『ペルソナ』猪瀬直樹

猪瀬直樹の略歴

猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)
作家。
長野県飯山市の生まれ、長野市の育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科を卒業。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程で日本政治思想史を研究。
1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

三島由紀夫の略歴

三島由紀夫(みしま・ゆきお、1925年~1970年)
小説家。
東京都新宿区の出身。学習院初等科、学習院中等科、学習院高等科文科乙類(ドイツ語)、東京大学法学部法律学科を卒業。大蔵省に入省するが、9カ月で依願退職。本名は、平岡公威(ひらおか・きみたけ)。

『ペルソナ』の目次

プロローグ
第一章 原敬暗殺の謎
第二章 幽閉された少年
第三章 意志的情熱
第四章 時計と日本刀
エピローグ
あとがき
文庫版あとがき
参考文献
解説 鹿島茂

概要

1999年11月10日に第一刷が発行。文春文庫。478ページ。

副題は「三島由紀夫伝」。

小説家・三島由紀夫について、祖父、父親の系譜を主軸にまとめた評伝。

1995年11月に刊行された単行本を文庫化したもの。初出は『週刊ポスト』の1995年1月1・6日の合併号から10月13日号までの38回にわたって連載。

小説家・三島由紀夫、本名・平岡公威について、祖父・平岡定太郎(ひらおか・さだたろう、1863年~1942年)、父親・平岡梓(ひらおか・あずさ、1894年~1976年)の流れで論じるノンフィクション作品。

平岡定太郎は、兵庫県加古川市の生まれ。帝国大学法科大学を卒業後、内務省に入省し、樺太庁長官などを務める。

平岡梓は、東京都港区の生まれ。東京帝国大学法学部法律学科を卒業後、農商務省に入省。

上記のように、官僚の家系である平岡家。三島由紀夫も、東京大学法学部法律学科を卒業して、大蔵省に入省している。ただ、一年も経たずに辞めているのがポイント。

この評伝では、この三人に対して、それぞれの人物が割り当てられている。

平岡定太郎には、政治家の原敬(はら・たかし、1856年~1921年)。

平岡梓には、政治家の岸信介(きし・のぶすけ、1896年~1987年)。

三島由紀夫には、官僚の長岡実(ながおか・みのる、1924年~2018年)。

この対比が、さらに作品に抑揚をつけて、ストーリーの推進力となっている。

大きな歴史の流れとともに、小説家・三島由紀夫の生涯を辿ることのできる作品である。

解説は、フランス文学者の鹿島茂(かしま・しげる、1949年~)。神奈川県横浜市の出身。神奈川県立湘南高等学校、東京大学文学部仏文学科を卒業。東京大学大学院人文科学研究科博士課程を修了。

感想

三島由紀夫の作品は、大学生になってから読んだのが初めてかもしれない。取り敢えず『金閣寺』を読んだような記憶がある。

さらには大学の一般教養の科目として履修した文学系の講義で、『金閣寺』に関する批評レポートを書いたような。まずまずの評価をもらえたような。

三島由紀夫の家系を軸にまとめあげた評伝『ペルソナ』

小説家・太宰治(だざい・おさむ、1909年~1948年)と比較されやすい人物でもある。太宰治の縁の地などは、かなり有名で色々とあるが、三島由紀夫についてはあまりない。

三島由紀夫は出身地が東京ということも影響があるのかもしれない。太宰治の場合は出身地が青森であり、東京や山梨に住んだりしているし。

因みに太宰治に関して、猪瀬直樹は評伝『ピカレスク』も書いている。

文学館とかも三島由紀夫は無いだろうと思っていたら、山梨にあった。ちょっと驚いた。今度、訪問してみようと思う。

三島由紀夫の作品では『潮騒』『花ざかりの森・憂国』に加えて『豊饒の海』の四部作『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』が、お気に入りである。

三島由紀夫のイメージとして『潮騒』は、一般的によく思い浮かべられるものなのだろうか。爽やかな作品で好きである。

他にも色々とエッセイなどを読んだような憶えもある。

極端な美意識などが注目されやすいが、幅広い感性で各種の作品も手掛けている。色々と三島由紀夫の作品を読んでみるのもオススメである。

もちろん、この『ペルソナ』も。三島由紀夫ファンや文学ファン、猪瀬直樹ファンには非常にオススメの一冊である。

書籍紹介

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三島由紀夫文学館

三島由紀夫文学館は、山梨県南都留郡山中湖村の山中湖文学の森公園内にある三島由紀夫の文学館。三島由紀夫と山中湖に直接的な縁はない。

公式サイト:三島由紀夫文学館