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今井むつみ『英語独習法』(岩波新書)要約・感想

今井むつみ『英語独習法』(岩波新書)表紙

  1. 枠組みとなるスキーマの重要性
  2. 日本語と英語のスキーマのズレ
  3. リスニングと語彙学習の再定義
  4. 効率的な学習と熟達の可能性

今井むつみの略歴・経歴

今井むつみ(いまい・むつみ、1958年~)
心理学者。専攻は、認知科学、言語心理学、発達心理学。
神奈川県立平塚江南高等学校、慶應義塾大学文学部西洋史学科を卒業。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程を修了。ノースウェスタン大学心理学部博士課程を修了。

『英語独習法』の目次

はじめに
第1章 認知のしくみから学習法を見直そう
第2章 「知っている」と「使える」は別
第3章 氷山の水面下の知識
第4章 日本語と英語のスキーマのズレ
第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法 基本篇
第6章 コーパスによる英語スキーマ探索法 上級篇
第7章 多聴では伸びないリスニングの力
第8章 語彙を育てる熟読・熟見法
第9章 スピーキングとライティングの力をつける
[ちょっと寄り道]フィンランド人が英語に堪能な理由
第10章 大人になってからでも遅すぎない
探究実践篇
本書で紹介したオンラインツール
参考文献
あとがき

『英語独習法』の概要・内容

2020年12月18日に第一刷が発行。岩波新書。271ページ。

大修館書店『英語教育』(2015年4月号~2016年3月号)
NHKテキスト『ラジオ 入門ビジネス英語』(2018年4月号~2019年3月号)

上記に連載していたエッセイを再編成して、大きく加筆したもの。

「探求実篇」は以下の8構成になっている。

【探究1】動詞の使い分け(1)──主語・目的語に注目
【探究2】動詞の使い分け(2)──修飾語・並列語に注目
【探究3】動詞の使い分け(3)──認識を表現する
【探究4】動詞の使い分け(4)──提案を表現する
【探究5】修飾語を選ぶ──頻度に注目
【探究6】抽象名詞の使い分け──共起する動詞と修飾語に注目
【探究7】前置詞を選ぶ──前置詞+名詞の連語に注目
【探究8】抽象名詞の可算・不可算

『英語独習法』の要約・感想

  • スキーマがあなたの英語学習を根底から覆す
  • 本書が対象とする英語学習のレベル
  • 英語学習の成否を分ける鍵「スキーマ」
  • 最大の壁:日本語と英語のスキーマのズレ
  • 難解だが本質的なスキーマ習得の道筋
  • スキーマ探索の強力な武器「コーパス」
  • 「多聴」神話の崩壊とリスニングの本質
  • 「聴き流すだけ」を否定する、語彙の育て方
  • 効率的な学習は「まとまり」で捉える
  • 熟達の本質と大人の学習の可能性
  • 私たちが本当に目指すべき「語彙力」とは
  • 結論:英語は「生きた言語」である

「スキーマ」があなたの英語学習を根底から覆す

「一体、どれだけ勉強すれば英語が話せるようになるのだろうか」
「参考書を何冊もこなしたのに、ネイティブの会話は聞き取れない」
「単語は知っているはずなのに、自分の考えを表現する言葉が出てこない」

もし、あなたがこれまでに一度でもこのような壁に突き当たった経験があるなら、本書はあなたのためのものかもしれない。

今回紹介するのは、心理学者で認知科学者である今井むつみ(いまい・むつみ、1961年~)が記した画期的な一冊、『英語独習法』(岩波新書)である。

本書は、巷に溢れる安易な学習法とは一線を画し、人間が言語を学ぶ「認知のしくみ」そのものに焦点を当てる。

なぜ私たちの英語学習は空回りしがちなのか。その根本的な原因を解き明かし、科学的根拠に基づいた本質的な独習法を提示してくれる。

この記事では、『英語独習法』が示す核心的なメッセージの要約を試みるとともに、その内容がいかに私たちの英語学習観を揺さぶるものであるかを、深く掘り下げていきたい。

本書が対象とする英語学習のレベル

まず、この本がどのような読者を想定しているのかを明確にしておこう。著者は冒頭で次のように述べている。

本書は主に、仕事の場でアウトプットできるレベル、すなわち自分の考えを的確・効果的に表現し、相手に伝えられるレベルの英語力を目指す人に向けて書かれている。(P.15「第1章 認知のしくみから学習法を見直そう」)

これは非常に重要な点である。

本書は、単なる日常会話や旅行で困らないレベルを目指すのではなく、より高度で、知的な営みとしての英語運用能力を身につけたいと願う、真剣な学習者のための指南書なのだ。

自分の意見を論理的に組み立て、相手を説得し、円滑なコミュニケーションを築く。そのようなプロフェッショナルな領域で通用する英語力を、本書は射程に入れている。

英語学習の成否を分ける鍵「スキーマ」

本書を貫く最も重要な概念が「スキーマ」である。

今井むつみは、このスキーマという認知心理学の用語を、英語学習の中心に据えて議論を展開する。

スキーマというのは認知心理学の鍵概念で、一言でいえば、ある事柄についての枠組みとなる知識である。(P.27「第2章 「知っている」と「使える」は別」)

スキーマとは、単なる単語や文法の知識ではない。

ある概念について私たちが無意識のうちに持っている、背景知識や経験、文脈の集合体だ。

例えば、「学校」という言葉を聞いたとき、私たちは教室、先生、生徒、黒板、チャイムといった、関連する様々な情報を瞬時に思い浮かべる。

この一連の知識のネットワークこそが「学校」に関するスキーマである。

このスキーマこそが、「知っている」知識を「使える」知識へと昇華させる鍵なのだ。

単語の意味を辞書で知っていても、その単語がどのような文脈で、どのようなニュアンスで使われるのかというスキーマがなければ、実践の場で使いこなすことはできない。

今井むつみの主張の核心は、多くの英語学習者がこのスキーマの構築を疎かにしている点にある。

最大の壁:日本語と英語のスキーマのズレ

では、なぜスキーマの構築がこれほどまでに難しいのか。

それは、私たちが母語である日本語で培ってきたスキーマと、これから学ぼうとする英語のスキーマとの間に、深刻な「ズレ」が存在するからである。

今井むつみは、このズレを乗り越えることこそが、外国語習得の本質だと説く。

特に象徴的なのが、動詞の表現に関するスキーマのズレだ。

英語は動作の様態の情報を主動詞で表し、移動の方向は動詞以外(前置詞)で表現する。(P.65「第4章 日本語と英語のスキーマのズレ」)

これは極めて重要な指摘である。

例えば、日本語では「坂を駆け上がった」と言う。動作の様態(駆ける)と移動の方向(上がる)が「駆け上がる」という一つの動詞に凝縮されている。

しかし、英語では “run up the hill” のように、まず “run” という動詞で動作の様態を示し、”up” という前置詞で移動の方向を示す。

私たちは無意識のうちに日本語のスキーマ、つまり「動詞に方向の情報も含まれる」という感覚で英語を捉えようとしてしまう。

だから、”climb” のような単語を安易に「登る」と一対一で対応させてしまい、”climb down a mountain”(山を歩いて下りる)のような表現に出会うと混乱するのだ。

英語のスキーマでは、”climb” は「手足を使ってよじ登る・進む」という様態を表す動詞であり、方向は前置詞が決定するのである。

このようなスキーマのズレは、言語の根幹に関わる部分であり、意識的に修正しない限り、私たちの英語はどこか不自然な、日本語的な発想から抜け出せないままとなる。

難解だが本質的なスキーマ習得の道筋

この日本語と英語の間に横たわるスキーマの深い溝を、一体どうすれば乗り越えることができるのだろうか。

今井むつみは、そのための具体的な思考と実践のプロセスを提示している。

①自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する。
②英語の単語の意味を文脈から考え、さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて、日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する。
③日本語と英語の単語の意味範囲や構文を比較することにより、日本語スキーマと食い違う、英語独自のスキーマを探すことを試みる。
④スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする。構文のズレと単語の意味範囲のズレを両方意識し、英語のスキーマを自分で探索する。
⑤英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける。(P.79「第4章 日本語と英語のスキーマのズレ」)

正直なところ、このプロセスを一読して「難しすぎる」と感じる学習者は少なくないだろう。

これは決して楽な道ではない。

無意識に染み付いた母語の感覚を一度相対化し、客観的に分析し、新しい言語のスキーマを意識的に再構築していくという、極めて知的な作業が求められるからだ。

しかし、この困難な道のりこそが、表層的な知識の丸暗記から脱却し、真に「使える」英語を我が物にするための唯一の王道なのである。

理屈を理解しただけで満足せず、一つ一つのステップを地道に、段階的に実践していく継続的な努力が不可欠となる。今井むつみの本は、その覚悟を学習者に問うているのだ。

スキーマ探索の強力な武器「コーパス」

前述のプロセス②で登場する「コーパス」は、今井むつみが本書で強く推奨する、英語スキーマを探索するための強力なツールである。

コーパスとは、新聞、雑誌、小説、論文、会話記録など、実際に使われた大量の言語データを集積し、コンピュータで検索・分析できるようにしたデータベースのことだ。

コーパスを使えば、ある単語がどのような単語と結びつきやすいのか(コロケーション)、どのような文脈で使われることが多いのかを、膨大な実例の中から客観的に知ることができる。

これは、一つの辞書の定義や、一人のネイティブスピーカーの感覚だけでは得られない、言語の集合的な「ふるまい」を捉えることに他ならない。

翻訳文を読む際にも、このスキーマの違いを意識することが有効だと著者は言う。

自然な日本語に翻訳しようと思うと、英語の単語一つ一つを日本語の単語に対応づけて日本語の文にすることは無理なので、単語単位ではなく、句や文全体を単位にして、英語の文は全体的にこういうことを言いたいのだな、と考えながら訳文を読むと、それ自体が、日本語と英語のスキーマの違いの発見につながり、有効である。(P.86「第5章 コーパスによる英語スキーマ探索法 基本篇」)

単語を一対一で置き換えるのではなく、文全体の意味の塊(チャンク)を捉え、

「なぜ英語ではこのような表現になるのか」
「日本語のこの感覚を英語で表現するならどうなるのか」

と思考を巡らせること。

その思考の補助線として、コーパスは絶大な威力を発揮する。今井むつみは、このコーパスという武器を手に、学習者自らがスキーマの探求者となることを促しているのである。

「多聴」神話の崩壊とリスニングの本質

本書は、リスニング学習における一般的な「常識」にも鋭く切り込む。

特に、「とにかくたくさん聴けば耳が慣れて聞こえるようになる」という、いわゆる「多聴」信仰に対して、明確な警鐘を鳴らす。

リスニングに時間を使うより、まず語彙を強化することと、その分野の記事や論文を読んで、その分野のスキーマを身につけることに時間を使ったほうがよい。(P.131「第7章 多聴では伸びないリスニングの力」)

これは衝撃的な提言ではないだろうか。

リスニング力を上げたければ、聴く時間を減らして、語彙とリーディングに時間を割け、というのである。しかし、これは認知のしくみから考えれば非常に合理的だ。

そもそも、知らない単語は何度聴いてもただの雑音にしか聞こえない。

そして、たとえ単語が聞き取れたとしても、そのトピックに関する背景知識、すなわちスキーマがなければ、話されている内容を理解することはできない。

ビジネス交渉の英語が聞き取れないのは、耳が悪いからではなく、その交渉の背景にある専門用語や業界の慣習、議論の進め方といったスキーマが欠如しているからなのだ。

だからこそ、まずは語彙力を徹底的に鍛え、自分が聴きたい分野の文章を読み込むことで、その領域のスキーマを頭の中に構築することが先決となる。

土台ができて初めて、耳から入ってくる音声情報が意味のあるものとして処理されるのである。

そもそも「耳を慣らす」というのは何を目的に何をすることなのだろうか。同じ英語でもイギリス英語とアメリカ英語、オーストリア英語、インド英語では、母音や子音の発音、アクセント(強勢)などが大きく違う。(P.139「第7章 多聴では伸びないリスニングの力」)

著者のこの素朴な疑問は、私たちの学習法の曖昧さを鋭く突いている。

「耳を慣らす」という漠然とした目標ではなく、「この分野の議論を理解するために必要な語彙とスキーマを獲得する」という明確な目的意識こそが、リスニング力向上の最短距離なのである。

「聴き流すだけ」を否定する、語彙の育て方

リスニングだけでなく、語彙学習そのものに対しても、本書は深い洞察を与えてくれる。キーワードは「熟読・熟見」であり、これは「聴き流すだけ」の安易な学習法とは対極に位置する。

その根拠となるのが、人間の注意と記憶のメカニズムだ。

結局、人の情報処理は、基本的に目的志向的で、必要のない情報には注意を向けない。そして注意を向けなかった情報は記憶されないのである。(P.145「第8章 語彙を育てる熟読・熟見法」)

これは、有名な「見えないゴリラ」(Invisible Gorilla)の実験を思い起こさせる。

バスケットボールのパスの回数を数えることに集中していると、画面を横切るゴリラの着ぐるみに気づかない、というアレだ。

私たちは、自分が注意を向けたものしか認識できず、認識しなかったものは記憶に残らない。

この認知科学の基本原則に立てば、「聴き流すだけ」の学習がいかに非効率であるかは火を見るより明らかである。

あることが身体化されるところまで行くには長い間の訓練が必要である。「聴き流すだけで英語が自然と口から出る」という英語教材の広告をよく見るが、人間の認知のしくみにまったく反していることなので、とても不思議である。(P.160「第8章 語彙を育てる熟読・熟見法」)

著者のこのストレートな物言いに、思わず笑みがこぼれる読者もいるだろう。

これは単なる皮肉ではない。人間の認知メカニズムに対する科学的な知見に基づいた、正当な批判なのだ。

語彙は「聴き流し」で増えるものではなく、一つ一つの単語に能動的に注意を向け、その意味、用法、そして背景にあるスキーマを深く理解する「熟読・熟見」。

その行為によってのみ、血肉となり、「育って」いくのである。

効率的な学習は「まとまり」で捉える

では、能動的な学習とは具体的にどのようなものか。本書はフィンランドの英語教育を例に、効率的な学習の一つの形を示している。

人は関連する概念をまとまりで学習するほうが、バラバラに学習するよりもずっとよく学習でき、記憶の保持も取り出しも容易である。(P.180「[ちょっと寄り道]フィンランド人が英語に堪能な理由」)

これは、学習における「関連付け」の重要性を説いている。

例えば、”happy” という単語を学ぶなら、それだけで終わらせるのではなく、類義語である “glad”, “pleased”, “delighted” などを同時に学び、それぞれのニュアンスの違いを比較検討する。

また、対義語である “sad”, “unhappy” もセットで覚える。

さらに、どのような前置詞と結びつくのか、どのような状況で使われるのか、といったスキーマ情報も含めて、一つの意味ネットワークとして頭に入れるのだ。

一見、一度に覚えることが増えて大変そうに見えるが、脳は無関係な情報をバラバラに記憶するよりも、関連付けられた情報の「まとまり」を記憶する方が得意なのである。

この原則を応用することが、学習の効率を飛躍的に高める。

熟達の本質と大人の学習の可能性

本書の終盤では、学習と「熟達」の本質にまで話が及ぶ。そしてそれは、多くの大人の学習者に勇気を与えるものだ。

人が何かを学習して熟達するということは、さまざまなことに注意を向けられるようになることではない。その逆で、必要なことにしか注意を向けなくなることなのだ。これが高速で自動化された情報処理を可能にする。(P.185「第10章 大人になってからでも遅すぎない」)

これは一見、恐ろしい事実に思えるかもしれない。

熟達とは、視野が広がることではなく、むしろ意図的に狭めることだというのだから。しかし、これこそがエキスパートと初心者を分ける決定的な違いである。

熟達した専門家は、膨大な情報の中から、瞬時に重要な情報だけをピックアップし、無関係な情報を無視することができる。この処理が自動化されているからこそ、高速で正確な判断が可能になる。

英語学習においても同様で、最終的に目指すべきは、スキーマが身体化され、文法や単語選択をいちいち意識しなくても、必要な情報処理が自動的に行われる状態なのだ。

そして、この「熟達」は、大人になってからでも十分に可能であると今井むつみは断言する。

むしろ、論理的思考力や、母語を通じて培った豊富なスキーマをメタ的に分析する能力は、大人の方が優れている。問題は、年齢ではなく、学習の方法論なのだ。

また、これはマシュー・サイド(Matthew Syed、1970年~)の『失敗の科学』でも触れられるものでもある。

ただし『失敗の科学』では題名の通り、失敗というマイナス面に焦点を当てているので、デメリットにも注意が必要である。

こちらの記事「マシュー・サイド『失敗の科学』要約・感想」もご参考まで。

私たちが本当に目指すべき「語彙力」とは

本書を通じて、今井むつみは一貫して「生きた知識」の重要性を訴える。最後に、本書のメッセージが集約された一節を引用したい。

本書で繰り返し述べてきたように、とりあえず日本語に置き換えられる程度に知っている単語がたくさんあることが大事なのではない。必要なときにすぐに記憶から取り出せて、どのような構文で使えるかが判断でき、その文脈で使うことが自然で、他にそれよりもよい単語がないかどうかを判断できる、そういう「生きた」知識を伴った単語が集まった語彙力をもつことが大事なのである。(P.190「第10章 大人になってからでも遅すぎない」)

単語と日本語訳を一対一で暗記する作業は、もはや学習とは呼べない。

それは単なる記号の置き換えに過ぎない。真の語彙力とは、一つの単語の背後に広がる膨大なスキーマのネットワークを、自分の中に築き上げることなのである。

その道のりは決して平坦ではないが、それこそが知的探求の喜びに満ちたプロセスでもあるのだ。

結論:英語は「生きた言語」である

『英語独習法』は、単なるハウツー本ではない。

それは、英語という言語、ひいては学習という行為そのものへの向き合い方を、根本から問い直す哲学の書である。

英語は試験のためにあるのではなく、生きた言語である。すべてが文法規則で決まるわけでも、統計的な情報で決まるわけでもない。もちろんどちらの知識も尊重される。しかし、最終的には、書き手・話し手がその状況をどのようにとらえるかで決まるのだ。(P.254「【探究8】抽象名詞の可算・不可算」)

この言葉に、本書のすべてが凝縮されている。

文法や規則は重要だが、それは絶対的な法則ではない。言語は、人間が状況を解釈し、意図を伝えようとする営みの中で、常に揺れ動き、変化する「生き物」なのだ。

だからこそ、私たちはマニュアル通りの学習から脱却し、学習者自らが探求者とならなければならない。

日本語のスキーマという色眼鏡の存在を自覚し、コーパスを羅針盤として、英語という新しい世界のスキーマを一つ一つ発見していく。

本書『英語独習法』は、その長くも刺激的な航海術を教えてくれる、最高のガイドブックである。

この記事で試みた今井むつみの本の要約は、その深遠な内容のほんの一部に過ぎない。英語学習の迷路で立ち尽くしているすべての人に、この岩波新書の一冊を手に取ることを心から勧めたい。

英語の道は険しい。

しかし、本書を読めば、その険しい道程すらも、知的な喜びに満ちた冒険として楽しむことができるようになるはずだ。

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