『金儲けのレシピ』事業家bot

事業家botの略歴

事業家bot(じぎょうかぼっと)
事業家、経営者。
東京大学の在学中に起業、後に中退。フランチャイズチェーン企業に事業を売却後、売却先の企業にて、新規事業および経営企画管掌の役員。
再度起業して、現在年商10億円以上の企業を経営。

『金儲けのレシピ』の目次

まえがき
Recipe 0 商売の原理原則
Recipe 1 消費者から買う
Recipe 2 客に作業させる
Recipe 3 まとめると高くなる、切り分けると高くなる
Recipe 4 1:n構造を作る
Recipe 5 両方から金をもらう
Recipe 6 合法的に麻薬を売る
Recipe 7 確率をいじる
Recipe 8 空気を売る
Recipe 9 意思決定に介入する
Recipe 10 仕入れで儲ける
Recipe 11 他人の財布を狙う
Recipe 12 高いものはいいものだ
Recipe 13 勝手に「権威」になる
Recipe 14 信者ビジネス
Recipe 15 究極のレシピ

概要

2020年12月24日に第一刷が発行。実業之日本社。ソフトカバー。143ページ。127mm×188mm。四六判。

多くの事業に応用できる15個の原理原則をまとめたビジネス書。

軽快で歯に衣着せぬ文章。余分な要素を削ぎ落として、簡潔に仕上がっている。

ただし、具体的な事例も豊富に掲載。

さらに、補足が必要な点に関しては、ページの下部に注釈が入っている。

単なる説明や解説だけではなく、事業家botによる独自の切り口や洞察があるので、隅々まで楽しめる構成。

帯にもある通り、ビジネスモデルや経済学、人間の本能などにも言及。

ページ数は、そこまで多くないが内容は非常に濃厚である。

感想

以前からTwitterでフォローをしている事業家botの書籍ということで購入。

紙質にも拘ったという話を聞いたので、電子書籍ではなく、紙の本を選ぶ。

確かに表紙をめくり、見返しの次にある本扉は、黒色の光沢紙で、高級感のある雰囲気である。

内容は、とても明快で、分かりやすい文章と構成。

随所に、Twitterと同様に、事業家bot節。面白い。

ページ数は、143ページで、あっという間に読めてしまうが、それぞれの領域で、思考や仮説を深めていくと、膨大な作業量となる。

アイデアや思考実験の試し打ち、壁打ちにも使えるような内容である。

原理原則は、一見すると当たり前のことかもしれない。

ただ、そこを現実的に落とし込んで、ビジネスにするというのが、非常に難しい。

工夫や思案が必要である。

ちなみ、私は既に二回読んでいる。

以下、引用とともに紹介。

これに限らず、世の中の大半の財は、「まとめると高くなる」「切り分けると高くなる」に分割できるので、目の前の財に対してもその分類ができないか、思考実験してみることが肝要なのである。(P.43「レシピ3 まとめると高くなる、切り分けると高くなる」)

ここでは、その前に、「まとめると高くなる」の具体例として、土地のこと、「切り分けると高くなる」の具体例として、肉や魚のことに言及。

さまざまなサービスにも応用できる視点。

無形商材であっても、提供サービスを、一本化して高くしたり、細分化して高くすることも可能である。

やや話が脱線するが、「金を払わせることでコミットメントを迫る」という構図はRIZAPも同じであり、金を払わない客よりも金を払う客だけを相手にするほうが、結局、客側のコミットメントが強いので成果が出る、という構造であると一般化することができる。(P.61「レシピ5 両方から金をもらう」)

ここでは、ハイクラス転職の大手であるビズリーチの分析。

求職者と企業側からの双方から、手数料を得るというビジネスモデル。

さらに、求職者は手数料を支払っているので、コミットメントも強くなり、成果が得られやすいというもの。

そこで、ダイエットで有名なRIZAPにも話が進んでいったというもの。

両方からお金をもらう、というのも活かしたい点。

さらに、期待される成果を出すためのシステムとして、顧客にお金を払ってもらう、というのも注目のポイントである。

しかし、「中毒性がある嗜好品を売る」というのは、原則的には極めて儲かるのだ。
また、だからこそ国家の垂涎の的として集中管理が行われていると言えるわけである。(P.67「レシピ6 合法的に麻薬を売る」)

この前の部分では、たばこ、塩、酒についての話。

中毒性のある嗜好品の販売業というのは、原則として非常に儲かる。

そのため、昔は「専売公社」が、たばこ、塩を独占的に販売していた、というもの。

お酒に関しても、国家によって酒税が課されている。

その流れで、中毒性のあるものとして、「砂糖、小麦粉、脂肪」の3点セットについての言及。

原価率が低く、なおかつリピートされやすい、という指摘。

無形商材を売るときのポイント、それは、「有形商材っぽくする」「購入後のストーリーを想像させる」「課題解決として提案する」の3点である。(P.84「レシピ8 空気を売る」)

あらゆるコンサルティング業に通じるもの。「人月いくら」という請求方法の事例も。

有形商材っぽくするで言えば、データ分析、業界動向、消費者の動向、改善提案などのレポートも同様のことが言える。

一応の形にする、というのは重要。ある種の可視化とも言える。

簡単に言ってしまえば、高級時計や高級スポーツカーなど、いわゆる奢侈財は「自分が上流階級であることを示す」ための商品であり、それゆえ、「高いからこそ意味がある」という側面があるわけである。(P.116「レシピ12 高いものはいいものだ」)

ここでは、一般的な経済学とは異なる前提による「顕示的消費」について。

『有閑階級の理論』を著したアメリカの経済学者・社会学者であるソースティン・ヴェブレン(Thorstein Bunde Veblen、1857年~1929年)の名前を挙げて解説。

同じページの下部にある注釈で、詳しく言及しているのも、ありがたい点というか、丁寧なつくりを感じさせる点である。

といったように、さまざまな視点や観点で、ビジネスの原理原則を学べる内容。

会社員や個人事業主だけではなく、ビジネスに興味のある学生や主婦の方などにも、非常にオススメの作品である。

さらに付け加えておくと、事業家botがプロデュースした武田所長(たけだしょちょう)の『スモールビジネスの教科書』も、とても有用なので、関心のある方は、チェックしておくと良いと思う。

また「聴く読書」として、Audible(オーディブル)のオーディオブックの利用も。移動や運動の際に、ながら聴き出来るのがメリットである。

書籍紹介

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