『「超」整理法』野口悠紀雄

野口悠紀雄の略歴

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお、1940年~)
経済学者。専攻は日本経済論、ファイナンス理論。
東京の生まれ。東京大学工学部を卒業。大蔵省入省。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)より経済学修士号を取得。
イェール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。

『「超」整理法』の目次

序章 あなたの整理法はまちがっている
第一章 紙と戦う「超」整理法
第二章 パソコンによる「超」整理法
第三章 整理法の一般理論
第四章 アイディア製造システム
終章 高度知識社会に向けて

概要

1993年11月25日に第一刷が発行。中公新書。232ページ。

著者による「超」の付くシリーズの最初である。副題は「情報検索と発想の新システム」。

徐々にパソコンが家庭などにも普及し始めた頃。インターネットは、まだ一般的ではないといった時代背景がある。

情報環境が一変したことはまちがいない。誰もが驚嘆すべき博識になったようなものだ。逆にいえば、単なる物知りでは価値がなくなったことになる。事実を分析し、評価する能力が求められるようになったのである。P.103「第二章 パソコンによる『超』整理法」

データベースとしてのパソコンの利用。情報検索が簡単になった事に言及。

今までは自分の頭に入れていた情報を身体の外部に置くことが可能になった。

そのデータベースにアクセスするには料金を支払うかもしれないし、前提となる資格や知識も必要かもしれない。

ただしパソコンが普及した事によって、情報の扱い方が大きく変わった。

この著作ではまだ触れられていないが、インターネットが広く用いられる現代では尚更である。

分析と評価によるアウトプットの重要性が非常に高いという事。

秘書が仕事の内容を完全に把握しており、何の指示をしなくとも、要保存書類と廃棄書類を分別し、前者を適切に分類してくれる、というような状況は、通常はありえない。そこまで判断ができるのであれば、それはもはや秘書ではなく、ボスそのものであるとさえいってよい。P.160「第三章 整理法の一般理論」

非常に示唆に富んだ文章。現在では各種のアプリケーションやプログラミング、もしくは、AIなどの利用によって、ある程度の指示の自動化は可能である。

整理法であれば、Eメールなどの自動振り分け、応用的に考えると日常生活では、アプリを使った予定の通知や体調管理なども。

自分自身の行動管理の視点で読んで考えてみるとより面白い。

書く作業でもっとも難しいのは、「始めること」だ。イナーシャ(慣性)が大きいのであある。構えてしまう。重要な仕事ほど、構える。P.177「第四章 アイディア製造システム」

ここでは、パソコンの文章入力のソフトの話。

入力機能を利用すれば、あとからいくらでも修正が可能なので、好きな所から直ぐに始めなさいと言う。

ある程度、枠組みが決まっていたら書き始める。

後から前後を入れ替えたり、加えたり、削ったりなどがしやすい環境が整っているのだからという理由。

感想

この本が何よりも親切だと思うのが、注釈があり、そこに参考文献も記載されている点。

また同様に書籍の最後にも、各章の参考文献が記載されている。

さらに各章の最後に、まとめとして、その章の内容がシンプルに箇条書きされているので、おさらいとなり非常に記憶に残りやすい。

「私の失敗」というタイトルの付いた9つの小話も、散りばめられている。丁度良い箸休めのような形になるので、全体の構成に強弱が出来て、読みやすい。

「あとがき」に書かれているが、著者は、もともと「整理の劣等生」であったようだ。実際に研究室は、乱雑、混沌、無秩序といった様相。

しかし、そこから疑問が芽生え、大きな関心を抱き、最終的に書籍としてまとまったという流れである。

この著作の中でも度々登場するのが、生態学者の梅棹忠夫(うめさお・ただお、1920年~2010年)の『知的生産の技術』。やはり『知的生産の技術』は、大きな指針、または基準となる素晴らしい古典である。

因みに、この「超」がタイトルに冠する著者のシリーズは数多くあるので、興味のあるものから手に取ってみるのもオススメ。

書籍紹介

関連スポット

カリフォルニア大学ロサンゼルス校

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles、UCLA)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルスにある総合州立大学。

公式サイト:カリフォルニア大学ロサンゼルス校

イェール大学

アメリカ合衆国のコネチカット州ニューヘイブン市に本部を置く、1701年創設の私立大学。

公式サイト:イェール大学