今北純一『勝負する英語』

今北純一の略歴

今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務

『勝負する英語』の目次

対決
拒絶と文句
交渉と反撃
臨機応変
度胸
発見
あとがき

『勝負する英語』の概要

1996年8月30日に第一刷が発行。新潮社。205ページ。ハードカバー。137mm×198mm。

勝負の場面での英語の表現に関する今北純一のエッセイ集。

月刊誌『Foresight』の93年1月~95年12月までに連載したものに加筆されたもの。

今北純一が実際に経験したり、見たり、聞いたりした英語での表現が満載。

ただ英語の本というよりは、グローバルに活躍した人物が、気になったり、記憶に残った場面で使われた英語を紹介しながら、そこにまつわる真剣な遣り取りを描写する著作。

意思表示のための言語。世界で戦う時には、英語である。その歳の気の利いた英語表現やタイミング、ユーモアなどについての言及も。

「英語表現のSNAPSHOT」として、合計で9つのちょっとした小話が章末にあるのも面白い。

無名な人物や有名な偉人、そして今北純一の知人の話など具体的な事例が多く掲載しているのポイントである。

以下の偉人たちなどが挙げられる。

ウクライナ生まれのピアニストのウラディミール・サモイロヴィチ・ホロヴィッツ(Vladimir Samoilovich Horowitz、1903年~1989年)。

イギリスの政治家のウィンストン・チャーチル(Sir Winston Leonard Spencer Churchill、1874年~1965年)。

イギリスの探検家のデイヴィッド・リヴィングストン(David Livingstone、1813年~1873年)。

イギリスのジャーナリストのヘンリー・モートン・スタンリー(Sir Henry Morton Stanley、1841年~1904年)。

また英語とは関係ないが、日本の小説家・松本清張(まつもと・せいちょう、1909年~1992年)の逸話なども。

グローバルに活躍する今北純一が大切にしているビジネスのことや生き方などを、英語に関連しながら読み解ける著作である。

『勝負する英語』の感想

理屈にかなっているかいないかは、ここでは二の次である。相手が屁理屈でゴリ押ししてきたら、こちらも同じ力で反撃のパンチを繰り出しておく必要がある。しかも間髪を入れず、というところが肝心である。(P.22「対決:作用反作用の法則」)

この前の部分には、もちろん意地の悪い質問をされた熟練のコンサルタントの対応のエピソードが語られている。

英語とは関係ない話ではあるが、勉強になり仕事や日常でも使いたい手法。

「質点相互の間に作用し合う二つの力は、これら二点を結ぶ直線に沿って働き、その大きさは等しく向きは反対である」

運動の第三法則であり、作用反作用の法則と呼ばれるもの。

同じ方法で、瞬時に返す力が必要である。しかも、そこに理非や是非は、あまり関係がない。ただ、そこにユーモアなどが入るとより良いのかもしれないが。

また上記にも書いたがイギリスの政治家で首相にもなったチャーチルのエピソードも好きな箇所。

“If you were my husband, I would put poison in your drink.”
(もしも、あなたが私の主人だったら、私はあなたの飲み物に毒を入れるでしょうね)
これに対し、チャーチルは平然と、こう言い返した。
“Madame, if you were my wife, I would drink it.”
(マダム、もしあなたが私の妻だったら、私はその毒を飲むでしょう)
(P.92「交渉と反撃:ユーモアのドップラー効果」)

チャーチルを嫌悪していた古参女性議員との遣り取り。

つまり、あなたを妻に持つといった不幸な人生を送るなら、毒を飲んで死んだ方がましだ、という切り返し。笑った。

と同時に、また別の場所では以下のような文章も。

アドリブは、決してつけ焼刃ではできない。充分な基礎訓練と、実践の場数を踏んで初めて「任意の」アドリブが可能になるのである。ふだんから自分自身の考えを持ち、それをたたみ込むように脳の中に蓄積・発酵させ、必要時に自在に取り出す、そんなアプローチが絶妙なアドリブの裏に隠されている。(P.128「臨機応変:不意打ちインタビューでのアドリブ」)

アドリブというのは、「任意に」という意味のラテン語「ad libitum」を語源として、楽譜にないメロディーを即興で演奏したり、台本にないセリフをその場で話したりすること、だという。

日頃からの練習や蓄積、そして行動が、アドリブに対応できる柔軟性を培うのだろう。

私も日常的に、自分の考えを持ち、即座に対応できるように、柔軟でありたいと思う。

英語だけではなく、さまざまな場面での対応力の参考にもなる書籍。

英語の勉強に疲れた時の休憩にも良いかも。ビジネスやグローバルについて興味のある人にはオススメの一冊である。

書籍紹介

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オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。

公式サイト:オックスフォード大学