『ミッション』今北純一

今北純一の略歴

今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務。

『ミッション』の目次

第一章 ミッションとは何か
第二章 日本企業のここがまちがっている
第三章 「良い赤字」を見きわめられるか
第四章 こうすれば会社は立ち直る
第五章 ミッションが、個人も救う
エピローグ
あとがき

概要

2002年10月25に第一刷が発行。新潮社。219ページ。ハードカバー。125mm×197mm。

副題は「いま、企業を救うカギはこれだ」。また英語で、“Mission defines the destination, Visoin draws the road map.”という記載も。

第一章では、ミッションの必要性。
第二章では、日本の企業の問題点。
第三章では、企業の経営に関する注意点。
第四章では、企業の経営改善の方法。
第五章では、今北純一が自身のキャリアを振り返りながら、ミッションは企業だけでなく個人にも必要と説く。

トヨタやホンダのミッションについても。

トヨタは、創業者である豊田佐吉(とよだ・さきち、1867年~1930年)が、二代目の豊田喜一郎(とよだ・きいちろう、1894年~1952年)に対して「何か新しいことをやれ」と伝えた。

豊田喜一郎は「国産車をつくる」事を決意。これがトヨタのミッションとなる。

本田宗一郎(ほんだ・そういちろう、1906年~1991年)が、創業した時のホンダのミッションは「世界一のオートバイメーカー」。日本一ではなく、最初から世界一を目指していたのがポイントである。

さらにトヨタやホンダのヨーロッパにおけるミッションについてや日本のセイコーとスイスのスウォッチのマーケット分析なども。

国内をはじめ、海外などの具体的な事例を含めて、いかにミッションが重要であるかを主張する著作。

感想

今北純一の書籍などで、手に取った本書。

ミッションの必要性を説き、さらにヴィジョンやパッションについても。

これまでの今北純一の著作と同様に、ビジネスや個人の生き方などに関して、とても勉強になり、参考にもなる。

家族を養うということはもちろん大事だし、仕事において成果を残すことも重要だ。だが最も大切なことは、やはり「自分は何をしたいのか」をいつも考え、その考えを尊重し、研鑽を積んでいくことなのだろう。(P.150「第五章 ミッションが、個人も救う」)

ここでは、アメリカの女性ヴァイオリニストのヒラリー・ハーン(Hilary Hahn、1979年~)のコンサートを観た後で感じた事を今北純一が記している。

因みに、今北純一はヒラリー・ハーンのことを全く知らなかった。

イスラエルのヴァイオリニストであるイツァーク・パールマン(Itzhak Perlman、1945年~)のチケットを購入した所、アメリカ同時多発テロ事件の影響で、訪欧ができなくなったイツァーク・パールマンの代役として、舞台に立ったのが若きヒラリー・ハーン。

今北純一は、彼女の演奏や存在感に非常に感銘を受けて、先述の自己の考察までに至った。

また、この本では何人かの哲学者の名前も登場する。

書籍の最初には、フランスの哲学者で数学者のルネ・デカルト(René Descartes、1596年~1650年)の言葉がある。

さらに、古代ギリシアの哲学者であるアリストテレス(Aristotelēs、前384年~前322年)やエピクロス(Epikouros、前341年~前270年)も。

「人はなぜ哲学を学ぶのか、という設問に対してエピクロスは、『哲学を学ぶと、未来を恐れずこころよく生きることができる』といっている。『こころよく生きる』とは、毎日を面白おかしく生きるということではない。それは、思慮深く美しく正しく生きることであり、人間はこころよく生きることができれば一生精神的に自由で充実した生き方ができる、というのがエピクロスの提言である。(P.200「第五章 ミッションが、個人も救う」)

こころよく生きるためには、哲学が必要。

哲学と言っても、小難しいものではなく、つまり、自分の頭で考えて、未来に備えて、日々の努力を実行して、自由に生きる事と解釈。

実践的能力そのものを徳とする「知行一致」の考え方で市民の道徳意識の改革に努めていたソクラテス(Socrates、前470年頃~前399年)。

妻のクサンティッペ(Xanthippe、生没年不詳)に「得にもならない話ばかりしているんじゃないわよ!」と大声でののしられた逸話は、笑ってしまった。

「汝が良妻を持たば幸福者にならん。悪妻を持たば哲学者にならん」と言ったソクラテス。

面白い。

因みに英語では、”By all means marry; if you get a good wife, you’ll become happy. If you get a bad one, you’ll become a philosopher.”

閑話休題。

ビジネスや個人の生き方、そして哲学まで話が広がり、深まるミッションの重要性を主張しながら、多くの日本人の背中を押してくれる書籍である。

ビジネスに興味のある人や学生にもオススメの著作。

書籍紹介

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オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。

公式サイト:オックスフォード大学