
日本の近代文学を代表する作家、谷崎潤一郎(たにざき・じゅんいちろう、1886年~1965年)。
その作品は、多くの優れた翻訳家によって英語に訳され、世界中で愛読されています。
英語学習者にとって、谷崎作品の英訳版を読むことは、日本文化を再発見する旅でもあります。
繊細な美意識や独特の物語世界が、英語でどのように表現されているのかを知ることは、語学力の向上にもつながります。
今回は、数ある英訳作品の中から、初心者でも読みやすい順に厳選した谷崎潤一郎のおすすめの本をご紹介します。
英語の難易度や物語のテーマに合わせて、ぜひあなたにぴったりの一冊を見つけてください。
- 1.『In Praise of Shadows (陰翳礼讃)』谷崎潤一郎
- 2.『The Gourmet Club: A Sextet (美食倶楽部 他)』谷崎潤一郎
- 3.『Naomi (痴人の愛)』谷崎潤一郎
- 4.『Seven Japanese Tales (刺青、春琴抄 他)』谷崎潤一郎
- 5.『Quicksand (卍)』谷崎潤一郎
- 6.『The Key (鍵)』谷崎潤一郎
- 7.『Diary of a Mad Old Man (瘋癲老人日記)』谷崎潤一郎
- 8.『A Cat, a Man, and Two Women (猫と庄造と二人のをんな)』谷崎潤一郎
- 9.『The Secret History of the Lord of Musashi and Arrowroot (武州公秘話 / 吉野葛)』谷崎潤一郎
- 10.『Some Prefer Nettles (蓼喰ふ虫)』谷崎潤一郎
- 11.『The Makioka Sisters (細雪)』谷崎潤一郎
- 12.『The Reed Cutter and Captain Shigemoto’s Mother (蘆刈 / 少将滋幹の母)』谷崎潤一郎
- まとめ:谷崎潤一郎の英訳本で英語と日本文化を深く味わう
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1.『In Praise of Shadows (陰翳礼讃)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
谷崎潤一郎の美学を知る上で欠かせない随筆作品です。
日本の家屋、トイレ、照明、そして「陰影」に対する日本人の感性を、具体的なトピックごとに論じています。
小説ではないため、章ごとの区切りが短く、英語学習者にとっても非常に読みやすい構成になっています。
建築やデザインに関する具体的な英単語を学びながら、日本文化を英語で説明するスキルも身につく一冊です。
次のような人におすすめ
- 日本文化や建築、デザインに興味があり、それらを英語で表現したい人
- 長い物語を読むのは苦手だが、短く区切られたエッセイなら読めるという人
- 「わびさび」や日本の美意識について、海外の視点から理解を深めたい人

2.『The Gourmet Club: A Sextet (美食倶楽部 他)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
「食」や「五感」をテーマにした短編が収録されたアンソロジーです。
料理の味や食感、香りに関する表現が豊富で、感覚的な英語の語彙を増やすのに最適です。
ストーリーよりも描写を楽しむ作品が多く、物語の複雑さに迷うことなく、英語の表現そのものを味わうことができます。
ポール・マッカーシーらによる翻訳は、谷崎特有の濃厚な世界観を鮮やかに再現しています。
次のような人におすすめ
- 食べることや料理が好きで、食に関する英語表現を学びたい人
- 長編小説よりも、隙間時間で読める短編集を探している人
- 谷崎潤一郎の初期から晩年までの多様なスタイルを一度に楽しみたい人
3.『Naomi (痴人の愛)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
大正時代のモダンな風俗を背景に描かれる、読みやすさ抜群の長編小説です。
主人公の譲治による一人称の語りは平易で、会話文も多いため、英語のリズムに乗りやすく、ページをめくる手が止まりません。
奔放な少女ナオミに翻弄される男の姿は、現代の読者にとってもエンターテインメント性が高く、飽きさせない魅力があります。
「ナオミズム」という言葉を生んだ名作を、英語で軽快に読み通す達成感を味わえます。
次のような人におすすめ
- ストーリー展開が明確で、続きが気になる小説を英語で読みたい人
- 大正ロマンやモダン・ガールの世界観に興味がある人
- ユーモラスでありながら、男女の愛憎を描いたドラマチックな話が好きな人

4.『Seven Japanese Tales (刺青、春琴抄 他)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
谷崎文学のエッセンスが凝縮された、海外でも最も評価の高い短編集の一つです。
デビュー作「刺青」から名作「春琴抄」まで、代表的な短編・中編が収録されており、谷崎入門として最適です。
ハワード・ヒベットによる翻訳は流麗で美しく、原文の持つ妖艶な雰囲気を英語でも損なうことなく伝えています。
一冊で谷崎の主要なテーマである「美への献身」や「マゾヒズム」を網羅できる、お得な決定版です。
次のような人におすすめ
- 谷崎潤一郎の代表作を英語でまとめて読みたい初心者
- 美しい英語表現に触れながら、文学的な深みも味わいたい人
- 「春琴抄」などの名作が、英語でどのように訳されているか知りたい人
5.『Quicksand (卍)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
女性同士の恋愛と同性心中を描いた、スリル満点の心理サスペンスです。
全編がヒロインの独白という形式で書かれているため、話の流れに勢いがあり、英語でも一気に読み進めることができます。
ドロドロとした人間関係や予測不能な展開は、まるで昼ドラのような面白さがあり、学習のモチベーション維持に役立ちます。
原文の関西弁のニュアンスは薄れていますが、その分、標準的な英語として読みやすくなっています。
次のような人におすすめ
- 心理描写が巧みなスリラーやサスペンス小説が好きな人
- 退屈な教材ではなく、刺激的で没入感のある英語の本を探している人
- 複雑に絡み合う人間関係のドラマを解き明かしたい人

6.『The Key (鍵)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
倦怠期の夫婦が互いの日記を盗み読みし合うという、ユニークな構成のミステリーです。
「夫の日記」と「妻の日記」が交互に提示されるため、一つの章が短く、区切りをつけながら少しずつ読み進めることができます。
どちらが嘘をついているのかを推理しながら読む楽しさがあり、英語の読解力が自然と鍛えられます。
人間の心理の裏側を覗き見るような背徳感と、知的な駆け引きが魅力の作品です。
次のような人におすすめ
- 毎日少しずつ読み進められる、短い章立ての洋書を探している人
- ミステリー要素があり、最後まで結末が読めない話が好きな人
- 人間の心理や欲望について描かれた深い作品を読みたい人
7.『Diary of a Mad Old Man (瘋癲老人日記)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
老いと病、そして性的な執着をテーマにしながらも、どこかユーモラスで乾いた笑いを誘う晩年の傑作です。
主人公の老人の独特な語り口は、深刻な状況さえも喜劇に変えてしまう力があり、英語でもその「おかしみ」が伝わってきます。
『鍵』と対をなす作品として収録されることが多く、対照的な二つの日記形式の小説を比較して読むのもおすすめです。
重いテーマを軽妙に描く谷崎の筆力が、英語翻訳を通じても十分に感じられます。
次のような人におすすめ
- シリアスなだけでなく、ユーモアや皮肉の効いた小説が好きな人
- 「老い」という普遍的なテーマを扱った文学作品に関心がある人
- 『鍵』を読んで面白かったので、似た形式の作品をもっと読みたい人

8.『A Cat, a Man, and Two Women (猫と庄造と二人のをんな)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
一匹の猫を巡る男女の奇妙な三角関係を描いた、軽快なコメディタッチの中編小説です。
猫のリリーの愛らしい描写は、猫好きならずとも必読で、動物に関する英語表現も楽しく学べます。
人間関係の滑稽さや、大阪の庶民的な生活感が生き生きと描かれており、肩の力を抜いて楽しめる一冊です。
深刻な文学作品の合間に読む、息抜きとしても最適な明るい雰囲気を持っています。
次のような人におすすめ
- とにかく猫が好きで、猫が登場する日本の小説を英語で読みたい人
- ドロドロした愛憎劇よりも、笑える人間ドラマを好む人
- 日常会話に近い、親しみやすい英語表現に触れたい人
9.『The Secret History of the Lord of Musashi and Arrowroot (武州公秘話 / 吉野葛)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
歴史小説や時代劇のファンにおすすめしたい、一風変わった谷崎作品の合本です。
『武州公秘話』は架空の歴史書のような体裁をとっており、武士の時代を舞台にした奇妙な倒錯劇が展開されます。
『吉野葛』は随筆と小説が混ざり合ったような形式で、日本の歴史や伝説への旅を英語で追体験できます。
アンソニー・チェンバースの翻訳は、古典的な雰囲気と現代的な読みやすさを両立させています。
次のような人におすすめ
- 日本の歴史や侍、伝説に興味があり、それらを題材にした小説を読みたい人
- 普通の小説とは違う、メタフィクション的な凝った構成を楽しみたい人
- 知的な刺激を受けながら、少し難易度の高い英語に挑戦したい中級者

10.『Some Prefer Nettles (蓼喰ふ虫)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
西洋化する日本と伝統的な日本との間で揺れ動く人々の心情を描いた、谷崎の中期の重要作です。
夫婦の離婚問題という身近なテーマを通じ、文楽(人形浄瑠璃)などの伝統芸能が象徴的に使われています。
エドワード・サイデンステッカーの翻訳は簡潔で明瞭であり、抽象的なテーマを扱いながらも文章自体は読みやすく整理されています。
日本文化と西洋文化の対比について、英語でどのように表現されるかを学ぶための絶好のテキストです。
次のような人におすすめ
- 近代日本における西洋と東洋の文化的葛藤について深く考えたい人
- 文楽や日本の伝統芸能に関する記述を英語で読んでみたい人
- 感情を抑えた、静かで知的な雰囲気の小説を好む人
11.『The Makioka Sisters (細雪)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
谷崎潤一郎の最高傑作とも称される、大阪の旧家の四姉妹を描いた壮大な長編小説です。
四季折々の日本の風物や、着物の柄に至るまでの詳細な描写は、失われゆく日本の美を英語で保存したタイムカプセルのようです。
非常に長い作品ですが、サイデンステッカーの名訳により、姉妹たちの日常が鮮やかに蘇ります。
英語での読書に慣れてきた人が、じっくりと時間をかけて取り組む価値のある、読み応え十分な大作です。
次のような人におすすめ
- 長編小説を読み通す英語力と根気があり、物語の世界に浸りたい上級者
- 戦前の日本の美しい生活文化や、家族の絆を描いた物語に感動したい人
- 海外でも絶賛される日本文学の金字塔を、原語ではなく英語で味わってみたい人

12.『The Reed Cutter and Captain Shigemoto’s Mother (蘆刈 / 少将滋幹の母)』谷崎潤一郎
おすすめのポイント
谷崎文学の最深部とも言える、幻想的で古典的な美しさに満ちた二つの中編・短編です。
夢と現実の境界が曖昧な『蘆刈』や、平安時代の物語を下敷きにした『少将滋幹の母』は、高度な文学的香気を持っています。
文章は複雑で長く、読者には想像力と集中力が求められますが、その分、読み解いた時の感動は格別です。
日本的な情趣や「あはれ」の感情を、英語でどこまで表現できるかという翻訳の限界に挑んだ意欲作です。
次のような人におすすめ
- 英語の読解力に自信があり、難解だが美しい文学作品に挑戦したい上級者
- 平安時代の貴族社会や、能のような幽玄な世界観に惹かれる人
- 谷崎潤一郎の到達した「陰影」と「美」の極致を体験したい人
まとめ:谷崎潤一郎の英訳本で英語と日本文化を深く味わう
谷崎潤一郎の作品は、翻訳を通じてもその輝きを失うことなく、むしろ新しい魅力を放っています。
まずは『In Praise of Shadows』のようなエッセイや、『The Gourmet Club』のような短編集から手に取ってみてください。
そこから徐々に『Naomi』のような物語性の高い長編へ、そして『The Makioka Sisters』のような大作へと進むことで、無理なく英語での読書を楽しむことができるでしょう。
お気に入りの一冊を見つけて、谷崎文学の奥深い世界を英語で堪能してください。
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谷崎潤一郎記念館
兵庫県芦屋市伊勢町にある谷崎潤一郎の記念館。
公式サイト:谷崎潤一郎記念館













