『ビジネス脳はどうつくるか』今北純一

今北純一の略歴

今北純一(いまきた・じゅんいち、1946年~2018年)
経営コンサルタント。
広島県の生まれ。東京大学工学部応用物理学科を卒業。東京大学大学院化学工学科修士課程を修了。
旭硝子、英国オックスフォード大学、仏国ルノー公団、エア・リキードで勤務。

『ビジネス脳はどうつくるか』の目次

第一章 欲望とジェラシーの時代
第二章 今こそ必要なグランド・デザイン
第三章 左岸からの発想
第四章 突破口は「個人」のミッション
付記 資本とは何か
エピローグ
あとがき

概要

2006年11月15日に第一刷が発行。文藝春秋。184ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

ビジネスを中心に時代や個人を考察する今北純一の書き下ろし作品。

さまざまな分野の話が紹介されるが、最終的には個人がいかに幸せに生きるためにはどうしたら良いのかが論じられる。

それは、ビジネスにも繋がる。

自分のミッションを探し出す事、見つけ出す事。そのためには、ビジョンも必要である事。

つまり、一生続けられるような好きなビジネスを持つ事が、より良い人生を送るために重要であるという大枠。

表紙には、Carpe Diem(カルペ・ディエム)というラテン語も記載されている。

古代ローマ時代の南イタリアの詩人であるクィントゥス・ホラティウス・フラックス(Quintus Horatius Flaccus、前65年~前8年)の詩句によるもの。

意味は「今日一日の花を摘め」、つまり「今を楽しめ」という事。

映画のシリーズ『男はつらいよ』の主人公の寅さんの名台詞から絶対需要の発掘の話に繋がるといったようなトリッキーな部分も面白いポイント。

アメリカの社会哲学者であるエリック・ホッファー(Eric Hoffer、1902年~1983年)についての紹介も。個人に比重を置いた生き方の大切さを論じる。

ページ数はそこまで多くないが、ビジネスや生き方を再考察できる一冊である。

感想

国家は主権者に委ねるべきと唱え、絶対王政の理論的基礎を与えたホッブズと、主権在民を説いたロックやルソーとでは、思想的に正反対ですが、どちらも私利私欲を前提としているのは興味深い。
人間の欲望は、いつの世も変わらずに存在するのです。(P.14「第一章 欲望とジェラシーの時代」)

トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes、1588年~1679年)は、イギリスの哲学者。著作『リヴァイアサン』が有名。

ジョン・ロック(John Locke、1632年~1704年)は、イギリスの哲学者。イギリス経験論の父とも呼ばれる。

ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau、1712年~1778年)は、ジュネーヴ生まれでフランスで活躍した哲学者。著作『社会契約論』が有名。

どのような哲学や思想でも、その前提となるのは人間の欲望。当たり前と言えば、当たり前ではあるが、見逃してはならない部分。

そして、どのような時代でも、変わることがないポイントである。

個人においても、ビジネスにおいても、忘れてはいけない事。確かマーケターの森岡毅(もりおか・つよし、1972年~)も、欲望を肯定するような主張をしていた。

「第四章 突破口は『個人』のミッション」では、わかりやすさの罠についての記述も。ここは、とても記憶に残っている箇所。

何でもわかりやすいのが良いという傾向や風潮があるような気がするが、この今北純一の文章を読んで、納得した。

つまり「わかりやすさ」には、決まりきった結論へと導かせてしまう型にハメられているのと同じような事である。

賛成か反対か。二項対立など。

よく言われる事であるが、新聞やテレビなどを鵜呑みにせずに自分の頭で考えるというのが大切である。

経営コンサルタントで投資家の瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)が主張するディベート的思考力も技として身に付けておきたい。

『ビジネス脳はどうつくるか』といった、なかなかポイントに絞ったようなタイトルになっているが、ビジネスや個人の生き方を再考できる今北純一の書き下ろし作品である。

ちなみに、一部加筆の上、改題し文庫化したものが『マイ・ビジネス・ノート』として2009年2月に発売されている。

書籍紹介

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オックスフォード大学

イギリスのオックスフォードにある11世紀末に設立した名門の総合大学。

公式サイト:オックスフォード大学