『学ぶためのヒント』渡部昇一

渡部昇一の略歴

渡部昇一(わたなべ・しょういち、1930年~2017年)
英語学者、評論家。
山形県鶴岡市生まれ。上智大学文学部英文学科を卒業、上智大学大学院西洋文化研究科修士課程を修了。
ヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(通称・ミュンスター大学)に留学、Dr.Phil(哲学博士号)を受ける。

『学ぶためのヒント』の目次

文庫版まえがき
序にかえて――高校生に
第一章 人生を学ぶ
第二章 知を学ぶ
第三章 文化を学ぶ
第四章 英語を学ぶ
第五章 英語のことわざを学ぶ
あとがき

概要

2007年2月20日に第一刷が発行。祥伝社黄金文庫。337ページ。

2004年2月に新学社から刊行した四六判の単行本を文庫化したもの。

ちなみに、四六判とは紙の寸法の一つ。

原紙は、788mm×1091mm。書籍はこれを32に裁断した130mm×188mm、もしくは127mm×188mmの大きさ。

「文庫版まえがき」に書かれてある通り、基本的には高校生向けた書籍。

ただ、若い人たち以外にも、年齢を問わず学ぼうとしている人たち、前向きに生きようと思っている人たちにも参考になるはずと、著者の渡部昇一は述べている。

アメリカ人でも、ある程度作文もうまくなり、新聞が読めるようになるためには、アメリカで十何年間も学校に通わなくてはいけいないのです。(P.259「第五章 英語のことわざを学ぶ」)

「第五章 英語のことわざを学ぶ」では、小見出しに英語のことわざが書かれている。

「学問に王道なし」
There is no royal road to learning.

沢山の英語に触れていても、なかなか英語は上達しない。基礎的な英語の力がないと難しい。単語や文法をしっかりと学んでおかなければならない。

ここでは、アメリカ人であっても、ある一定以上のレベルの英語の読み書きというのは、難しいと述べる。

日本人であれば、なおさら難しいので、英語の基礎力をしっかりと身に付けるようにというアドバイス。

一八世紀の末ごろから二〇世紀の初めごろまで、欧米が興隆したころの人生訓の本の中には必ず、習慣論ということがよく書かれておりました。いい習慣を打ち立てることは、人生における重要なことのほとんど半分ぐらいは成し遂げたことだというのです。(P.268「第五章 英語のことわざを学ぶ」)

「今日できることを明日まで延ばすな」
Never put off till tomorrow what may be done today.

良い行為を習慣化させること。それが実行できれば、かなり円滑に物事が進んでいくという話。

また牧師で著述家のジョン・トッド(John Todd、1800年~1873年)の生活の工夫も紹介。

寝る前に、翌日にやるべきことを簡単でも良いので、箇条書きにしておく。翌日には、その内容を実践して、終わったものには、消していく。といったシンプルなアドバイス。

習慣化させることで、小さな積み重ねが継続できて、大きな仕事が可能になる。

人間の成功には、必要なコースとして、いくつかの誤りがあると思ったほうが、正しいとも言えるのです。(P.312「第五章 英語のことわざを学ぶ」)

「間違いをしない者は何もしない」
He who makes no mistakes makes nothing.

人間はなるべくなら失敗がない方が良いけれど、全く失敗がないようにと考えたら、何もできなくなってしまう。

そのため、ある程度の小さな失敗は、最初から念頭に置いておく。その方が、物事は上手くいきやすいだろうし、そのような姿勢の方が、正しいのではないだろうかという意見。

学生は、授業中に失敗を重ねて、そこで修正して、さらに学んでいってほしいと伝える。成人になってしまうと過ちを恐れる度合いが大きくなってしまうため。

感想

渡部昇一の本は、どれも面白い。今回の『学ぶためのヒント』も、もちろんとても興味深く、刺激を受ける。

前半の章は、渡部昇一が影響を受けたさまざまな本や人物たちが多く紹介されている。

江戸時代の儒学者・文人である柴野栗山(しばの・りつざん、1736年~1807年)。

作家・英文学者である佐々木邦(ささき・くに、1883年~1964年)。

英語学者・英和辞典の編纂者である田中菊雄(たなか・きくお、1893年~1975年)。

上記のような人物たちと関連した書物が掲載している。この辺りから、さらに深堀りしていくのも面白い。

そして、本書の約1/3を占める「第五章 英語のことわざを学ぶ」。ことわざというのは、ある種、何世代もの人間の叡智が積み上げられたもの。

つまりは、普遍的な助言である。

知らないものもあれば、以前から知っているものもある。改めて、自分の考えや行動の修正に役立てることができる。

特に英語に少しでも興味がある人にはオススメの本。もしくは、もっとより良い習慣や生活をしていきたいという向上心のある方にも最適である。

書籍紹介

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イギリスのオックスフォードにある総合大学。11世紀の末に大学の基礎が築かれた名門の英語圏では最古の大学。

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