今北純一の略歴
今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務。
船川淳志の略歴
船川淳志(ふなかわ・あつし、1956年~)
組織・人材コンサルタント。
慶應義塾大学法学部法律学科を卒業。東芝、外資金融勤務後、渡米。アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にて修士号(MBA in International Management)を取得。
『世界で戦う知的腕力を手に入れる』の目次
まえがき
第1章 世界で戦う知的腕力とは何か?
知的腕力が試される時
知的腕力を定義する
第2章 知的腕力を持つ人々はどう考え、行動するのか
知的腕力の二つの能力――スキルを超えて存在するもの
知的腕力の二つの能力――スキル
広い視野と高い視座を持ちながら、目の前の出来事をこなす
一流の人やものに触れて学ぶ
第3章 知的腕力はどうすれば手に入れられるのか?
原動力はパッション(情熱)とアイデンティティ
知的腕力を身につける方法
第4章 努力しなければ知的腕力は得られない
あとがき
『世界で戦う知的腕力を手に入れる』の概要
2007年9月26日に第一刷が発行。ファーストプレス。187ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六版。
コンサルタントとして海外でも活躍した経験のある今北純一と船川淳志の対談集。
10回に分かれて対談形式で構成。今北純一のパリ雑感が4つ、船川淳志のシリコンバレー通信が3つ、間々に挿入。
海外と言っても、今北純一がヨーロッパで、船川淳志がアメリカというのも対比となるポイント。
今北純一が実際に会ったり、見たりしたことのある人物を考察するエピソードの項目も。
カルロス・ゴーン(Carlos Ghosn、1954年~)…ブラジル出身の実業家。エコール・ポリテクニーク、パリ国立高等鉱業学校を卒業。ルノー・日産・三菱アライアンス」の社長兼最高経営責任者(CEO)を務めた。
山下泰裕(やました・やすひろ、1957年~)…柔道家、柔道指導員。熊本県出身。1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルを獲得。世界選手権でも、4つの金メダルを得ている。
羽生善治(はぶ・よしはる、1970年~)…将棋棋士。埼玉県所沢市出身。永世竜王、十九世名人、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖の資格保持者、および名誉NHK杯選手権者の資格保持者。
ビル・クリントン(William Jefferson Clinton、短縮形はBill Clinton、1946年~)…アメリカの政治家。第42代アメリカ合衆国大統領。ジョージタウン大学、イェール・ロー・スクール卒業。
ヒラリー・ハーン(Hilary Hahn、1979年~)…アメリカの女性ヴァイオリニスト。バージニア州レキシントン生まれ、ボルティモア出身のドイツ系アメリカ人。カーティス音楽学校を卒業。2003年にグラミー賞を受賞。
松田権六(まつだ・ごんろく、1896年~1986年)…蒔絵師。石川県金沢市生まれ。石川県立工業学校漆工科、東京美術学校漆工科を卒業。人間国宝。文化勲章受章者。
加えて、船川淳志は、ルイス・ガースナーについて。
ルイス・ガースナー(Louis V. Gerstner, Jr. 1942年~)…アメリカの経営者。ダートマス大学工学部を卒業。ハーバード大学ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。
アメリカン・エキスプレス会長兼最高経営責任者(CEO)、RJRナビスコ会長兼最高経営責任者(CEO)、IBM会長兼最高経営責任者(CEO)、カーライル・グループ会長などを歴任。
上記のような人物たちの話も交えながら、世界で戦うための知的腕力について、解説していく対談集である。
『世界で戦う知的腕力を手に入れる』の感想
今北純一の事は知っていたが、寡聞にして船川淳志については初めて知った。
今北純一と対談する相手であるから、それなりの人なのだろうっといった感じで読み始めた記憶がある。実際にかなり凄い人のようだったし。
今北純一の考える知的腕力とは、「自分の考えや信条を他人に伝達したり、相手の不条理なところを反駁したり、討論や交渉の結論に自分の主張を反映させる能力」としている。
船川淳志の考える知的腕力とは、「一流とか、プロフェッショナルとか言われる程度の専門知識やスキルを持っていることを前提に、お互いに刺激を与えながら高めあえる能力を持つ」、「第一級の知性を持っている」としている。
先述した通り、日本を含めて世界各国の老若男女の偉人も紹介。そこでの考察をさらに二人が対談しながら深めていくといった形になっている。
欧米ビジネスの前線で、私が仕事を始めて早30年経つが、「沈黙は金ではなく、しばしば罪悪にすらなりうる」と思うし、「能ある鷹は、いざという時に、ここぞとばかりその爪をむきだしにする」ということを、いまでも毎日実感する。(P.1「まえがき」今北純一)
今北純一が「まえがき」、船川淳志が「あとがき」を書いている。
上記は、今北純一の「まえがき」で特に印象的だった部分。
日本と世界では、文化が違うのであるから、もちろんビジネスの背景も異なるという話。つまり、全く甘くはない世界であるという事。
ただそのようなビジネスの戦場に向かうために、必要なものが、この対談集で語られている知的腕力である。
船川淳志は、38ページで、F・スコット・フィッツジェラルド(Francis Scott Key Fitzgerald、1896年~1940年)の『The Crack-Up』に書かれた知性について紹介。
The test of first-rate intelligence is the ability to hold two opposed ideas in mind at the same time and still retain the ability to function.
第一級の知性とは、ある考えを持ったら、それとまったく正反対な考えを同時に持ち、なおかつ機能する能力をそのまま残すことである。
これは、経営コンサルタントで投資家の瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)も、同様の事を主張していた。
ディベート的な観点や思考力が、とても大切であるという事。
また今北純一が語る蒔絵師で人間国宝の松田権六についても、「出し癖をつける」というのが、とても響いた。
松田権六は毎日必ず1枚、図柄を描く事を実践し、他の人にも勧めていたという逸話。
集中力の鍛錬になるし、新しい創作にも繋がる。
ただ毎日、素晴らしい作品が出来るわけでもなく、中にはあまり良くはない物になってしまう事もあるかもしれないが、続ける事で、新たな作品が生まれる土壌が仕上がる。
そのほかにも、様々な心掛けや技術などが具体的に紹介されている。
細分化された中で、思考力と対人力について、船川淳志が「あとがき」で書かれていた。私としても継続して、この二つの能力を伸ばしていきたいと思う。
ビジネスにおいて、さらに上を目指したい方、または海外でビジネスをしたい方などには、非常にオススメの対談集である。
書籍紹介
関連書籍
関連スポット
オックスフォード大学:今北純一
イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。
公式サイト:オックスフォード大学
サンダーバード国際経営大学院:船川淳志
サンダーバード国際経営大学院は、アリゾナ州フェニックスに本部を置く、大学・大学院大学。正式名称は、アリゾナ州立大学 サンダーバードグローバル経営大学院(Thunderbird School of Global Management at Arizona State University)。
公式サイト:サンダーバード国際経営大学院