『裏帳簿のススメ』岡本吏郎

岡本吏郎の略歴

岡本吏郎(おかもと・しろう、1961年~)
税理士、経営コンサルタント。
新潟県の生まれ。明治大学商学部を卒業。金融機関の勤務を経て独立。

『裏帳簿のススメ』の目次

はじめに 合法的に「裏金」を残せる「裏帳簿」の使い方を教えます!!
第1章 表の決算書は疫病神!お金が残る「裏帳簿」で勝負しろ!!
第2章 儲かる会社、お金が残る会社は、「数字の意味」を知っている!
第3章 これを知らないと命とり!会社からお金が消えるカラクリ
第4章 決算書のワナにはまるな!これで「合法的裏金」が残る!!
第5章 生死を分ける損益計算書、プロの裏ワザでお金を生みだせ!
第6章 儲けの最強ツールで「裏帳簿」のお金を育てろ!
エピローグ 「借金できるぐらいの男になれ」と幼い私に言い続けたある経営者の話
あとがき

概要

2004年7月10日に第一刷が発行。アスコム。269ページ。127mm×188mm。四六判。

税務署のための帳簿ではなく、企業運営のための帳簿をつくって、正確にお金の管理をして、ビジネスをしていきましょうといった内容。

副題的にタイトルの前に「あなたの会社にお金が残る」と書かれている。

2005年2月には『図解 裏帳簿のススメ』も刊行されている。

感想

なかなか刺激的なタイトルではあるが、概要にも記載した通り、間違いの無い企業運営をするために、もうひとつの役立つ帳簿をつくりましょう、といった内容の本。

攻めの姿勢ではなく、守りも重視した基本的な態度である。その理由は、父親の人生にある。

その逸話が、なかなか生々しくて記憶に残る。

親分肌で商才もある人物だった父親。攻めの姿勢。だが最終的に多くの事業の保証人になったことから、全てを失ったというエピソード。

「エピローグ」で語られるものである。

以下、引用などをしながら紹介。

いま、中小企業が手にしている「決算書」は税務署用のものだ。なぜかそれですべてが通用している。銀行も税務署用の決算書を提出してもらって融資を決めている。(P.37:第1章 表の決算書は疫病神!お金が残る「裏帳簿」で勝負しろ!!)

その決算書に出ている利益というものは、実際の利益ではない。

「税金を払うために計算した数字」でしかない。といった結論になる。

決算書は、税務署に提出するためのフォーマットで出来ている。

企業経営に必要な情報がまとめられたものではない。

となると、自社の経営のために役立つ決算書が必要となる。それが、この本で言うところの裏帳簿。

そこで、この本では、会計事務所が作る「税務署用役に立たない決算書」を「表帳簿」。
そして、これから作成していく「私たちのための経営に役立つ決算書」を「裏帳簿」と呼んでいく。(P.51:第1章 表の決算書は疫病神!お金が残る「裏帳簿」で勝負しろ!!)

ここで、裏帳簿の定義を明確にしている。

ちょっと中二病っぽい感じがしているけれど。まぁ、その辺りは、ご愛嬌といった感じか。

ただ、この視点は、さまざまなビジネスでも応用できるかもしれない。

あらゆる行政や取引先の決められた提出書類のフォーマット。

提出用は、もちろん、手続きのためにルールに沿って記載して相手に送る。

そこから何かの分析や判断が必要な場合には、別のフォーマットというか、改変して、自分にもしくは自社に必要なデータを加えたり、不要なものを削除して利用も可能ということ。

ある300億円企業の社長は、いまでも25日の支払日には請求書のすべてに目を通している。経常的な経費は一覧表で、特別な支出は請求書の現物ですべてを確認している。(P.57:第2章 儲かる会社、お金が残る会社は、「数字の意味」を知っている!)

300億円の企業の社長でも、細かくお金の出入りをチェックしている人物がいる。

現場の感覚を失わないように、明細で確認するというもの。現場に行くことよりも、請求書の一覧をチェックする方が、効率的なのかもしれない。

ただ、上記の引用は、そこまでする人は少ないということの表れでもある。

私の経営する会計事務所では、お客さまの申告書を作って算出した「納税額」という数字を「お客さまの痛み」と定義づけしている。こういう「意味づけ」をしておかないと、社員にとって「納税額」は「計算した数字」でしかなくなる。(P.74:第2章 儲かる会社、お金が残る会社は、「数字の意味」を知っている!)

この考え方はとても素晴らしい。お客さま側の視点である。

そのため、著者の経営する会計事務所では、数カ月前から準備して、お客さまの資金繰りに配慮する。

決算の二カ月前、つまり納付の四カ月前にお知らせする、とか。

こういったアプローチがビジネスでの成功の秘訣かもしれない。

顧客への配慮。思いやり。

後半はかなり、数字の細かい話や項目の話に入っていく。自社のための数字を、明確に活用しようというもの。

なかなか勉強になったけれど、理解できない部分も多数。税金や会計の知識をもっと増やしていかなければいけないと思った。

企業経営や個人事業、フリーナンスに興味のある人や、会計、決算書などに関心のある人には、非常にオススメの本である。

書籍紹介

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