『天才!成功する人々の法則』マルコム・グラッドウェル

マルコム・グラッドウェルの略歴

マルコム・グラッドウェル(Malcolm Timothy Gladwell、1963年~)
カナダ人のジャーナリスト、作家。
イギリスのハンプシャー州の生まれ。カナダのトロント大学トリニティ・カレッジを卒業。
『ワシントン・ポスト』や『ニューヨーカー』などで執筆。著書、多数。

『天才!成功する人々の法則』の目次

プロローグ ロゼトの謎
第一部 好機
第一章 マタイ効果
第二章 一万時間の法則
第三章 天才の問題点 その一
第四章 天才の問題点 その二
第五章 ジョー・フロムの三つの教訓
第二部 「文化」という名の遺産
第六章 ケンタッキー州ハーラン
第七章 航空機事故の“民族的法則”
第八章 「水田」と「数学テスト」の関係
第九章 マリータの取引
エピローグ ジャマイカの物語
解説 勝間和代
注解

概要

2009年5月12日に第一刷が発行。講談社。ハードカバー。350ページ。127mm×188mm。四六判。

成功者や天才たちが、どのようにして成功したのかを分析して考察する作品。

原著は、2008年11月18日に『Outliers: The Story of Success』として刊行されている。

構成は、大きく分けて、“第一部 好機”と“第二部 「文化」という名の遺産”といった形。

それぞれ具体的な事例などを織り交ぜて説得力を持たせている。

訳者および解説は、経済評論家の勝間和代(かつま・かずよ、1968年~)。

東京都葛飾区の生まれ。慶應義塾中等部、慶應義塾女子高等学校、慶應義塾大学商学部を卒業。早稲田大学ファイナンス研究科専門職学位課程を修了している人物。

解説のタイトルは、“生まれつきの天才などいない?鬼才マルコム・グラッドウェルが私たちに贈る「天才論」”。

解説までが、339ページ。注解が、11ページ。合計350ページの著作である。

感想

発売当初、1万時間の法則というキャッチャーな言葉で、話題となっていた著作。

その後に、経営コンサルタントで投資家、教育者の瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)が『僕は君たちに武器を配りたい』の中でも紹介していたので、読んでみた。

想像以上に面白かった。しかも、1万時間の法則ではなく、別の部分などが、かなり興味深かった。

例えば、成功者は、最低限というか、一定以上の才能は必要ではあるが、その能力を発揮するために、時代背景や文化遺産、コミュニティー、環境などを含めた「好機」が重要な役割を果たしている点。

特に文化遺産は、正と負がある。

飛行機墜落事故は、文化遺産の負の側面が大きくクローズアップされていた。ちょっと切ないエピソード。

1万時間というのも、何かで成功するには、1万時間の練習が必要という主旨ではない。

何かで成功した場合、振り返って分析してみると、おおよそ1万時間の実践が必要だったと結果的に見えるよね、というもの。

どちらにしろ、1万時間というものが、集団から抜け出す、ポイントとなる。

数学と水田の関係、「粘り強さ」の大切さ。
分析的知能と実践的知能。

著者の先祖に関するエピソードも面白かった。総括的な感じだったし、物語としてもとても興味深い。

解説として、訳者あとがきの勝間和代の文章も、全体が整理されていて、とても読みやすかった。

成功者は歴史と社会、好機と遺産の産物である。その成功は、異例のものでも謎に満ちたものでもない。それらは、複雑に編み込まれた、優位性と彼らが受け継いだ遺産から生まれる。(P.322「エピローグ ジャマイカの物語」)

成功者の成功というのは、単なる本人の才能だけではない。

そこには、内的要因だけではなく、むしろ外的要因が大きく影響していることを指摘。

これは、後から解説で、勝間和代も大きく注目している点である。

さらに、1万時間を勝間和代が詳細に解説。

1万時間は、毎日8時間としても、1250日。つまり、約3、4年。

毎日3時間であれば、約9年以上となる。

著者は「成功した一部の人々は、当時うまくいっていた人々の仲間に加われなかった、あるいはあえて加わらなかったからこそ、成功できた」と説明する。なぜなら、時代環境が変わる中で、既存の権益がない人間ほど、リスクをとることができたからだ。(P.333「解説」)

ここでは、勝間和代の「解説」の部分。

そう、つまり、成功した人々は、その当時というか、前段階としては、上手くいっている人たちの輪に入っていなかったというもの。

だからこそ、リスクを取り、また時代の変化があり、成功した、ということ。

なかなか面白い部分である。

成功や天才、才能、努力といったテーマに関心のある人には非常にオススメの作品。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

トロント大学トリニティ・カレッジ

トロント大学(University of Toronto)は、カナダのオンタリオ州にあるトロントに本部を置く州立大学。1827年の創立。

公式サイト:トロント大学トリニティ・カレッジ