『リーダーの教養書』幻冬舎文庫

『リーダーの教養書』の目次

序文 日米エリートの差は教養の差だ 佐々木紀彦
対談 なぜ教養が必要なのか? 出口治明 楠木建
教養書120
歴史 出口治明
経営と教養 楠木建
経済学 大竹文雄
リーダーシップ 岡島悦子
日本近現代史 猪瀬直樹
進化生物学 長谷川眞理子
コンピュータサイエンス 中島聡
医学 大室正志
哲学 岡本裕一朗
宗教 上田紀行
おわりに 「日本3.0」の時代を生き抜くために
解説 箕輪厚介

概要

2019年6月11日に第一刷が発行。幻冬舎文庫。246ページ。

さまざまな分野で活躍する人達の推薦図書を紹介する内容。News Picks Bookの第一弾でもある。

2017年4月27日に幻冬舎から刊行された単行本を文庫化したもの。

推薦図書を紹介するの以下の人物たち。

出口治明(でぐち・はるあき、1948年~)…実業家、ライフネット生命保険の創業者。三重県津市の生まれ。三重県立上野高等学校、京都大学法学部(専攻:憲法)を卒業。日本生命保険相互会社に勤務し、ロンドン現地法人の社長、国際業務部長などを歴任。退社後にライフネット生命保険を設立。

楠木建(くすのき・けん、1964年~)…経営学者。東京都目黒区生まれ。幼少期に南アフリカ共和国のヨハネスブルグで過ごす。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院商学研究科修士課程を修了。

岡島悦子(おかじま・えつこ)…人材コンサルタント。筑波大学国際関係学類を卒業。ハーバード大学経営大学院修士課程を修了。三菱商事、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社の事業立ち上げに参画し、後に独立。

猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)…作家。長野県飯山市生まれ、長野市育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科卒業。明治大学大学院政治経済学研究科を修了。1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

中島聡(なかじま・さとし、1960年~)…コンピュータ技術者、ITエンジニア、起業家。早稲田大学高等学院、早稲田大学理工学部電子通信学科、早稲田大学大学院理工学研究科を卒業。NTTに入社、後にマイクロソフトの日本法人に入社。マウスの「右クリック」「ドラッグ&ドロップ」「ダブルクリック」などの概念を生み出した元マイクロソフトの伝説のプログラマー。

大竹文雄(おおたけ・ふみお、1961年~)…経済学者。京都府宇治市の出身。京都府立東宇治高等学校、京都大学経済学部経済学科を卒業。大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程を修了、後期課程を退学、後に修了。

長谷川眞理子(はせがわ・まりこ、1952年~)…人類学者。東京都の出身。東京学芸大学付属高等学校、東京大学理学部生物学科を卒業。東京大学大学院理学系研究科人類学専門課程を単位取得退学、後に修了。

森田真生(もりた・まさお、1985年~)…数学の研究者。東京都の出身。幼少期にアメリカのシカゴで過ごす。桐朋中学校・高等学校、東京大学理学部数学科を卒業。2016年に『数学する身体』で小林秀雄賞を受賞。

大室正志(おおむろ・まさし、1978年~)…産業医。山梨県の生まれ。産業医科大学医学部異学科を卒業。都内の研修病院勤務を経て、産業医科大学産業医実務研修センター、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医を経験。

岡本裕一朗(おかもと・ゆういちろう、1954年~)…哲学者、倫理学者。福岡県の生まれ。山口大学文理学部哲学・倫理学を卒業。九州大学大学院文学研究科博士課程を満期退学。

上田紀行(うえだ・のりゆき、1958年~)…文化人類学者。東京都の出身。筑波大学附属駒場高等学校、東京大学教養学部文化人類学科を卒業。東京大学大学院総合文化研究科文化人類学専攻博士課程を単位取得退学、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程を修了。

News Picks Bookの企画者の二人はこちら。

佐々木紀彦(ささき・のりひこ、1979年~)…編集者、ジャーナリスト。福岡県北九州市の出身。福岡県小倉高等学校、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。東洋経済新報社の勤務を経て、スタンフォード大学大学院を修了。

箕輪厚介(みのわ・こうすけ、1985年~)…編集者、実業家。東京都の出身。芝中学校・高等学校、早稲田大学第一文学部を卒業。双葉社を経て、幻冬舎に勤務。

佐々木紀彦が序文、箕輪厚介が解説を書いている。

感想

楠木建『戦略的読書日記』を読んで、さらに本の紹介がされている書籍を読もうと思って、読み始めた。

知らない人や知らない本も多かったので、かなり参考になった。

あとは、ニューズピックスの本の企画の第一弾というのも知らなかったので、驚いた。

いろいろな本が紹介されていたので、今後の読書のレパートリーにも入れておいた。

ちなみに、新しい興味のある本などは、Amazonのほしいものリストに、どんどん入れていくという方法。

以下、引用しながら紹介。

例えば、僕は『フランス革命の省察』を書いたエドマンド・バークの保守主義からは大いに学ぶことがあると思っている。彼が言ったことは、要するに「人間はアホだ」ということなのだ。(No.510「歴史 出口治明」)

エドマンド・バーク(Edmund Burke、1729年~1797年)…アイルランド生まれのイギリスの政治思想家、哲学者、政治家。「保守思想の父」として知られる。

読書家で歴史にも造詣の深い出口治明の章。

さらに、歴史と人類についての考察が続く。

つまり、人間というのは基本的にアホな動物である、という認識を持つことは、ひとつの知恵である、というもの。

また、ビジネスへの応用も。

ビジネスは結局のところ、人間に関わっている営みである。

そのため、人間に対する洞察や理解が必要。

だからこそ、歴史から学ぶということが大切であるという主旨。

日本人は日本人の文体で日本人の日常性の中にあるものから言葉を編んでいくが、三島の場合はそれを外国語に翻訳したときにどういう状態になっているかということから逆に日本語をつくっていく。(No.1445「日本近現代史 猪瀬直樹」)

三島由紀夫(みしま・ゆきお、1925年~1970年)…小説家。東京生まれ。東京大学法学部法律学科卒業。本名は、平岡公威(ひらおか・きみたけ)。

ヨーロッパ近代が、世界の基準である、と考えていた三島由紀夫。

そういったことから、日本語を外国語に翻訳した場合に、どのようなものになるのかを前提として、文章を書いていた。

だからこそ、現代でも三島由紀夫の作品は、西洋で翻訳として読まれているという、猪瀬直樹の主張。

もともと、三島由紀夫は、英語などに翻訳されることを想定して、日本語の文章を書いていた。

どれだけ賢いんだ。

猪瀬直樹は、三島由紀夫を他の文学者とはレベルの違う天才であると、絶賛している。

確かに、次元が違い過ぎる。

生物の進化は、偶発的に生じた突然変異と、どんな遺伝子がより多く選ばれるか、つまり複製率の差異という二つの要素の結果でしかない。そこに目的や意志は存在せず、その意志なき進化によってこそ強力な繁栄をもたらす。(No.1486「進化生物学 長谷川眞理子」)

偶発的な突然変異と複製率の差異、という二つの要素の結果が、生物の進化であるというもの。

しかも、目的や意志は、存在しない。

偶然と確率。

目的や意志がないから、より強力な繁栄となる。

人間も単なる生物でしかないわけで。なかなかの真理である。

また続いて、文字の話も。

人類の歴史は600万年。文字を使う文明が生まれたのは、5400年前くらいの話。

人類の歴史に比べたら、文字の歴史は、ほんのわずかでしかないというもの。

これも、考えさせられる部分である。

さらに、アメリカの心理学者であるスティーブン・ピンカー(Steven Arthur Pinker、1954年~)の『暴力の人類史』を推薦図書として挙げている。

実業家のビル・ゲイツ(William Henry “Bill” Gates III、1955年~)も絶賛している本である。

この本も読んでみようと思う。

細菌は自己増殖できるが、ウイルスは自己増殖できない。ウイルスは、それ自体だけではたんぱく質でコーティングされた遺伝情報に過ぎない“メモリースティック”と同じようなもので、特定の“読み込み主体”に付着して初めて増殖できる。(No.1844「医学 大室正志」)

細菌(bacteria)とウイルス(virus)の違い。

なるほど。分かりやすい。ウイルスは、宿主が必要となる。

さらに産業医であるということから、死生観というか、重要な決断の話に。

生死にかかわる病気であれば、人はそれほど簡単には決められないはずだ。しかも、生死の境にいる場合には、そのような重大な判断をできる精神状況にはないことも多い。つまり、われわれは精神的に物事を決断するのに最も向いていないコンディションのときにこそ、最も難しい判断を迫られるのだ。(No.1941「医学 大室正志」)

ハーバード大学医学部の教授であるJerome Groopmanと准教授であるPamela Hartzbandによって書かれたルポタージュ『決められない患者たち』を紹介する大室正志。

重要な決断を、非常に不安定な精神状態で、しなければならない患者たち。

いやいや、そりゃ、決断できないでしょ、と。

こういったことを、読書で疑似体験して、考えておくのも、ささやかな準備というか、対策なのかもしれない。

その他にも多くの本が多岐にわたって紹介されているので、読書好きな人には非常にオススメの作品である。

書籍紹介

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