『会社の数字がカラダでわかる!会計するカラダのススメ』岡本吏郎

岡本吏郎の略歴

岡本吏郎(おかもと・しろう、1961年~)
税理士、経営コンサルタント。
新潟県の生まれ。明治大学商学部を卒業。金融機関の勤務を経て独立。

『会社の数字がカラダでわかる!会計するカラダのススメ』の目次

はじめに――日本中の会計難民の方々へ
第1章 カラダを使わずに何を使う…
会計は肉体的だ
経営者Aの迷走
経営者Bの腹の中
経営者Aの迷走②
経営者Bの腹の中②
「会計」という幻想
会計は何の役に立っているのか?
会計のルールはマンガ的でもある
基準によって利益が違う
税金のバイアス
再度、経営者Aの苦悩
会計的には何も悪くないじゃないか……
会計的な行動って何なんでしょう?
第2章 もう少しカラダを大切にしたいもんだ…
人間のカラダは弱いのだ
「私は私の身体である」
情報だけの経験
専門家というのがまた「困ったちゃん」なのだ
カラダの疎外
カラダはとても不器用だ
カラダってどうして不平等なの?
「会計」にセンスは必要か?
自分のカラダを丁寧に扱う
第3章 会計するカラダ
「カラダを動かす」も観念
実は私もわからない
月の初めは忙しい
再度、会計とは、何なのか?
まずは、できていないとね……
経営者Bの視点
M1とM2
いかに循環を続けるか
居ても立ってもいられない……
経営者Bが見ているもう一つのメモ
お金の根拠もチェック
COLUMN 資金運用表の使い方
会計がわからないという社長の会社
デューデリ
実査を中心とした経理
次の実査
経理の知識は何もいらない
経費と資産
COLUMN ようこそ会計劇場へ
月末処理だって大したことはない
売掛金の処理
その他の月末処理
最後も実査
話をそらした大事なこと――在庫
経理のもう一つの目的
危うさとはかなさの上で
最終章 会計するアタマ
カラダが温まるとアタマが動く……
とどのつまり
COLUMN 労働分配率は二つに分ける
残念ながら世の中は応用問題
COLUMN シンプルな経営のために
そんなこと言っても応用問題は避けられない
貸借対照表の世界観
再び……
回転率
目の前の問題
誰もが慢心するとひっかかる
マーシャルのK
身体化後の景色
ようこそ会計的思考の世界へ
あとがき

概要

2006年6月10日に第一刷が発行。幻冬舎。206ページ。ソフトカバー。127mm×188mm。四六判。

税理士で経営コンサルタントでもある岡本吏郎が、会計についてカラダで分かるようにまとめあげた作品。具体と抽象を組み合わせながら解説。

上記の通り、4つの章に分かれている。さらに3章、4章には「COLUMN」も挿入されているといった構成。

それぞれの章の初めには、アメリカの社会哲学者であるエリック・ホッファー(Eric Hoffer、1902年~1983年)の言葉が引用されている。

エリック・ホッファーは、正規の教育を受けずに肉体労働などをしながら、社会哲学者となった人物。

20代の後半から労働の合間に図書館へ通って、物理学や数学などを学んだという。『エリック・ホッファー自伝』『魂の錬金術――エリック・ホッファー』など関連著作の日本語訳も多数ある。

感想

ポップな文体で具体例や抽象的な観念の説明も交えながら、会社の会計についての説明をしていく本書。

注釈については、ページの下部に適宜、配置されている。

やはり、この著作も好き嫌いが分かれやすい。

文章も、表紙の絵も、挿絵も、内容も。サラッと確認してから購入するのがオススメである。

通常的な会計の知識を整理したい人は、別の書物を選んだ方が良いかもしれない。

会計の概要や輪郭を、一般的な感じではなく、ちょっと違った角度で、掴んでみたいという人に最適かも。

以下、引用しながら解説。ただし、会計的な部分に関しては、説明等が長くなってしまうため、省略。

「身に付く」という言葉と「頭でわかる」という言葉を並べてみたら、「頭でわかる」という言葉は、何て軽いのだろうか。(P.55「第2章 もう少しカラダを大切にしたいもんだ…」)

会計の知識と交えて、身体で学ぶというか、身体で知識を得るということについて重要視する。

現象学で有名なフランスの哲学者であるモーリス・メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty、1908年~1961年)。

臨済宗の開祖である栄西(えいさい、1141年~1215年)の“心身一如”(しんしんいちにょ)などが引き合いに出される。

単なる情報として頭に入れるのではなく、実行に移せるように、知識として身に付けるように、といった感じ。

港湾労働者として働きながら哲学をしたエリック・ホッファーも言っている。
「観念と行動が直接的に結びつくのは希である」(P.83「第3章 会計するカラダ」)

さらに、エリック・ホッファーの言葉を引用して、行動があまり実行されないことについて言及。

本を読んでも、実行しない人が多いと、よく言われているが、同じことである。

自分も気を付けないといけない部分ではある。

複雑になってくると直感的な判断が難しくなる。何でもそうだが、「わかる範囲内」でやることは決して恥ずかしいことではない。それは、大変勇気のいることだ。(P.188「最終章 会計するアタマ」)

ここでは、貸借対照表に関して。

初心者は意外と基礎問題を軽視して、好んで応用問題に挑んでしまいがちであるが、シンプルに基礎を固めなさいというもの。

会計に関しても、複雑化してしまうことが多いが、自分の分かる範囲で、単純に基本に忠実に、貸借対照表を作っていくことを推奨。

複雑であることに敏感であれ、とも。

結論としては、“会計するカラダ”を実行して、貸借対照表を小さくする。コストを下げて、利益率を上げる。というもの。

具体的に知りたい方は、本書を読んで実行してもらいたい。

岡本吏郎のファンや新しい視点で会計について知りたい人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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