猪瀬直樹『ピカレスク』

猪瀬直樹の略歴

猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)
作家。
長野県飯山市の生まれ、長野市の育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科を卒業。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程で日本政治思想史を研究。
1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

太宰治の略歴

太宰治(だざい・おさむ、1909年~1948年)
小説家。
青森県五所川原市の出身。青森県立青森中学校、旧制弘前高等学校文科甲類を卒業。東京帝国大学文学部仏文学科を中退。本名は、津島修治(つしま・しゅうじ)。

『ピカレスク』の目次

序章
第一章 第一の事件
第二章 第二の事件
第三章 山椒魚の受難
第四章 第三の事件
第五章 第四の事件
第六章 三鷹・下連雀へ
第七章 太田静子の日記
第八章 山崎富栄の青酸カリ
終章
増補『黒い雨』と井伏鱒二の深層
あとがき
参考文献
解説 関川夏央

『ピカレスク』の概要

2007年3月10日に第一刷が発行。文春文庫。556ページ。

副題は「太宰治伝」。

小説家・太宰治の生涯を詳細に辿った評伝。

2000年11月に小学館から刊行した単行本を文庫化したもの。

初出は『週刊ポスト』の1999年9月24日号から2000年11月10日号まで56回にわたって連載。

太宰治の最期は、玉川上水心中事件。

だが、それまでに4回の心中もしくは自殺の未遂事件を起こしている。その事件を主軸に、太宰治の生涯を描いた評伝である。

様々な人物が登場するが、表紙絵にも描かれている主要な人間が、『黒い雨』などを執筆した作家の井伏鱒二(いぶせ・ますじ、1898年~1993年)である。

因みに、8ページと9ページには見開きで、主な登場人物が掲載されている。

女性たち、津島家の人々、青森の友人たち、文学上のライバルや作品に関わった人々、編集者たち、先輩作家など。それぞれの関係性が太宰治を浮かび上がらせていく。

解説は、作家の関川夏央(せきかわ・なつお、1949年~)。新潟県長岡市の出身。新潟県立長岡高等学校を卒業。上智大学外国語学部を中退した人物。

『ピカレスク』の感想

太宰治が好きである。最初は高校生の時に、数冊読んだ程度だった。

そこまで、ハマることはなかった。大学生くらいに再び何故か読み始めて、新潮文庫を網羅したような記憶がある。

その後、関連書籍を時々読むといった感じ。30歳頃には、青森県五所川原市にある太宰治記念館 「斜陽館」を訪問。

確か、その前にこの『ピカレスク』を読んだ。

なかなかのボリュームではあるが、読み応えもあり、太宰治の実像がかなり分かったような気がした。

井伏鱒二との関係性など、なかなか興味深い。もちろん、各種の女性関係なども。

今現在でも、どこかに出掛けた際に太宰治のゆかりの場所などを訪問してしまう。

お墓のある東京都三鷹市の禅林寺は、二度お参りしている。禅林寺には、本名である森林太郎と墓碑に刻まれている小説家・森鴎外(もり・おうがい、1862年~1922年)の墓もあるという理由も大きいが。

その他に、山梨県甲府市にある太宰治僑居跡、太宰治下宿先「寿館」跡、太宰治が通ったと言われる銭湯「喜久乃湯温泉」などに足を運んだこともある。

あとは、千葉県船橋市にある太宰治旧宅跡にも。

やはり、太宰治が好きなんだろう。

膨大な資料や数多くの関係者への取材を基に書かれたこの太宰治の評伝。太宰治ファンであれば必読の一冊である。

また太宰治に少しでも興味のある人、井伏鱒二に関心のある人、猪瀬直樹ファンなどにも、もちろんオススメの作品。

参考文献が非常に豊富に掲載されているので、そこからさらに深堀りするのも一興である。

書籍紹介

関連書籍

関連スポット

太宰治記念館 「斜陽館」

太宰治記念館 「斜陽館」は、青森県五所川原市にある太宰治の生家を利用した記念館。

公式サイト:太宰治記念館 「斜陽館」

太宰治文学サロン

太宰治文学サロンは、東京都三鷹に住んでいた太宰治が通い「十二月八日」にも登場する伊勢元酒店の跡地にある文化施設。

公式サイト:太宰治文学サロン

太宰治旧宅跡

千葉県船橋市にある太宰治旧宅跡。太宰治は、1935年から1年3カ月、船橋で過ごした。

公式サイト:太宰治に愛されたまち、船橋

太宰治僑居跡

山梨県甲府市にある太宰治僑居跡。太宰治夫婦新居跡とも呼ばれる。太宰治は、1939年から8カ月を過ごした。

公式サイト:甲府市/太宰治

禅林寺:太宰治墓

禅林寺は、東京都三鷹市にある黄檗宗の寺院。山号は霊泉山。太宰治の他に森鴎外(森林太郎)の墓がある。

公式サイト:禅林寺