『人生の教養が身につく名言集』出口治明

出口治明の略歴

出口治明(でぐち・はるあき、1948年~)
実業家、ライフネット生命保険の創業者。
三重県津市の生まれ。三重県立上野高等学校、京都大学法学部(専攻:憲法)を卒業。日本生命保険相互会社に勤務し、ロンドン現地法人の社長、国際業務部長などを歴任。退社後にライフネット生命保険を設立。読書家としても知られる。

『人生の教養が身につく名言集』の目次

はじめに 名言を知る――人生を「図太く、賢く、面白く」生きる法
1章 人生について考えが深まる名言集
不幸を遠ざける「考え方」をする――ダンテ・アリギエーリ
左遷されたおかげで、さらに「考える力」がついた
ムダな苦しみを消す、ダンテの「この一言」
「偶然」を大切にする人を運がいいと呼ぶ――マルティン・ブーバー
「適切なときに適切な場所にいる」人
どんなときでも「人生を楽しめる」言葉
人生の楽しみは「喜怒哀楽の総量」――ヘロドトス
「幸福問答」――一番の幸せ者とは?
「ああ、いい人生だったな」と思うコツ
よく笑い、よく眠る。悩みの7割はそれで解決――マーク・トゥエイン
笑いこそ、人間の持つ「唯一、かつ強力な武器」
非常事態ではまず「しっかり眠る」
生きがい――「今の自分ができること」をすること――『列子』
「精神的な満足」は意外に簡単
「山を動かす」唯一の方法
二者択一の連続。それが人生――ウィリアム・シェイクスピア
「不幸を悔やむと、さらなる不幸が来る」
「たら」が好きなら魚屋で買え。「れば」が好きなら肉屋で買え
順調なときこそ「身の丈を知る」――ニザーム・アルムルク
宇宙から見たら、みんな「鍋に浮かぶアクのような存在」
人生「足下をすくわれない」コツ
2章 人間関係の心得を教えてくれる名言集
誰もが、そこそこに善良で、そこそこにずる賢い――ソフォクレス
人間の脳は1万3000年前から進化していない
人間関係が楽になる名言――「まさかのときの友は、本当の友」
「会って別れて」をくり返すのが、人生――孟子
「相手の心に任せる」と、人生、意外にうまくいく
そもそも「思うようにいかない」のが人間関係
人を「鏡」にすると、自分が見えてくる――タレス
自分の顔は見えないが、人の顔ならよく見える
世界帝国を一代で築いた男は「言うこと」が一味違う
「言わなくてもわかる」は、あり得ない――ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
「一言」を怠けるから、人と人は気まずくなる
「不和の女神」を怒らせる人
善人より、じつは悪人のほうが対処しやすい――中野好夫
「自分は善人」と思い込んでいるのが、善人
「無知の善人」は「悪人」より始末が悪い
人生を「面白がる」――范曄
「人生をムダにする言葉」がある
「自分だけでなく天と地が知っている」ことに満足
3章 読むだけで「考える力」がつく名言集
「本当にそうだろうか?」――この一言で考えが深くなる――カール・マルクス
「ロクな候補者がいないから投票しない」は、なぜ愚かな考えなのか?
思い込みを一気に排除する法
「国語」で考えるな。「算数」で考えろ――アルフレート・ヴェーゲナー
「国語で考える」と現実が見えなくなる?
「算数で考える」とリスクとコストに変わる
「何が枝葉で、何が幹か」を考えよう――高坂正堯
「和歌で詠まれた桜」はソメイヨシノ? 山桜?
「よく考えられた資料」ほど、シンプルで短くなる
「見えないことが見えてくる」縦横思考法――イブン・ハルドゥーン
「過去のインパクトを組み合わせる」坂本龍一さんの作曲法
知識が一気に増える「時間軸と空間軸で考える」法
決められないのは、考えきっていないから――李世民
「岩盤まで掘り下げて考える」習慣
それでも迷うなら「最後は10円玉で決めればいい」
読書の質は「アウトプット」で決まる――山本義隆
自分の言葉で、自分の意見を言う力
ドラッカーを読んで効果のある人、ない人
大切なことは「世界を変えること」――カール・マルクス
一生、空に困らない方法は、いくらでもある
歴史を知ると「失敗が怖くなくなる」
4章 より賢く生きるための名言集
人生後半、やりたいことがある人は本当に強い――ココ・シャネル
「これをやりたい」という強い思いがあると、人は簡単に死なない
1つ学べば、人生がまた1つシンプルになる
偉人と「会って話を聞く」――アナトール・フランス
誰にも邪魔されずに「リンカーン大統領と話す法」
人生をより賢く生きたければ、本と接すること
ゼロから勉強しない。巨人の肩を借りる――ベルナール・ド・シャルトル
「何百年もかけて読み継がれてきた古典」の味わい方
「古典」を読むと「現代」がもっとよくわかる!
思考力を鍛える「1行の読み方」――ミシェル・ド・モンテーニュ
速読は、著者に対して失礼
「本から教えてもらう」という姿勢で読む
経験の差が結局、人生の差――エドマンド・バーク
若い人の意見を聞かない年寄りは、必ず失敗する
自由、平等、友愛――頭だけで考えたものはうまくいかない
人は「旅から学ぶ」――ルネ・デカルト
かつてのヨーロッパでは旅は必修科目
人生において仕事の占める割合は、しょせん3割
ひとつ上の「旅の愉しみ方」――マルセル・プルースト
日本の常識は世界の非常識――複眼的にものが見える瞬間
いい旅は、必ず「その人の人生観」を変える
迷ったら、やってみる――井伊直弼
人生から後悔をなくす考え方
こんなときは「迷ったら、やらない」
5章 「仕事の極意」を教えてくれる名言集
仕事は人生を楽しめてこそ、がんばれる――ウマル・ハイヤーム
人生は7割が充実すれば、それで十分
つねに「最短の方法」を考える――人生を楽しむ極意
腹落ちするまで考え抜く。それがビジネス――古代ローマのことわざ
「P」を考える――仕事をしっかり軌道に乗せるコツ
後継者に自分とまったく違うタイプを選ぶ――カエサルの度量
人はあなたの「言葉」ではなく「行動」を見ている――『イソップ物語』
人は、自分のために時間を使う人に愛着を持つ
行動しないのは「本気でない」ということ
相手に多くを期待しない――ジェームズ・ジョージ・フレイザー
「部下の30%の力をまず33%にする」のが上司の仕事
「社員の2割がサボる」のは、正常な会社の証拠?
仕事は、怒ったら負け――ムハンマド
イスラムの開祖・ムハンマドの「極めて高い感情自制能力」
「激怒の3乗」くらいの激しい怒りをも鎮める法
強さとは、多様性を受け入れるか、どうか――狄仁傑
世界帝国を実現したクビライの「多様性を柔軟に受け入れる能力」
「自分の薬箱には多種多様な薬がある」という自身
撤退するのも、1つの能力――桓寛
人を追いつめない。痛い目に遭うのは自分
「相手が謝ったら、それ以上責めない」が基本
先延ばしにした瞬間、運命の女神は逃げていく――ニッコロ・マキャベリ
人生も仕事も「タイミング」――ツキを確実につかむ法
運命の女神は、準備している者だけに微笑む
リーダーに必要なのは「強い思い」と「算数」――二宮尊徳
「道徳のない経済」は犯罪である!
「夢」を語っているつもりで「寝言」を言っていないか
6章 「生きる知恵」を教えてくれる名言集
人生の伴侶とは「自分が泳ぐ川」のようなもの――マイケル・オンダーチェ
パートナーの条件――相手がさらけ出したものを受け入れられる?
ある意味「家庭」より「職場」のほうが気が楽
恋愛は人間力を鍛える、またとないチャンス――フリードリヒ・ニーチェ
女性にはモテなかったニーチェの「すごい恋愛論」
いいパートナーになりたければ、会話学校に行くといい
人間はそもそも孤独。それを忘れると弱くなる――一遍上人
「子どもが成長したら、巣から追い出す」のが動物の自然な姿
誰かと一緒に暮らしていても、じつは独り
還暦過ぎて生きているのは、まさに文明の力――本川達雄
歯がなくなっても生きていける動物は、人間だけ
高齢者の生きる意味――経験と知識を次の世代に役立てる
人生の閉じ方を考えると、新しい人生が見えてくる――C・S・ルイス
「毎年、遺言状を書く」と残された人生が見えてくる
「ここから、わたしひとりでまいります」という騎士道精神
人生におけるお金は、人生の養分――フランシス・ベーコン
「幸せなお金とのつき合い方」は、年齢とともに変わる
お金は使わなければ、ただの紙切れ
自然と頭をつかう。自然と体を使う――レオナルド・ダ・ヴィンチ
使いさえすれば、鉄も体も頭も錆びない
「仕事の引き際」を受け入れる法
ほろ酔い程度の酒は、人生において大いに興趣がある――洪自誠
マルクスとレーニンばかり読んでいたから、ソ連は崩壊した?
酒の飲み方にも、グローバルスタンダードが必要
編集後記

概要

2016年7月13日に第一刷が発行。三笠書房。293ページ。

読書家としても有名な実業家の出口治明が古今東西の名言を紹介。人生を「図太く、賢く、面白く」生きる法を名言から学べる内容。

表紙には、The Inspirational Quotes on Wisdom of Lifeという文章も。

「心を揺さぶる人生の知恵の引用句」といった感じか。

以下、目次に掲載された人物や書物の概要。

ダンテ・アリギエーリ(Dante Alighieri、1265年~1321年)…イタリア都市国家フィレンツェ出身の詩人、哲学者、政治家。叙事詩『神曲』が有名。

マルティン・ブーバー(Martin Buber、1878年~1965年)…オーストリア出身のユダヤ系宗教哲学者、社会学者。著作に『我と汝・対話』など。

ヘロドトス(Herodotus、前484年頃~前425年頃)は、古代ギリシアの歴史家。著作に『歴史』

マーク・トウェイン(Mark Twain、1835年~1910年)…アメリカの作家。著作に『トム・ソーヤーの冒険』『不思議な少年』など。

列子(れっし、生没年不詳)…中国古代の思想家。道家の代表者。名は、禦寇(ぎょこう)。また同名の書物『列子』がある。

ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare、1564年~1616年)…イングランドの劇作家、詩人。著作に『ハムレット』『オセロー』『ロミオとジュリエット』など。

ニザーム・アルムルク(Niẓām al-Mulk、1018年~1092年)…セルジューク朝の政治家、学者。著作に『統治の書』

ソフォクレス(Sophoklēs、前496年頃~前406年頃)…古代ギリシアの詩人。ソポクレトスとも表記。著作に『アンティゴネー』『オイディプス王』など。

孟子(もうし、前372年頃?~前289年頃?)…中国の戦国時代の思想家。名は、孟軻(もうか)。同名の書物『孟子』がある。

タレス(Thalēs、前624年頃~前546年頃)…古代ギリシアの哲学者。タレースとも。ミレトス学派の始祖。関連書籍に『ギリシア哲学者列伝』がある。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe、1749年~1832年)…ドイツの詩人、作家、自然学者。著作に、小説『若きウェルテルの悩み』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』、詩劇『ファウスト』など。

中野好夫(なかの・よしお、1903年~1985年)…英文学者、評論家。愛媛県松山市の生まれ。徳島中学校を中退。第三高等学校、東京帝国大学文学部英文学科を卒業。著作に『悪人礼賛』『シェイクスピアの面白さ』『風前雨後』など。

范曄(はん・よう、398年~445年)…中国の南朝宋の政治家、文学者、歴史家。『後漢書』の作者。

カール・マルクス(Karl Marx、1818年~1883年)…プロイセン王国出身の哲学者、経済学者、革命家。著作に『ヘーゲル法哲学批判序説』『共産党宣言』『資本論』など。

アルフレート・ロータル・ウェーゲナー(Alfred Lothar Wegener、1880年~1930年)…ドイツの気象学者、地球物理学者。著作に『大陸と海洋の起源』

高坂正堯(こうさか・まさたか、1934年~1996年)…国際政治学者、社会科学者、思想家。京都府京都市の出身。京都大学法学部を卒業。著作に『国際政治』『文明が衰亡するとき』『海洋国家日本の構想』など。

イブン・ハルドゥーン(Ibn Khaldun、1332年~1406年)…アラブの歴史家。著作に『歴史序説』など。

坂本龍一(さかもと・りゅういち、1952年~)…作曲家、ピアニスト。東京都中野区の出身。東京都立新宿高等学校、東京芸術大学を卒業。東京芸術大学大学院音響研究科修士課程を修了。

李世民(り・せいみん、598年~649年)…中国の唐朝の第2代の皇帝。廟号は太宗(たいそう)。諸制度を整えて唐朝の基盤を確立し、貞観の治(じょうがんのち)と呼ばれる太平の世を築く。関連書籍に『貞観政要』など。

山本義隆(やまもと・よしたか、1941年~)…自然哲学者、教育者。大阪府の出身。大阪府立大手前高等学校、東京大学理学部物理学科を卒業。東京大学大学院博士課程を中退。著作に『重力と力学的世界』『熱学思想の史的展開』『磁力と重力の発見』など。

ココ・シャネル(Coco Chanel、1883年~1971年)…フランスのファッションデザイナー、企業家。本名は、ガブリエル・ボヌール・シャネル(Gabrielle Bonheur Chanel)。

アナトール・フランス(Anatole France、1844年~1924年)…フランスの詩人、小説家、批評家。ノーベル文学賞の受賞者。著作に『シルヴェストル・ボナールの罪』『神々は渇く』『少年少女』など。

ベルナール・ド・シャルトル(Bernardus Carnotensis、生年不詳~1130年頃)…フランスの哲学者、文法家。

ミシェル・ド・モンテーニュ(Michel Eyquem de Montaigne、1533年~1592年)…フランスの哲学者。著作に『エセー』など。

エドマンド・バーク(Edmund Burke、1729年~1797年)…アイルランド生まれのイギリスの政治思想家、哲学者、政治家。著作に『フランス革命についての省察』『崇高と美の観念の起原』など。

ルネ・デカルト(René Descartes、1596年~1650年)…フランス生まれの哲学者、数学者。合理主義哲学の祖とも。著作に『方法序説』『哲学原理』『情念論』など。

マルセル・プルースト(Valentin Louis Georges Eugène Marcel Proust、1871年~1922年)…フランスの小説家。著作に『失われた時を求めて』など。

井伊直弼(いい・なおすけ、1815年~1860年)…譜代大名。近江国犬上郡(現在の滋賀県彦根市)の生まれ。近江彦根藩の第15代藩主。江戸幕府にて大老を務め、開国派として日米修好通商条約に調印。著作に『茶湯一会集』など。

ウマル・ハイヤーム(Omar Khayyám‎、1048年5月18日~1131年)…セルジューク朝期のペルシアの学者、詩人。著作に『ルバイヤート』など。

『イソップ物語』(Aesop’s Fables)…古代ギリシアの寓話作家・アイソーポス(Aísōpos、前619年~前564年頃)が作ったとされる物語。日本では英語読みで、イソップとして知られる。

ジェームズ・ジョージ・フレイザー(James George Frazer、1854年~1941年)…イギリスの社会人類学者。著作に『金枝篇』など。

ムハンマド(Muḥammad、570年頃~632年)…イスラム教の預言者。関連書籍に『預言者ムハンマド伝』など。

狄仁傑(てき・じんけつ、630年~700年)…中国の唐代の政治家。

桓寛(かん・かん、生没年不詳)…中国の前漢の政治家、学者。著作に『塩鉄論』

ニッコロ・マキャベリ(Niccolò Machiavelli、1469年~1527年)…イタリア、ルネサンス期の政治思想家、フィレンツェ共和国の外交官。著作に『君主論』など。

二宮尊徳(にのみや・そんとく、1787年~1856年)…経世家、農政家、思想家。相模国足柄上郡栢山村(現在の神奈川県小田原市栢山)の生まれ。関連書籍に『報徳記』

マイケル・オンダーチェ(Michael Ondaatje、1943年~)…スリランカ生まれのカナダの詩人、小説家。著作に『イギリス人の患者』『戦下の淡き光』など。

フリードリヒ・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche、1844年~1900年)…ドイツ・プロイセン王国出身の思想家、古典文献学者。著作に『ツァラトゥストラ』『善悪の彼岸』『道徳の系譜学』など。

一遍(いっぺん、1239年~1289年)…僧侶、時宗の開祖。伊予国(愛媛県)の生まれ。一遍上人、遊行上人、捨聖とも呼ばれる。関連書籍に『一遍上人語録』など。

本川達雄(もとかわ・たつお、1948年~)…生物学者。宮崎県仙台市の生まれ。宮崎県仙台第一高等学校、東京大学理学部生物学科(動物学)を卒業。著作に『ゾウの時間 ネズミの時間』『生物多様性』など。

C・S・ルイス(Clive Staples Lewis、1898年~1963年)…アイルランド系のイギリスの作家、学者。著作に『ナルニア国物語』『悪魔の手紙』など。

フランシス・ベーコン(Francis Bacon、1561年~1626年)…イギリスの哲学者、法学者、政治家。「知識は力なり」(Ipsa scientia potestas est)の名言や、「イドラ」の概念で有名。著作に『学問の進歩』『ニュー・アトランティス』『ノヴム・オルガヌム』など。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci、1452年~1519年)…フィレンツェ共和国(現在のイタリア)の芸術家、学者。著作に『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記 』など。関連書籍に『レオナルド・ダ・ヴィンチ』など。

洪自誠(こう・じせい、生没年未詳)は、中国の明代の著作家。著作に『菜根譚』など。

編集後記は、編集者の前嶋裕紀子(まえじま・ゆきこ)。

感想

読書家界隈でも有名な出口治明。ライフネット生命保険を設立したことでも知られている。

合理的に最短距離で仕事を終わらせて、読書や旅、人との交流に勤しんでいる人物。

kindle unlimited『人生の教養が身につく名言集』を読む。

文章も読みやすくリズミカルである。さすが読書家である。

広範な読書領域、そして分析や解釈が的確で、非常に示唆に富んでいる作品。

もっと著者の作品を読んでみたくなる。

以下、引用などをしながら紹介。

「歴史」を知ることで、世の中のリアルな事実(ファクト)が見えてくるようになる。その結果、「私は出世し続ける」といったあり得ない幻想と、現実の齟齬に苦しめられることがなくなっただけの話です。(P.27:ムダな苦しみを消す、ダンテの「この一言」)

理想と現実で苦しんでしまう人もいる。

そのような時に必要なのが、事実の認識。その事実の認識を得るためには、歴史を学んで事実を知る。

会社員としても優秀であった出口治明。だが、出世し続けることは不可能であると気付く。

歴史を学べば、自分で体験しなくても、経験を積むことや、思考のヒントを得られる。

無駄な悩みや苦しみもなくなるというもの。

つまりは、快適に生きられる。歴史を学ぶのは大切である。

「『愚痴を言う』『他人を妬む』『誰かに評価して欲しいと願う』……、人生をムダにしたければ、この3つをどうぞ」(『多眼思考』/大和書房)
(P.39:「ああ、いい人生だったな」と思うコツ)

さまざまな偉人たちの言葉も登場してくるが、現代の人物たちの言葉も多々出てくるのも面白い。

これは、著述家ちきりんの本からの引用。

とてもシンプルにまとめられた「人生をムダにする」方法である。

自分の仕事や生活に集中すれば良いということ。

上記の3つは、それぞれ他者とのマイナスの関わり方である。少なくとも、社会で生きるのは他者との関係性は必須。

ただ、そこに自己の物差しをしっかりと持って対応していくことが重要である。

そのタレスには、「『なにが困難なことか?』と問われて、『自己自身を知ること』と答え、『何が容易なことか?』と問われて、『他人に忠告すること』と答えた」という有名なエピソードが残されています。(P.75:自分の顔は見えないが、人の顔ならよく見える)

古代ギリシアの哲学者、七賢人の一人とも言われているタレスの言葉。

難しいのは、自分を知ること。

簡単なのは、他者に助言すること。

いやはや、2500年くらい時代を経ても、人間は進歩しないものである。

これがまさに歴史から学べることでもある。

コミュニケーションをサボらない、手を抜かない。
「言わなくてもわかってもらえる」という幻想は捨て、誤解が生じないようにきちんと言葉で丁寧に伝えていく。(P.83:「不和の女神」を怒らせる人)

ここでは、ギリシア神話のエピソードなども出てくるところ。

謝罪の言葉や、ちょっとした一言が足りないだけで、大きく歴史が変わってしまう。

これは、日常生活でも同様。

コミュニケーションのコストをしっかりと払うことが大切。

仕事などでも、説明不足からのトラブルなどが多くあるように思える。

自分の仕事でも、丁寧な説明を心掛けていこうと改めて思う。

もっと言えば、私はこれまでにたくさん歴史の本を読んできたので、あまり失敗が怖くないのです。
なぜなら、人間の歴史を見ると、人間が望んだことの99%以上はじつは実現していないのです。
つまり、ほとんどの人が失敗をする。(P.132:歴史を知ると「失敗が怖くなくなる」)

失敗をしないことに越したことはない。

ただ、基本的には失敗を前提にするくらいが丁度良い。

というのも、ほとんどのことは失敗になってしまうから。

政治家で早稲田大学の創設者の大隈重信(おおくま・しげのぶ、1838年~1922年)も、失敗は必ずするから、失敗にへこたれるな、といった主旨の発言をしている。

この精神姿勢は大切である。

あるいは、その後の対策や代替案を、準備しておくこと。

ライフネット生命を起業してからは忙しくて、週に3~4冊くらいしか読めないのですが、それ以前は、高校生のころから週に10冊前後は読んでいました。(P.143:誰にも邪魔されずに「リンカーン大統領と話す法」)

「忙しい」から「週に3~4冊」しか読めない。

この文章の凄さ。

また、高校生の頃から、週に10冊前後を読んでいたという話。

京都大学に現役で合格できるくらいの賢さを持っている出口治明の発言なので、一般人としては割り引かないといけない部分ではあるが。

社会人で、出口治明よりも忙しい人は、そんなにいないだろう。

では、出口治明よりも忙しくはない人たちの中で、本を週に3~4冊、読んでいる人は、どれくらいだろうか。

かなり少ない人数だろうな。

本好きの自分でも、現在は週に2~3冊といった感じか。

そもそも、高校生の頃から週に10冊くらいは読んでいたのも凄い。

月に40冊。年に480冊。ざっくり、年間500冊くらいは読んでいたということか。

しかも、ずっと。

確か、速読とかにも否定的だけれど、そもそも、出口治明のスペックであれば、通常の人よりも、結果的に物凄い速度で読んでいるんだろうけれど。

自分もガンガン読みたい本を読んでいこうと思う。

かなり、広範なジャンルからの名言が採用されているので、いろいろな立場の人たちにも、それぞれ刺さる言葉があると思う。

歴史や文学、芸術などが好きな人や、言葉や名言が好きな人などには非常にオススメの本である。

書籍紹介

関連書籍