武井涼子の略歴
武井涼子(たけい・りょうこ、生年不詳)
マーケター、大学教員、声楽家。
東京大学文学部社会学科を卒業。電通などを経て、コロンビア大学でMBAを取得。マッキンゼーなどを経て、グロービス経営大学院大学で教授、及びファカルティ本部主任研究員。
『ここからはじめる実践マーケティング入門』の目次
1時間目 マーケティング・プランを立てる
マーケティングって、一体何?
マーケティングとは、売れる仕組みをつくること
商品開発から市場参入までのプロセス①/②コンセプト開発/事業性検討
商品開発から市場参入までのプロセス③戦略策定・製品開発
マーケティング・プランの構成要素①3C分析
マーケティング・プランの構成要素②STP
マーケティング・プランの構成要素③4P(マーケティング・ミックス)
2時間目 マーケティング・リサーチの基本と実務
マーケティング・リサーチはなぜ必要?
マーケティング・リサーチ6つのステップ①問題の策定と仮説構築
マーケティング・リサーチ6つのステップ②報告書イメージをつくる
マーケティング・リサーチ6つのステップ③調査企画を立てる
マーケティング・リサーチ6つのステップ④調査票の設計、確定
マーケティング・リサーチ6つのステップ⑤実査
マーケティング・リサーチ6つのステップ⑥分析と報告
3時間目 ブランド・マネジメントの基本と実務
ブランドって何?
ブランドはなぜ重要なの?
ブランディングとブランド・エクイティ
ブランド戦略構築の手順①ブランド・コアを決める
ブランド戦略構築の手順②ブランド・パーソナリティを明確にする
ブランド戦略構築の手順③ブランド・ポジショニングをつくる
ブランドを発信する①センサリー・ブランディング
ブランドを発信する②ブランド・エクセキューション
マーケティング3.0とブランド・マネジメント
ブランド・マネジメントの手法①ケラーのトライアングル・モデル
ブランド・マネジメントの手法②ブランド・エクステンション
ブランド・エクイティを育て、企業価値につなげる
ブランドとは漢方薬のようなもの
4時間目 新しい時代のCRMとデジタル・マーケティング
ブランドの持つ意味をコントロールする
CRMって何?
顧客経験価値って何?
デジタル・マーケティングで何が変わった?
デジタル・マーケティングと顧客情報獲得
インターネット広告の現在
ソーシャルメディア隆盛とデジタル・マーケティングの最新事情
おわりに「ここからはじめる実践マーケティング入門」修了証書授与
マーケティング・プランを成功させる4つのコツ
『ここからはじめる実践マーケティング入門』の概要
2015年10月22日に第一刷が発行。ディスカヴァー・トゥエンティワン。323ページ。
国内外の企業でマーケターとしてのキャリアを積み、大学院でも教鞭をとる武井涼子が、マーケティングの基本をまとめた作品。
2015年5月11日~20日に、4回にわたって行なわれた実際の授業を基に編集したもの。
ディスカヴァーの21世紀スキルシリーズのひとつ。
ちなみに、シリーズの第1~5弾までは以下の通り。
『実践型クリティカルシンキング』佐々木裕子
『コンサル流プレゼン資料作成術』吉本貴志/伊藤公健
『数字で考える力』佐々木裕子
『はじめての事業計画のつくり方』吉本貴志/伊藤公健
『課題解決のための情報収集術』河村有希絵
上記の5つのシリーズの第6弾となるのが『ここからはじめる実践マーケティング入門』。
『ここからはじめる実践マーケティング入門』の感想
kindle unlimitedで読む。
投資家で経営コンサルタントであった瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)の友人であったということから知った人物。
何でも瀧本哲史と、その奥さんとの結婚の間を取り持った人物でもある。
ちなみに、武井涼子の年齢は不明であるが、瀧本哲史とは東京大学の同級生のようなので、瀧本哲史と同じか、同世代と推測される。
共通項の多い二人。東京大学、マッキンゼー、音楽への造詣など。
マッキンゼーでの勤務に関しては、そもそも、マッキンゼーのインターンシップで知り合ったというのもあるけれど。
というわけで、この著作。
マーケティングの基本が網羅されている内容。基本や基礎が、深く考察されている。
まずは、マーケティングとは、何のことであるかを確認。
アメリカ・マーケティング協会
「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである」ピーター・ドラッカー
「マーケティングの究極の目標は、セリング(売り込み)を不要にすることだ」グロービス
「買ってもらえる仕組みをつくること」
(No.172~の抜粋「1時間目 マーケティング・プランを立てる」)
アメリカ・マーケティング協会は、1937年にthe National Association of Marketing Teachersとthe American Marketing Societyが合併して創立したマーケティングの組織。
ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、1909年~2005年)は、ユダヤ系オーストリア人の経営学者。
グロービスは、著者の武井涼子が授業などを持っているグロービス経営大学大学院。またその運営の株式会社。
それぞれのマーケティングの定義を確認しながら、より分かりやすく記述。
最終的に、売れる仕組みに関連したことは、すべてがマーケティングである、というまとめ。
価格設定に関しては、2つの方法を解説。
ひとつは「なるべく可能なかぎり高い値段をつける方法」で、これを「スキミング・プライシング」といいます。(N.798「1時間目 マーケティング・プランを立てる」)
スキミングのskimingは、skimという他動詞。
上澄みなどを掬う。掬い取る。すれすれに飛んでいく。流し読みをする。
といった意味。
もうひとつは真逆の考え方で「なるべく安い値段をつけて、一気にシェアを取りにいく方法」です。これを「ペネトレーション・プライシング」といいます。(No.813「1時間目 マーケティング・プランを立てる」)
ペネトレーションは、penetrationのこと。
不可算名詞で、浸透、貫通。看破、眼識、洞察。勢力浸透、勢力伸長。
といった意味。
大きく分けてしまえば、BtoBでは、スキミング・プライシングで、営業スタッフが価格の理由をじっくりと丁寧に説明。
BtoCでは、ペネトレーション・プライシングで市場を一気に取る、といった感じ。
経営者や個人事業主、フリーランスなどは、自分で自分の商品やサービスに値段を決めなければならない。
私自身も悩みどころというか、さまざまなバランスを考えて値段を決めているので、キーポイントである。
続いて、ブランドの定義について。
アメリカ・マーケティング協会
「個別の売り手もしくは売り手集団の財やサービスを識別させ、競合他社の財やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはそれらを組み合わせたもののこと」デイビッド・アーカー教授
「自社商品を他メーカーから識別するためのシンボル、マーク、パッケージ、デザイン、名前」オグルヴィ・アンド・メイザー
「ブランドとは、商品や商品群、組織などと消費者の間に生まれる絆そのものを指す」
(No.1340~の抜粋「3時間目 ブランド・マネジメントの基本と実務」)
デイビッド・アーカー(David Allen Aaker、1938年~)は、アメリカの経営学者でマーケティング理論家。ブランドの第一人者として世界的に有名な人物。
オグルヴィ・アンド・メイザー(Ogilvy & Mather)は、著者の武井涼子が勤務していたこともある世界的に有名な広告代理店。
ブランドとは何なのか?
ブランディングとと呼ばれるブランド戦略をどう実行していけば良いのか?
そのような部分が解説される。
1980年代半ばから注目を浴びだしたブランド。
企業そのものではなく、個別のブランドの買収などが増えてきた状況などについても。
ブランドのメリットとしては、ファンの確保。競合への牽制。高い利益の確保。コミュニケーション効率の上昇。ライセンスの可能性など。
またブランド構築には、“生活者と共有できる関心テーマ(Shared interest)”が必要とも。
これらをモデル化したものが、電通が提唱しているAISASであったり、マッキンゼーが提唱したCDJ(Consumer Decision Journey)モデルであったりします。ことにCDJモデルは、ブランドの力を購買モデルの中に取り込んだところが画期的です。(No.2393「4時間目:新しい時代のCRMとデジタル・マーケティング」)
4時間目のタイトルのCRMは、Customer Relationship Management、つまり、顧客との関係の管理に関して。
上記引用の、これらをモデル化、というのは、顧客の購買行動のこと。
インターネットが普及する前のモデルとしてAIDMA(アイドマ)。アメリカで発達したモデル。
AIDMAは以下の通り。
1.Attention(認知・注意)
2.Interest(興味・関心)
3.Desire(欲求)
4.Memory(記憶)
5.Action(行動)
AISAS(アイサス)は2004年に電通によって提唱されたモデル。
AISASは以下の通り。
1.Attention(認知・注意)
2.Interest(興味・関心)
3.Search(検索)
4.Action(行動)
5.Share(共有)
CDJは、2009年にマッキンゼーが発表したループ型のモデル。
CDJは、以下の通り。
1.Initial-consideration set(ブランド検討)
2.Active evaluation(積極的な検討&評価)
3.Moment of purchase(購入の瞬間)
4.Postpurchase experience(利用体験の共有)
1’.Initial-consideration set(ブランド検討)
2’.Loyalty loop(ロイヤリティ・ループ)
3’.Moment of purchase(購入の瞬間)
1~4までが最初のサイクルではあるが、2回目以降となる1’から3’までは、2のActive evaluation(積極的な検討&評価)ではなく、2’のLoyalty loop(ロイヤリティ・ループ)を通って、3’のMoment of purchase(購入の瞬間)となる。
モデルの図式というか位置関係は、以下の通り。
左側に、Initial-consideration set(ブランド検討)。
右側に、Moment of purchase(購入の瞬間)。
その2つの間の
上部に、Active evaluation(積極的な検討&評価)。
下部に、Postpurchase experience(利用体験の共有)。
その中央に、Loyalty loop(ロイヤリティ・ループ)が、Initial-consideration set(ブランド検討)から、Moment of purchase(購入の瞬間)に向かって、巡っていく。
要するに、既に商品やサービスに満足して、ブランドにも良い印象を持つので、Loyalty loop(ロイヤリティ・ループ)に突入する。
購買確率は上がり、営業サイクルも短縮。それが続くというもの。
上記のモデル解説は、上述の引用程度で、そこまで詳細に記載はされていない。
目次にある通り、各種の要素や項目を網羅した説明が丁寧になされている。
マーケティングの初心者で意欲のある人、マーケティングの知識の整理をしたい人などに非常にオススメの著作である。
また併せて、ディスカヴァーの21世紀スキルシリーズを読み進めていくのも良いかも。
書籍紹介
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コロンビア大学
コロンビア大学(Columbia University)、正式名称では、Columbia University in the City of New Yorkは、アメリカのニューヨーク週に本部を持つ1754年に設立の私立大学。
公式サイト:コロンビア大学