『能力主義はこわくない』今北純一

今北純一の略歴

今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務。

『能力主義はこわくない』の目次

Ⅰ 今なぜ能力主義なのか
1 ぬるま湯の中の危機
2 「弱肉強食の世界」へのおびえ
3 自信なき“集団ヒステリー”
4 心の中に残る“バブル”
5 機会均等と結果均等の混同
6 肩書社会の呪縛
7 スペシャリストがいない
8 能力主義という名の神話
9 「日本株式会社」の行方
コラム ガルシアへの伝言
Ⅱ 能力主義の相貌
1 “透明な管理者”の恐怖
2 人間関係の衝突
3 上司の査定 部下の査定
4 職務と業務の相関関係
5 人間の能力は割り算ができない
コラム 二つの定年
Ⅲ 「日本製」能力主義を模索する
1 「自家製」能力主義のすすめ
2 能力の客観的順位づけ
3 前任者のいない能力評価
4 ベンチマーキングの落とし穴
5 親善試合から他流試合へ
6 これからの「日本製」能力主義
あとがき

概要

1999年2月22日に第一刷が発行。日本経済新聞社。221ページ。ハードカバー。127mm×188mm。四六判。

副題は、「『減点へのおびえ』から『得点への意欲』へ」。

ビジネスにおける日本での能力主義の在り方を模索する今北純一の考察を学べる著作。

様々な国内外の事例を紹介しながら、ビジネスについて、組織について、個人について、などを再考できる内容となっている。

しかし、そんなことはない。経営には「いい経営」か「悪い経営」しかないからだ。「日本的経営」か「欧米的経営」かはあくまで付随的な区分けにすぎない。(P.69:Ⅰ-9 「日本株式会社」の行方)

日本的経営か欧米的経営かとすると、二項対立で分かりやすくなるが、大した意味はない。

経営には良いか、悪いかしかないから、という部分。

これまでの伝統的な経営の中で、どのような箇所をどのように改善していくのかが、重要であるという話。

また組織の中の人間関係や指揮系統に関して、とても明瞭なエピソードも。

いずれにしろ、人間関係で衝突を起こすような人間は会社という組織に向かない、という点に関しては、欧米も日本も同じということである。(P.101:Ⅱ-2 人間関係の衝突)

ここでは、上司と部下の関係性における会社組織の意向についての逸話が語られた文章。

本社の意向を受けてリストラを決行していた上司。そのストレスから奇行も時折あった。

部下は、その上司を生理的に受け付けなくなった。そして、上司や本社にも反発。

最終的には、紆余曲折がありながら、部下の人物は解雇されたという話。

ビジネスにおける組織や個人の在り方、また、どのような立場の人間が、どのような評価基準を持つのかなど、各種のテーマで具体的な記載も出てくるので、とても示唆に富んだ書籍である。

感想

自分自身は、組織では気持ち良く働けないと思っているので、フリーランスとして仕事をしている。

もちろん、チームを組んで協力をする事もある。時折、視野の狭いサラリーマン気質の人間と出会う事もある。

なかなか、その溝というか、意識の違いというか、前提条件の違いを埋めるのは難しい。

ただ、その辺りも丁寧に処理しておかないと、後々に大きな問題となる場合もあるので、注意が必要。

この今北純一の『能力主義はこわくない』には、俯瞰的な物の見方となるエピソードが豊富に載っている。

今北純一の知人や友人たちの話などで、臨場感があったり、熱が乗っていたりする気がする。

どちらかというと、それなりに人を動かす立場の方には最適なのかもしれない。あるいは、上司や本社の考え方や見方を知りたい部下や新人の方などの場合も。

ビジネスのキャリアを考える上で、とても役立つ内容が沢山あるので、今北純一ファン以外にもオススメの一冊である。

書籍紹介

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オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。

公式サイト:オックスフォード大学