岡本吏郎『お金の現実』

岡本吏郎の略歴

岡本吏郎(おかもと・しろう、1961年~)
税理士、経営コンサルタント。
新潟県の生まれ。明治大学商学部を卒業。金融機関の勤務を経て独立。

『お金の現実』の目次

はじめに
第一章 お金というもの
第二章 お金という夢を追いかけることに夢はない
第三章 お金とは何なのか?
第四章 夢は捨てて、現実的に考える
第五章 この本での結論(お金という冒険)
あとがき

『お金の現実』の概要

2005年4月14日に第一刷が発行。ダイヤモンド社。261ページ。ハードカバー。127mm×188mm。四六判。

経営コンサルタントで税理士の岡本吏郎が、さまざまな事例や引用を用いながら、お金に関連した内容をまとめた著作。

文章がポップで、エッセイのように気軽に読めるのも特徴である。

家、結婚式、車、趣味、修繕費、税金などなど。また生活や労働、人生といった事柄にも触れていく構成。

それぞれの項目が、2~3ページ程度でまとめられいるので、読みやすいというのもポイント。

『お金の現実』の感想

どのような形で、岡本吏郎のことを知ったのかは憶えてはいない。

お金に関する本を手に取って、内容をパラパラと捲って、何となく読みやすそうだな、勉強になりそうだな、といったくらいの気持ちで購入したと思う。

そこから岡本吏郎の他の著作にも、手を出していったという感じ。

今回の『お金の現実』は、タイトル通り、そのまま、お金に関する全般のこと。

本書の中で出てくる用語や人物について、ページの下部に注釈があり、補足情報まで丁寧なつくりになっている。

政治家、官僚、作家、思想家、実業家など、さまざまな分野の人物が登場してくる。

その辺りを深掘りしていくのも面白い。

さらに、259ページには、参考文献が一覧になっている。ここから興味のある書籍を読み込んでいくことも出来る。

定期積金を利用して、必ずわかっている出費については積み立てて出費の平準化を図っているのだ。
「◯◯があったから根源はお金が足りない……」
こういう言葉が出ないようにするのが家計のリスク管理だ。(P.53「第一章 お金というもの
:修繕費という目に見えないコスト」)

ここでは、常に出費のための積み立ての実施を提案。

何らかの日常的に消費する商品などに関しては、一年分などのまとめ買いで安く済ませるという方法も。

上述の部分では、突発的な買い物や出費で、お金が足りない、という状態にはしないように、リスク管理をしようというもの。

これは、お金のことだけではなく、仕事や勉強などにも応用できそうな考え方でもある。

平準化しながら積み立てて、使う時には一度に割り引きで購入する。

平準化しながら努力をして、勝負時には一気に力を発揮するといった感じか。

みんなが決まったように同じことを言うときは、何かおかしいものだ。そういうときは、かならず「何か」がある。それをよく考えて欲しい。(P.90「第二章 お金という夢を追いかけることに夢はない:一見、現実的に見えるおかしなこと」)

ここでは、ファイナンシャルプランナーなどによる人生設計や人生計画のアドバイスに対する疑義。

かなり決まったプラン、統計的な基準、もしくはビジネス的に有利な指針などに、染まっていないかというもの。

参考にするのは良いが、自分で工夫してみると安くなったり、より満足のいくものになることもある、という主旨。

確かに、当たり前に受け入れていることを、立ち止まって考えてみるのは、自分の趣味嗜好を取り入れる良い機会だと思う。

善次郎は、豊臣秀吉の話を引用しながら
「秀吉のごとき不世出の才を抱いていても、一足飛びに関白になったのではない。いわんや凡人の我々は一層の秩序、階段を経なければならぬと思う」と言っている。(P.169「第四章 夢は捨てて、現実的に考える:安田善次郎というモデル」)

ここに登場するのは、実業家の安田善次郎(やすだ・ぜんじろう、1838年~1921年)である。

越中国富山藩の生まれで、20歳頃に江戸へと出て、玩具屋、鰹節屋、両替商などを経て、安田銀行を設立。

金融、保険、不動産などの会社を次々に立ち上げて、安田財閥を築いた人物。

その安田善次郎が、戦国大名で天下人の豊臣秀吉(とよとみ・ひでよし、1537年~1598年)を引き合いに出して、地道な努力が大切であると説いていた、というエピソード。

安田善次郎は、凡人ではないとは思うけれど、偉人ですら一気には駆け抜けれられないのであるから、着実に進むことの大切さを改めて感じる部分である。

むしろ、着実な継続の出来る人が天才、偉人と呼ばれるのかもしれないが。

さらに話は続いて、当たり前のことは、凡人がやっても天才がやっても、同じ結果になる、という本多静六(ほんだ・せいろく、1866年~1952年)の逸話も。

本多静六は、林学者でもあり、蓄財で巨富を築き上げた人物。著書である『私の財産告白』が非常に有名である。

安田善次郎も、本多静六も、当たり前のことを実行したというもの。

当たり前は大切である。また継続することも。

「私が行なった研究では、誰でも10年がんばらなければ、世界的水準には達することができないという結果が出た。ボビー・フィッシャーはチェスの大達人になるのに10年弱かかった。モーツァルトはもうちょっとかかっている」(P.239「第五章 この本での結論(お金という冒険):時間という不思議な資産」)

ここでは、ノーベル賞受賞者の経済学者であるハーバート・A・サイモン(Herbert Alexander Simon、1916年~2001年)の発言の引用。

ちなみに、ハーバート・A・サイモンは、“人工知能の父”とも呼ばれる人物。

岡本吏郎は、ここでさらに仕事とお金の関係に踏み込んでいく。10年努力をして仕事に励んでいると、時給が急激に上がっていくという。

どちらにしても、10年という時間の力、時間の長さというものがポイントである。

長く続けられる精神力も、長く続けられる物事も、時間に応じて、大きな福利的な効果が顕現していくのかもしれない。

自分のペースを崩さないというのも大切であると内容は続いていく。

お金や仕事、生き方などを再考するのには、非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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