猪瀬直樹の略歴
猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)
作家。
長野県飯山市の生まれ、長野市の育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科を卒業。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程で日本政治思想史を研究。
1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。
『昭和16年夏の敗戦』の目次
プロローグ
第一章 三月の旅
第二章 イカロスたちの夏
第三章 暮色の空
エピローグ
あとがき
*巻末特別対談*日米開戦に見る日本人の「決める力」VS勝間和代
『昭和16年夏の敗戦』の概要
2010年6月25日に第一刷が発行。中公文庫。283ページ。
日米開戦の直前の夏に、若手エリートたちがシミュレーションした戦争の経過は、実際とほぼ同じだったという実話を主軸にしたノンフィクション作品。
1983年8月に世界文化社から単行本、1986年8月に文春文庫から文庫が発売。
『BIGMAN』の1982年7月号~12月号の6回にわたって連載されたものに、大幅加筆された作品。
第一章の「三月の旅」は、戦争のシミュレーションのために若手エリートたちが招集される内容で、1~5まで。
第二章の「イカロスたちの夏」は、実際のシミュレーションを中心とした内容で、1~8まで。
第三章の「暮色の空」は、終戦前後の内容が、1~3まで。といった構成。
巻末特別対談には、評論家の勝間和代(かつま・かずよ、1968年~)が登場している。
2020年6月には、猪瀬直樹と防衛大臣を務めたこともある政治家の石破茂(いしば・しげる、1957年~)との巻末特別対談が記載されている、新版の『昭和16年夏の敗戦』も発売。
『昭和16年夏の敗戦』の感想
「総力戦研究所」というものすら、全く知らなかった。
1940年(昭和15年)に開設された研究所。
1941年(昭和16年)に、研究生として、さまざまな分野から若手のエリートたちが集められて、日米開戦のシミュレーションを実施。
ちなみに、若手エリートたちは、文官22人、武官5人の官僚の合計が27人。加えて、民間人が8人。
数日遅れて、閑院宮春仁(かんいんのみや・はるひと、1902年~1988年)も参加。トータルで、36人。
年齢は30代が中心。
各分野で能力を発揮し、将来を有望視されている人物たちが集結した。
後に日本銀行総裁を務める佐々木直(ささき・ただし、1907年~1988年)なども。
その若手エリートたちのシミュレーションによる結論は、緒戦は奇襲攻撃で勝利するが、国力の差から劣勢となって、敗戦に至るという「日本必敗」の内容。
終戦となる1945年(昭和20年)の夏よりも、4年も前に答えが出ていた。
では、何故、そのような勝ち目のない戦争に突き進んでしまったのかを、事実を見つめながら考察するといったノンフィクション。
意思決定のプロセス。時代の空気。責任の所在。数字。などなど。
キーポイントとなる要素が多々出てくる。
思わず夢中になって読んだ作品。中学校とか高校とかの授業の参考図書として、活用しても良いのではないかという内容である。
改めて、第二次世界大戦や太平洋戦争、大東亜戦争などについて、知りたい人や勉強したい人には、非常にオススメの作品。
戦争関連では、猪瀬直樹自身がこの『昭和16年夏の敗戦』の完結編と位置づけている『ジミーの誕生日』、さらにそれを改題した『昭和23年冬の暗号』は、未読なので、そちらも手にとってみようと思う。