『プリンセス・マーケティング』谷本理恵子

谷本理恵子の略歴

谷本理恵子(たにもと・りえこ、1977年~)
セールスコピーライター。
大阪府茨木市の出身。私立四天王寺高等学校、関西大学法学部を卒業。ダイレクト出版認定セールスライター。インターネット通販の運営責任者などを経て、独立。

『プリンセス・マーケティング』の目次

はじめに
大原則1 女性と男性では、求めている「ストーリー」が違う
大原則2 女性と男性では、登場人物の「設定」が違う
大原則3 女性と男性では、主人公の「モチベーション」が違う
大原則4 女性と男性では、意思決定の「中身」が違う
大原則5 女性と男性では、何を「信じる」かが違う
大原則6 女性と男性では、「関係性」の築き方が違う
大原則7 女性と男性では、「未来」の見せ方が違う
おわりに
参考文献
読者サポート

概要

2019年5月1日に第一刷が発行。エムディエヌコーポレーション。ソフトカバー。191ページ。A5判。148mm×210mm。

セールスコピーライターの谷本理恵子が、多くの女性に見られる買い物の心理や行動を、7つの原則に整理して解説。女性をプリンセスとして捉えることを基本としている。

副題は“「女性」の購買意欲をかき立てる7つの大原則”。

上述の7つの大原則の中に、4~6個のルールが書かれていて、合計34のルールが書かれている。

さらに、それぞれのルールごとに「実践的まとめ」の記載があるのもポイント。

重要な部分は、エメラルドグリーン的な配色や傍線、太字などを使用している。

感想

以前に、ウェブマーケティングの大規模なセミナーに参加。

その中の一つの講座で、谷本理恵子のプリンセス・マーケティングに関するものがあった。

今まで色々と文章を書いてきているが、しっかりと女性の読者に対しての深い考察や視点を持ったことが無かったので、谷本理恵子の講座に出席。

自分に全く無かった知見が得られて、とても勉強になった。

『ネットで「女性」に売る』『女性に「即決」される文章の作り方』『プリンセス・マーケティング』と本を出版されていることも知ったが、そのままになっていた。

その後、別の方が『プリンセス・マーケティング』をオススメしていたので、購入。

再び勉強になり、知識が整理された。

以下、引用などをしながら解説。

男性の主人公の冒険のゴールが「富や名声、権威」であるのに対し、女性の主人公が旅をしながら得ているのは「自分自身の完全性」です。彼女たちの目的は「本来の自分らしさ」を取り戻すことにあります。(P.19:大原則1 女性と男性では、求めている「ストーリー」が違う)

最後まで本を読んだ上で、ザックリと暴力的にまとめてしまうならば、男性が努力する勇者で、女性は努力しないお姫様、といった感じか。

上記の部分では、男性が他者からの評価を求めていて、つまり、モテたい、ということ。

女性は自己の評価を求めていて、つまり、自己満足、ということ。

もちろん、上記は肯定的な意味合いで記述される。

女性が、生まれながらに姫で、不満足な現状は幻想で、魔法のように一瞬で、元のお姫様の状態になりたい。

以上のように願っているというのは、自分には全く無い発想で、正直のところ、かなり驚いた。

最初に、願望と目的地を、明確にしておくことが大切であると改めて認識。

プリンセス物語の本質は、これまでの延長上にない「本来の自分」になって、「自分らしい人生」を生きたい、「自由」になりたいという、独立解放の物語にあります。(P.47:大原則2 女性と男性では、登場人物の「設定」が違う)

女性にとっては、商品やサービスは、手段ではなく“運命の出会い”であると、いった話に続く。

延長上ではない、ということは、非連続である。

逆説的に言えば、男性にとっては、商品やサービスは、手段のひとつ。

そして、延長上にある「本来の自分」に向かう。

基本的に、男性と女性を対比していくので、理解がしやすい内容になっているのも特徴である。

つまり、女性の主人公が抱えている最大の問題は、自信のなさなのです。抱えている不安な「感情」は自分で解決するよりありませんから、男性の旅のような「経験の共有」ではなく「感情の共有」が重要になります。(P.58:大原則2 女性と男性では、登場人物の「設定」が違う)

ここでは、女性の主人公と仲間の関係を説明。

つまり、女性の主人公はプリンセス、仲間は女性に対して商品やサービスを提供する人。

「感情の共有」が重要であるという主旨。

自信の無さが前提にあるので、そこで、その不安を共有し、共感し、一緒に時間を過ごすことがベスト。

その間に、不安は自然と解消されて、プリンセスは元気になるという結論。

なるほど、この辺りも、とても勉強になる。

いずれにせよ、比較検討が面倒な女性に、いかに面倒なことをさせずに、自分で選んだという「納得感」を感じていただけるかが重要です。「女性にとっての自由」が感じられる状況をいかにして用意するかについて、いろいろな工夫をしてみましょう。(P.155:大原則6 女性と男性では、「関係性」の築き方が違う)

154ページには、例も挙がっているので、分かりやすい。「目的別に選べる4つのコース」「気分に合わせて、選べるカラー」など。

ある程度絞って、選択肢の中から選んでもらう。選んだという納得感、という、ある種の錯覚に近いものを与える。

すると気持ち良く購入してもらえて、win-winの関係にもなれる。

この辺りは、女性に限らず、男性にも応用可能な部分でもある。

いくつかの候補を挙げて、選んでもらう。最終的な意思決定者は、主人公である。

主人公が男性であれば、比較検討しやすいように、誘導ということか。

納得感、満足感も、キーワードである。

街中に「ほんのり」「ちょっぴり」「プチ」「○○気分」といった「本気で追求するわけではない」という入門イメージや婉曲表現があふれているように、何不自由なく暮らすプリンセスに、苦行を耐え忍び主義主張を貫くイメージはありません。(P.181:大原則7 女性と男性では、「未来」の見せ方が違う)

基本的にガッツリではなく、さっぱり系、あっさり系の初心者イメージで訴求。雰囲気や気分が大切。

電車に乗った際には、なるべく女性向けの広告を見たり、本屋に立ち寄った時には女性誌の表紙を見たりして、キャッチコピーなどの勉強をすることもあるが、言われてみれば、ポップな言葉が多いかも。

意図的に、緩いというか、柔らかいというか、軽めの分かりやすい文言を利用すると良いということ。

自分の中には無かった引き出しが増えたような気がした。

色々と実践していきたいと思う。

女性向けの商品やサービスに携わっている男性には、非常にオススメの本。また比較対照として、男性の視点に触れているので、女性にとっても勉強になる作品である。

書籍紹介

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