ぎない方が良い感じ。

目次にもある通り、京セラや現在のKDDI、当時の第二電電を創業した稲盛和夫(いなもり・かずお、1932年~2022年)なども。

序文は、経営コンサルタントで投資家の瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)というのもポイントである。

感想

リクルートや江副浩正について、あまり知らなかったが、とても勉強になった。

リクルート事件の概要も掴めた。微妙な事件である。
当時の商慣習的には問題がない部分が多い。決定的なものは、一部だけ。

リクルートコスモスの社長室長・松原弘が国会議員の楢崎弥之助(ならざき・やのすけ、1920年~2012年)に500万円を渡したという事実。

それ以外は、割りとグレーな部分。

既得権益を持つエスタブリッシュメントたちの抵抗。マス・メディアの煽り。あとは検察のやり口。

結局の所、商慣習というか、これまでの枠組みを、法律の範囲内で、壊していこうとすると、大きな反発が起こるということ。

実業家・堀江貴文(ほりえ・たかふみ、1972年~)や投資家・村上世彰(むらかみ・よしあき、1959年~)とかも、その延長線上にあるのかもしれない。

とても驚いたのが、序文が瀧本哲史だったこと。

これは、全くチェックしていなかった。もしくは、瀧本哲史経由でこの書籍を知っていたけれど、忘れていたのかもしれない。

瀧本哲史は、江副浩正を非常に高く評価していたようだ。ほんの4ページだけではあるが。

この著作自体は、474ページと、それなりの文量がある。

ただ退屈はしない。リクルートの社内の事業に賭ける熱、リクルート事件の騒動の波乱、その後のリクルートの変遷。とても面白い。

リクルートの創業メンバーの一人でもある大沢武志(おおさわ・たけし、1935年~)の『心理学的経営』も読んでみようと思う。

ダイエーの創業者・中内㓛(なかうち・いさお、1922年~2005年)にも興味を持ったので、その辺りの関連書籍もチェックしておくとしよう。

起業、ビジネス、組織、経営、事業、人材、採用など、多岐に渡る事項で、勉強になる非常にオススメの一冊である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

江副浩正記念碑

岩手県八幡平市安比高原にある江副浩正の顕彰碑。

1974年に江副浩正は、宿泊施設とゴルフ場、テニスコート、アーチェリー場、オリエンテーリングコースまで付いた社員のための研修施設を建設。後に「盛岡グランドホテル」を買収。1981年にはスキー場が完成。

その基礎を築いた江副浩正を顕彰する6個のブロックを積み上げた約5メートルの記念碑。

歌人・石川啄木(いしかわ・たくぼく、1886年~1912年)の「こころよき 疲れなるかな 息もつかず 仕事をしたる後のこの疲れ」という短歌が刻まれている。