『稼ぐ超思考法』岡本吏郎

岡本吏郎の略歴

岡本吏郎(おかもと・しろう、1961年~)
税理士、経営コンサルタント。
新潟県の生まれ。明治大学商学部を卒業。金融機関の勤務を経て独立。

『稼ぐ超思考法』の目次

まえがき
1「歴史がわかれば、将来を予測できる」
スターバックスは明治時代からあった?
2「世の中にお得はない」
スペースシャトルが落ちたとき……
3「プリコラージュ」
経済学も経営学もノウハウもいらない!
4「格好良いものは、格好悪くなる」
理由もなく突然やってくる!
5「リスク」
資本主義はババ抜き
6「お金の価値」
お金で計算ができないものがオイシイ
7「1・3・5の法則」
なぜ、500万円貯めるより、100万円貯めるほうが難しいのか?
8「初期条件で決まり」
ちょっとした差で結果は大きく変わってしまう!
9「逆選択」
まだ、「旅人のビジネス」をやりますか?
10「価値関数」
幸せは減っていく
11「不確実性回避」
人は見えないものを避ける!
12「カオスの縁」
成長すれば苦痛も増える!
13「ポアンカレの法則」
関係ないものを組み合わせると……
14「究極の数式」
うまくやりすぎてはいけない
15「恐怖心」
初心は忘れるもの
16「攻めるのは逆さまから」
「自分探し」に意味はない!
17「選ばない選択の価値は大きい」
「宿命」を作る!
18「エントロピー」
達人のエネルギーの使い方
19「タナトス」
16階から飛び降りろ!
20「“近道選び”の性向に意識的になる」
この本を終えるにあたって……
おわりに

※実際には、全ての数字の前に「稼ぐ超思考法」という表記がある。今回は見た目が煩雑になるので省略をしている。

概要

2007年11月14日に第一刷が発行。フォレスト出版。204ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

表紙には、“20 idea methods”と“仕事と人生に効く「問題解決力」が身につく20の方法”という言葉が表記されている。題名の前には“カリスマ・コンサルタントの”とも。

税理士で経営コンサルタントでもある岡本吏郎が、ビジネスに使える、稼ぐための思考法を20個にまとめとた著作。

ポップで読みやすい文体。20個の思考法が、さらに細かく小見出しごとに分かれているので、テンポも良く読み進められる構成。

最終の204ページには、参考文献も掲載されている。

感想

岡本吏郎の文体や引き合いに出す偉人たちなど、好みが結構分かれるかもしれない。

ただ、読みやすいには読みやすいので、一度ハマると他の作品も読み漁りたくなるとは思う。

今回の『稼ぐ超思考法』は、ビジネスに役立つ思考法が20個に分かれて、紹介されているので、取っ付きやすい構成。

以下、引用しながら解説。

自らが、自社や業態の歴史を調べておくことで、今後の行く先も見えてくるというわけです。この作業をしておくと今後大きな意味を持ってくるようになるはず。(P.18:1「歴史がわかれば、将来を予測できる」)

ビジネスには、順調に伸びていく時期もあれば、売り上げが低迷してしまう時期もある。

そのような転換期を知る方法として、ビジネスの歴史や業態の歴史をしっかり学んで勉強してくおくのが良いというアドバイス。

意外とビジネスは大きな流れで繰り返すものも多い。

食品や衣服など。

時代の流れを冷静に判断できるように、歴史の勉強をしておくと良いというもの。

しっかりと学んでおけば、異変や変化にも対応しやすいはずである。

現在の流行だけではなく、過去の流行も調べておくことの重要性を説く。

いつも税金を計算しに入れた思考で行動をする。そんな意味だと思ってください。
タックス・クライテリアを前提にすると、世の中の商品は人やシチュエーションによって価格が違うことになります。(P.70:6「お金の価値」)

タックス・クライテリアは、tax criteriaのこと。直訳すると、税の基準。

ちなみに、criteriaは、criterionの複数形。

税理士である岡本吏郎が、子供との会話を例に出しながら、支払う税金も含めて、買い物なども考えるというエピソードを披露。

所得税や住民税もある。

そのような税金も考慮しながら、お金を稼いだり、買い物で費用を支払ったりすると、お金の価値観が変わってくるというもの。

さらに話は、労働時間や税金のかからないものなどへと展開していく。

私たちが注意を向けるべきなのは、誰もが気にしない目立たない部分です。その代表が初期値。初期値はとても重要です。そして、実際の行動が動き出した後は、根底に流れる目立たないもの。それらが運命を決めています。(P.94:8「初期条件で決まり」)

ここでは、アメリカの気象学者であるエドワード・ノートン・ローレンツ(Edward Norton Lorenz、1917年~2008年)のコンピュータ・シミュレーションの逸話。

初期値のごくわずかな違いによって、結果は大きく異なってしまったというもの。

ここで、岡本吏郎は、そのような初期値と、その根底にある微差に、注目するようにとの助言。

目立つのは結果であるが、目立たない部分が肝であるというもの。

キーワードは、初期値、微差、時間。

自分の仕事や生活にも、上手く取り入れて応用していきたいところである。

私たちは、不確実性をリスクと思いがちですが、そうではありません。フランク・ナイトという学者は確率計算できる不確実性を「リスク」と呼びました。(P.119:11「不確実性回避」)

アメリカの経済学者であるフランク・ハインマン・ナイト(Frank Hyneman Knight、1885年~1972年)は、リスク(risk)と不確実性(uncertainty)を明確に区分した。

確率によって予測できるリスクと、確率的事象ではない不確実性。

“ナイトの不確実性”とも呼ばれるもの。

つまり、予測できるリスクを選びなさい。予測できな不確実性は避けなさい、ということ。

そして、話は予測可能性について入っていく。

顧客に対しては、安心させるために、予測可能性を与えなさいということ。簡易的な例としては、お客様の声など。

生物体が現在の環境によく適応していればいるほど、それは、未来の変化に対する適応性を失う可能性がある。(P.148:14「究極の数式」)

ここでは、イギリスの統計学者、進化生物学者であるサー・ロナルド・エイルマー・フィッシャー(Sir Ronald Aylmer Fisher、1890年~1962年)の自然淘汰に関する基本原理の主張を紹介。

なかなか哲学的な内容でもある。

現在の状況で1位であれば、環境の変わった未来では、1位になりにくい。

常に変化に対応できるようにしておかなければならない。

短時間で成果が出てしまうものは、短時間で陳腐化してしまうとも言える。

柔軟性を保持しながら、長期的に成果を上げられるようにしておくことが重要。

多くの人々の既得権益や老害化なども、この辺りに原因があるのかもしれない。

私自身、何か仕事をはじめる場合は、「誰に嫌われたいか」をかなり具体的に明確化しています。まずは、嫌われる人を決める。それから商品企画や本のコンセプトを決める。こういう順序です。(P.162:16「攻めるのは逆さまから」)

ここでは、好きなことよりも、嫌いなことに注目するというもの。

自分の仕事や趣味も、マーケティングも同じであるといった主旨。

これは、全く自分の中には無かった考え方だったので、とても参考になった。

さらに話は続いて、もし自分が苦手だな、嫌だなといった商品や作品、サービスに出合ったとしたら……。

それは、その作者から自分は嫌われている、あるいは顧客の対象外であるということ、という展開。

この辺りは、自分のサービスや商品に取り入れいる部分ではある。

その反面、稼ぐという機会は少なくなっているかもしれないが。

他にも色々と参考になる思考法がエピソードや事例を交えて紹介されている。

ビジネスの初心者から中級者まで、非常に勉強になるオススメの本である。

書籍紹介

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