『知的生活の方法』渡部昇一

渡部昇一の略歴

渡部昇一(わたなべ・しょういち、1930年~2017年)
英語学者。評論家。
山形県鶴岡市の生まれ。上智大学文学部英文学科を卒業、上智大学大学院西洋文化研究科修士課程を修了。
ドイツのヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(通称・ミュンスター大学)に留学、Dr.Phil(哲学博士号)を受ける。イギリスのオックスフォード大学ジーザス・カレッジ寄託研究生も経験。

『知的生活の方法』の目次

はじめに
1-自分をごまかさない精神
2-古典をつくる
3-本を買う意味
4-知的空間と情報整理
5-知的生活と時間
6-知的生活の形而下学

概要

1976年4月20日に第一刷が発行。講談社現代新書。214ページ。現代まで増刷を繰り返す名著。

要するに私は、自分が実感したり体験したりしなかったことは書かないことにしたのである。(P.4「はじめに」)

第1章「自分をごまかさない精神」とあるように、自分に正直であること、誠実であることの大切さを語る。それがさらに他者の参考へとなるからという理由でもある。

自己の実感をいつわることは、向上の放棄にほかならないのだから。(P.36「自分をごまかさない精神」)

分かったふりも、知っているふりも、感動したふりもいけない。自分の心の動きに嘘を付いてはいけないと説く。

その点を曖昧にしてしまうと、自己が揺らいでしまう。何が自分にとって大切かも分からなくなってしまう。より感動できるものに出合うためには、自らに正直であることが最重要である。

文体の質とか、文章に現われたものの背後にある理念のようなものを感じ取れるようになるには、どうしても再読・三読・四読・五読・六読しなければならないと思う。(P.59「古典をつくる」)

本の読み方についての解説もある。繰り返しの大切さも語る。

その後の小見出しでも「蔵書と知的生産の関係」「クーラーの効用」「タイム・リミット」「夜型か朝方か」「睡眠と安らぎ」「食事について」など、現代でも度々論じられる主題についての記述が多々ある。

学生はもちろん、会社員、主婦、個人事業主など、幅広く活用できる内容が詰まっている。

感想

確かこの著作も、生態学者の梅棹忠夫(うめさお・ただお、1920年~2010年)の『知的生産の技術』と同様に、コンサルタントの梅田望夫(うめだ・もちお、1960年~)の文章の中で出てきて知った。自分でも忘れていたが、少なくとも三度は読んでいるようだ。

何年か前までは、本の最後のページに読み終わった西暦、月日、時間を記載する習慣を持っていたので、回数が判明。

最近では、クラウド上に簡易的なメモ書きをしているので、本そのものには、読了日時を書かなくなった。

この著作にかなりの影響を受けたような気がする。蔵書も基本的に処分しないで、どんどん増えていった。

いつでも読み返せるという大きなメリットがあった。また好きな書籍は繰り返し読む事を基準にするのも自分としては性に合った。

ただその後、あまりにも蔵書が多くなって数回に渡って処分はした。また最近では各種の電子書籍が出ているので、著作へのアクセスもこの著作が発売された当時とは微妙に異なっているだろう。

因みに目次にもある通り、蔵書と空間の関係性も記載がある。

また、お金や結婚などについても。なかなか興味深い内容を正直に書かれている。それぞれの人生はトレード・オフである。

何が自分にとって重要なのかを確認しながら、より快適で楽しい知的生活を過ごしていきたい。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

ミュンスター大学

ミュンスター大学は、ドイツの総合大学。正式名称は、ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(Westfälische Wilhelms-Universität、WWU)。

公式サイト:ミュンスター大学

オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある総合大学。11世紀の末に大学の基礎が築かれた名門の英語圏では最古の大学。

公式サイト:オックスフォード大学