『ノンフィクション宣言』猪瀬直樹

猪瀬直樹の略歴

猪瀬直樹(いのせ・なおき、1946年~)
作家。
長野県飯山市の生まれ、長野市の育ち。信州大学教育学部附属長野小学校、信州大学教育学部附属長野中学校、長野県長野高等学校を経て、信州大学人文学部経済学科を卒業。明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士前期課程で日本政治思想史を研究。
1987年に『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。

『ノンフィクション宣言』の目次

足立倫行篇 耳かき曲線
「エッセイ」五月のシルエット
「三年後のエッセイ」消えたシャクナゲの秘密
山根一眞篇 変体ジムショ術
「エッセイ」二百円秘書の仕事能力
「三年後のエッセイ」ジャーナリズムと「技術の力」
吉岡忍篇 黄昏時の頭痛
「エッセイ」一年分のエスプリ
「三年後のエッセイ」M君はどこへ行った
関川夏央篇 路傍の石と意思
「エッセイ」さびしいひとびと
「三年後のエッセイ」「ここ数年、なにかいいことありましたか」
青木冨貴子篇 感嘆ニューヨーク
「エッセイ」『裸の街』ニューヨークから
「三年後のエッセイ」ベトナム帰還兵からの招待状
沢木耕太郎篇 アマチュア往来
「エッセイ」孤寒
「三年後のエッセイ」日記から
猪瀬直樹篇 ボクとキミの二十歳
「エッセイ」夢の証し
「三年後のエッセイ」青い山脈
あとがき
三年後のあとがき<全共闘世代の「ストイシズム」について>

概要

1991年5月10日に第一刷が発行。文春文庫。249ページ。

猪瀬直樹が同世代のノンフィクション作家たちにインタビューをして、まとめたもの。

それぞれ単行本の時のエッセイ、文庫化された時の「三年後のエッセイ」も掲載されている。

もともとは「翻訳の世界」の1987年4月号~1988年8月号に連載。1988年11月に単行本として刊行したもの。

目次にある通り、6人のノンフィクション作家たちが登場。

足立倫行(あだち・のりゆき、1948年~)…鳥取県の生まれ。早稲田大学政治経済学部を一年休学して、アメリカ・北欧生活を体験。後に大学を中退。世界を放浪。後に『平凡パンチ』などの記者を経てフリーランスに。

山根一眞(やまね・かずま、1947年~)…東京都の生まれ。獨協大学外国語学部ドイツ語学科を卒業。在学中からフリージャーナリストとして活動を始める。

吉岡忍(よしおか・しのぶ、1948年~)…長野県の生まれ。早稲田大学政治経済学部を中退。『墜落の夏 日航123便事故全記録』で、第9回(1987年)講談社ノンフィクション賞を受賞。

関川夏央(せきかわ・なつお、1949年~)…新潟県の生まれ。上智大学外国語学部を中退。編集者を経てフリーランスに。『海峡を越えたホームラン』で、第7回(1985年)講談社ノンフィクション賞を受賞。

青木冨貴子(あおき・ふきこ、1948年~)…東京都の生まれ。成城大学経済学部を卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。『ニューズウィーク日本版』ニューヨーク支局長を、3年間務める。

沢木耕太郎(さわき・こうたろう、1947年~)…東京都の生まれ。横浜国立大学経済学部を卒業。『テロルの決算』で、第10回(1979年)大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。代表作に『深夜特急』シリーズなど。

以上の6人に、猪瀬直樹がインタビューをする構成。対談的な要素も多く含まれる。

程良く合間に、それぞれの人物の写真などがあるのもポイント。

「あとがき」の後には、さらに「三年後のあとがき」もある。

感想

猪瀬直樹の著作を読み漁っている途中で出合った、この作品。猪瀬直樹と同世代のノンフィクション作家たちをインタビューしたもの。

その中に、沢木耕太郎も入っていたので購入。

他の人たちは不勉強で読んだことが無かったので、試しにいろいろなノンフィクション作家についても知れると思ったのも、購入に至った理由のひとつ。

結論としては、とても面白く読めた。

内容的に、1980年代後半に書かれたものなので、全体として時代的な古さを感じられるが、ノンフィクション作家の仕事に対する姿勢や私生活の一端なども分かって興味深かった。

また、さまざまなノンフィクション作家の文章を読めたのも良かった。

特に沢木耕太郎に関しては、子供や家庭の話を、それまであまり読んだことが無かったので、そういった記述に触れると新鮮さがあった。

一人でも好きなノンフィクション作家がいたり、興味のある人がいたりすれば、非常にオススメである。

一度に複数の著者の文章を読むことで、文章術の勉強にもなる。ノンフィクションに関心の高い人や、文章の勉強をしたい人にも、良い作品である。

書籍紹介

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