『新しい時代を切り拓く賢者の知恵』今北純一

今北純一の略歴

今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務。

『新しい時代を切り拓く賢者の知恵』の目次

はじめに
第1章 新しい時代を切り拓く空海の構想力
対極的な仏教界の巨星――空海と最澄
環境とともに変化するリーダーの資質
第2章 自分のために、自分にしかできないブレークスルーを実現する
論点1 「健康なエリート」を復権せよ
論点2 なぜ、オーケストラの団員は生き生きとしているのか
論点3 ランキングの誘惑から抜け出せ
論点4 ワクワクドキドキする仕事を探す
論点5 若い世代にチャンスを与える元手資本主義
第3章 リーダーには、リーダーにしかできないことがある
論点6 日本に蔓延するCEOインフレの波
論点7 コミットメントを引き出せないコンセンサスには意味がない
論点8 トップの顔が見えない、トップの顔をつくらない日本企業
論点9 トップは、トップだからこそ伝えられることを伝えよ
第4章 日常の出来事を自分の頭で、自分なりに考える
論点10 環境問題で問われる各国の構想力
論点11 細分化のワナに陥る政治家たちの政策論争
論点12 公と民、それぞれの役割を明確にせよ
論点13 ポストに見合う運営能力があるかどうか、で判断せよ
論点14 柔道はコマーシャリズムにまみれたか
論点15 公ではなく、個人やグループだからこそできることがある
第5章 構想力、想像力、感性、コミュニケーション能力を鍛える行動術
行動1 自分で自分の実践の機会をつくる
行動2 日頃から一流のものに触れて感性を磨く
行動3 「一度きり」の体験を楽しむ
行動4 知識を知恵へと転換できる地頭を鍛える
行動5 しっかりとした土台の上で自由な発想を育む
行動6 外れ矢を射って的を絞る
行動7 個人として、現地の社会にインテグレートしてみる体験を持つ
行動8 自分の「常識」を疑い、本質を見極める
行動9 頭と心とで、歴史と文化を感じ取る
行動10 周囲に認められる「存在感」を手に入れる
おわりに

概要

2009年1月20日に第一刷が発行。ファーストプレス。189ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六版。

構想力を中心に、想像力や感性、コミュニケーション能力の重要性を論じて、そのための行動方法も解説する著作。

タイトルにもある賢者の知恵というのが、構想力、想像力、感性、コミュニケーション能力。その4つの能力を鍛えるための具体例やヒントが掲載している。

第一章では、特に弘法大師とも呼ばれる空海(くうかい、774年~835年)を紹介。

新しい時代を切り拓いた人物として、世界的な歴史を振り返ってみると、広範囲の分野で活躍した大天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci、1452年~1519年)がいる。

では、日本ではどのような人物が該当するかと今北純一が考えた答えが、遣唐使として中国に渡り、帰国後は高野山に真言宗の金剛峯寺を建てた空海。

また、その対比として同じく大天才の最澄(さいちょう、766年~822年)も解説。

最澄も遣唐使として中国に渡り、帰国後は比叡山に天台宗の延暦寺を建てた人物。

そのような観点から日本にも世界に誇れる賢者がいた事を改めて紹介しながら、世界各国の人物や書物なども折に触れて、構想力、想像力、感性、コミュニケーション能力の大切さと行動に移すための方法を記述していく構成。

感想

この『新しい時代を切り拓く賢者の知恵』を通して、改めて空海や最澄に興味を持った。

本書にも紹介されているのが司馬遼太郎(しば・りょうたろう、1923年~1996年)の『空海の風景』。直ぐにこちらも読んで、さらに空海に興味を持った事がある。

日本人の読者に向けて、日本にも素晴らしい偉人たちはいたという事を改めて紹介しているのも特徴である。

ホンダの本田宗一郎(ほんだ・そういちろう、1906年~1991年)と経営面を担った藤沢武夫(ふじさわ・たけお、1910年~1988年)についての記述など。

またトヨタ生産方式を確立した大野耐一(おおの・たいいち、1912年~1990年)に関しての話も記載している。

今北純一の経歴上、海外の話も多いが、日本の話も要所要所で入っている。このおかげで、藤沢武夫や大野耐一を知って、関連著作を読んだ経験も。

藤沢武夫では、『経営に終わりはない』『松明は自分の手で』

大野耐一では、若山滋(わかやま・しげる、1947年~)の著作『大野耐一 工人たちの武士道』である。

そして、この今北純一の著作には、様々な人物の他に、多くの書籍が紹介されているのも、大きな魅力である。

上記のような海外の書物も多く文中に出てくるので興味のある本を手に取ってみるのがオススメ。もっと成長したい、自分を高めたいという人には非常に最適な著作である。

アドバイスを聞く人はたくさんるけれども、実際に行動に移す人は100人のうちせいぜい二人か三人かだということです。アドバイスといっても、私からのアドバイスだけではありません。(P.142「第5章 構想力、想像力、感性、コミュニケーション能力を鍛える行動術」)

ここでは、十数年以上、20代~30代の人たちと接してきて感じた今北純一の感想が書かれている。

アドバイスを聞く人は多いが、アドバイスを実践する人は、極わずかであるという事。特に、読書も同じ傾向があるように思うので、自戒にしたい部分である。

また同じ章の158ページには、ドイツ生まれの理論物理学者のアルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein、1879年~1955年)の言葉も。

Wisdom is not a product of schooling,
but of the life-long attempt to acquire it.

知恵というものは、学校教育を通して得られるものではなく、
一生かかって手に入れようとすべきものである。

(P.158「第5章 構想力、想像力、感性、コミュニケーション能力を鍛える行動術」)

この姿勢を大切にしながら、一生を過ごしていきたいと思う。

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オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。

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