- 自分の人生を自分で選ぶ
- 準備と自立の重要性
- 生き延びる覚悟
- 後悔しない選択
高橋弘樹の略歴・経歴
高橋弘樹(たかはし・ひろき、1981年~)
映像ディレクター。
東京都江東区の出身。攻玉社中学校・高等学校、早稲田大学政治経済学部を卒業。2005年にテレビ東京に入社、2023年に退職し、フリーに。
『なんで会社辞めたんですか?』の目次
まえがき
佐久間宣行(番組プロデューサー)45歳でテレビ東京を辞めました。
将来の生活設計は早めに済ませて、会社を辞めてもやっていける“腕”を作る!
野口聡一(宇宙飛行士)57歳でJAXA(宇宙航空研究開発機構)を辞めました。
組織という名の“糸”を自ら断ち切って、自分自身でアイデンティティーを築く意志を持つ!
後藤達也(経済ジャーナリスト)41歳で日本経済新聞社を辞めました。
組織に残って“茹でガエル”になるより自分の興味が湧くことに挑戦し続けたい
竹中平蔵(経済学者)71歳でパソナグループを辞めました。
まずは自分がやりたい方向を見つけて、その方向に合った人生を選択する
安田秀一(実業家)52歳でドーム(アンダーアーマー日本総代理店)を辞めました
資本主義の最前線で戦ったから分かった個の幸せを追求することの大切さ
角幡唯介(探検家・作家)32歳で朝日新聞社を辞めました。
死ぬ時に後悔したくないから自分以外の価値観で人生を決めたくない
あとがき
『なんで会社辞めたんですか?』の概要・内容
2023年3月27日に第一刷が発行。発売は講談社。発行は東京ニュース通信社。229ページ。ソフトカバー。127mm✕188mm。四六判。
表紙には副題的に「経験者たちのリアルボイス」と記載。
以下、人物たちの紹介。
佐久間宣行(さくま・のぶゆき、1975年~)
番組プロデューサー。
福島県いわき市の出身。福島県立磐城高等学校、早稲田大学商学部を卒業。
1999年にテレビ東京に入社、2021年に退社してフリーに。
野口聡一(のぐち・そういち、1965年~)
宇宙飛行士。
神奈川県横浜市の生まれ。兵庫県揖保郡太子町、神奈川県茅ヶ崎市の育ち。神奈川県立茅ケ崎北陵高等学校、東京大学工学部航空学科を卒業、東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程を修了。石川島播磨重工業(現:IHI)において航空技術者として超音速旅客機のエンジン開発に従事。1996年に宇宙飛行士候補者に選定される。
後藤達也(ごとう・たつや、1980年~)
経済ジャーナリスト。
慶應義塾大学経済学部を卒業。2004年に日本経済新聞社に入社し、2022年に退社してフリーに。
竹中平蔵(たけなか・へいぞう、1951年~)
経済学者。
和歌山県和歌山市の出身。和歌山市立西和中学校、和歌山県立桐蔭高等学校、一橋大学経済学部を卒業。日本開発銀行、設備投資研究所、ハーバード大学、ペンシルベニア大学客員研究員、大蔵省財政金融研究室などを経る。
安田秀一(やすだ・しゅういち、1969年~)
実業家。
東京都の出身。法政二高、法政大学文学部日本文学科を卒業。三菱商事を経て、友人と株式会社ドームを創業。
角幡唯介(かくはた・ゆうすけ、1976年~)
探検家、作家。
北海道芦別市の出身。函館ラ・サール高等学校、早稲田大学政治経済学部を卒業。2003年に朝日新聞社に入社し、2008年に退社。
2010年、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で第8回開高健ノンフィクション賞を受賞。
2011年、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で第42回大宅壮一ノンフィクション賞、第1回梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。
2012年、『雪男は向こうからやってきた』で第31回新田次郎文学賞を受賞。
2013年、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞。
2015年、『探検家の日々本本』で第69回毎日出版文化賞書評賞を受賞。
2018年、『極夜行』で「Yahoo!ニュース 本屋大賞2018年ノンフィクション本大賞」、大佛次郎賞を受賞。
『なんで会社辞めたんですか?』の要約・感想
- 自分の人生を取り戻すための選択:『なんで会社辞めたんですか?』を読む
- 会社を辞めるという選択のリアル
- 泥臭く働くことの意味:佐久間宣行の仕事観
- 生き延びるために選んだ道:野口聡一の宇宙と人生観
- 「後悔しない人生」を選ぶ:角幡唯介の探検精神
- 現代を生きる私たちへのメッセージ
- 「辞めた人たち」は何に気づいたのか
- 本書の読みどころとおすすめの読み方
- まとめ:自分の人生をどう選ぶか?
自分の人生を取り戻すための選択:『なんで会社辞めたんですか?』を読む
もともとYouTubeで佐久間宣行の回は観ていたし、活字でしっかりと読み直したいし、他の人物たちも気になったので、手に取った本。読み進めるうちに、「会社を辞める」という一見ネガティブに捉えられがちな行動が、実はポジティブな意思表示であり、戦略的な選択なのだということが見えてきました。本書はさまざまな分野で活躍してきた6人の人物が、自らの意志で組織を離れた理由と、その後の人生を語るインタビュー集です。
会社を辞めるという選択のリアル
本書で取り上げられているのは、テレビプロデューサー、宇宙飛行士、経済ジャーナリスト、経済学者、実業家、探検家といった、全く異なる職業に就いていた6人の人物たちです。彼らは、長年勤めた組織を辞め、自分の意志で次の道を選びました。
それぞれが口にするのは「自分の人生を生きる」という強い想い。そして共通するのは、組織に依存するのではなく、独立して生き延びるための準備と行動です。
泥臭く働くことの意味:佐久間宣行の仕事観
元テレビ東京プロデューサー・佐久間宣行は、地道で体力勝負の仕事を長年こなしてきた人物です。
俺は最終的に自分の番組は全部編集して完パケ(※完全パッケージ=そのまま放送できるVTR)にする方だったからね。そういう泥臭い部分はあったね、著書(※『佐久間宣行のずるい仕事術』(2022年/ダイヤモンド社))には書いてないけど。(P.30)
こうした泥臭い作業を積み重ねることで信頼と技術を築き上げた彼は、会社に依存せずともやっていける”腕”を手に入れていたのです。実際、奥さんと二人三脚で生活設計を早めに済ませ、堅実な生活をしている様子が語られています。
会社を辞めるというと、リスクばかりが注目されがちですが、佐久間さんのように事前の準備をしっかり整えれば、リスクを減らしながら自立することは可能です。
ちなみに、高橋弘樹にとって、佐久間宣行はテレビ東京時代の先輩である。この関係性も注目のポイント。高橋弘樹も地道な作業を繰り返し、またあまり寝ないという話を聞いたことがあります。さらに高橋弘樹の後輩である上出遼平(かみで・りょうへい、1989年~)との対談動画では、佐久間宣行は全然寝ないといった指摘も。強靭な肉体というか、体力を持っている点は否めません。
生き延びるために選んだ道:野口聡一の宇宙と人生観
宇宙飛行士・野口聡一の話には、命がけで生き抜く覚悟がにじんでいます。
この3つのフェーズにおけるナンバー1プライオリティーは、とにかく生き延びることです。(P.73)
「この3つのフェーズ」とは、打ち上げ、船外活動、帰還のこと。この言葉には深い重みがあります。宇宙での生死を分ける環境を経験した彼だからこそ、「自分で自分の人参(目標)を決める」という発言にも説得力があります。
要するに人参を目指して走っているのは良いことなんですけれど、その人参を他者に決めさせないで、自分で人参を作るということは、非常に大事なことだと思います。(P.81)
組織に依存することなく、自らの人生のハンドルを握ること。これはビジネスマンにも通じる姿勢です。他者に人生の舵を取られるのではなく、自分で目標を定め、その達成のために動くことが、生き延びるための戦略なのです。
生き延びるという趣旨では、上述の佐久間宣行も同様のことを指摘している。他にも、小説家の冲方丁(うぶかた・とう、1977年~)の『生き残る作家、生き残れない作家』や、評論家の中野信子(なかの・のぶこ、1975年~)『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』などでも「生き延びる」には触れられていたことを思い出した。
「後悔しない人生」を選ぶ:角幡唯介の探検精神
生きて帰ってきたことは、もっとできたんじゃないかと思うんです。死んでないですからね。究極の生とは死ぬことだと思うんです。(P.211)
これが、この本の中で一番、鮮烈で記憶に残った部分です。ギリギリまで自分の生命を燃焼させることを表明しています。そして、角幡唯介は、朝日新聞社を辞め、自分の価値観に従って生きる道を選びました。
今まで僕が心がけてきたことは、自分以外の価値観で自分の人生を作り上げないっていうことですからね。自分の内部で育まれた価値観に導かれる形で、次の行動を決めればいいと思います。(P.220)
これは、他人の期待や社会の常識に縛られずに、自分自身の内側にある価値観に従って行動するということ。簡単そうに見えて、現実にはとても難しい選択です。なぜなら、それには経済的な自立が必要だからです。
だからこそ彼は、資本的安定の重要性も示唆しているように感じました。自分らしい生き方をするには、その土台が必要なのです。
現代を生きる私たちへのメッセージ
本書の6人に共通しているのは、「今の自分に満足していなかった」「もっと挑戦したかった」「他人の価値観ではなく自分の信念に従いたかった」という思いです。
特に印象的だったのは、「生き延びる」というキーワード。これは単に命を守るという意味ではなく、組織に飲み込まれず、自分のペースで、納得のいく人生を送るという意味でもあるように思いました。
今の会社に違和感がある人、自分の人生このままでいいのかと感じている人には、本書は大きなヒントになるはずです。
「辞めた人たち」は何に気づいたのか
彼らが共通して語っていたのは「変化を恐れないこと」「他人の価値観に支配されないこと」「自分の強みを磨くこと」でした。中でも印象に残ったのは、以下のようなポイントです。
- 会社にしがみつくのではなく、自分の”腕”で生きる準備をする(佐久間宣行)
- 自分の人生の目標は、自分で決める(野口聡一)
- 自分の価値観に従って行動する(角幡唯介)
これらのメッセージは、ビジネスマンに限らず、すべての働く人々に向けられているものです。
本書の読みどころとおすすめの読み方
本書は対談形式ではなく、インタビューをもとにした語り口調で構成されているため、とても読みやすいです。しかもそれぞれの人物が、自分の言葉で語っているのが印象的で、実感のこもった内容になっています。
興味のある分野の人から読んでもよし、あるいは気になる見出しの章から読んでも問題ありません。何よりも、読んでいて勇気が湧いてくる1冊です。
まとめ:自分の人生をどう選ぶか?
『なんで会社辞めたんですか?』は、キャリアや人生に悩むすべての人にとって、大きなヒントを与えてくれる本です。会社を辞めた6人の言葉からは、仕事を辞めるという行動そのものではなく、「どう生きたいのか」「どうありたいのか」という深い問いが伝わってきます。
今の働き方にモヤモヤを抱えている人、これからの生き方を模索している人にこそ、本書を手に取ってもらいたいです。
変化の時代を生き抜くには、自分の価値観としっかり向き合い、自分の人生の選択肢を広げていくことが大切です。そして何より、「辞める」という決断は終わりではなく、新しい始まりなのだということを、本書は教えてくれます。