
「生きづらい」「なんとなく社会と合わない」と感じる瞬間、脳が作り出した「世間」というシステムに疲れている可能性がある。
解剖学者・養老孟司(ようろう・たけし、1937年~)の思想は、そんな現代人の凝り固まった脳を解きほぐすヒントに満ちている。
しかし、代表作『バカの壁』や単著の専門的な記述にハードルの高さを感じる読者も少なくない。
そこで手に取るべきなのが、養老孟司の「対談集・共著」だ。
伊集院光や羽生善治、森博嗣など、各界の専門家との対話を通じて、抽象的な理論が具体的な悩みや社会問題へと落とし込まれているため、初心者でも驚くほど読みやすい。
本記事では、数ある著作の中から、読者の心を「共感」から「納得」、そして「受容」へと導くおすすめの12冊を紹介する。
日常の違和感を肯定し、楽に生きるための視点を手に入れてほしい。
- 1.『世間とズレちゃうのはしょうがない』養老孟司 / 伊集院光
- 2.『養老先生、病院へ行く』養老孟司 / 中川恵一
- 3.『「身体」を忘れた日本人』養老孟司 / C.W.ニコル
- 4.『世につまらない本はない』養老孟司 / 池田清彦 / 吉岡忍
- 5.『子どもが心配』養老孟司 / 宮口幸治 ほか
- 6.『「他人」の壁』養老孟司 / 名越康文
- 7.『文系の壁』養老孟司 / 森博嗣 ほか
- 8.『年寄りは本気だ』養老孟司 / 池田清彦
- 9.『AIの壁』養老孟司 / 羽生善治 ほか
- 10.『日本の歪み』養老孟司 / 茂木健一郎 / 東浩紀
- 11.『死を受け入れること』養老孟司 / 小堀鴎一郎
- 12.『なるようになる。』養老孟司 / 聞き手・鵜飼哲夫
- まとめ:脳の壁を超えて、身体の声を聞く読書を
1.『世間とズレちゃうのはしょうがない』養老孟司 / 伊集院光
おすすめのポイント
不登校の経験を持つタレント・伊集院光との対談集。
社会の常識や「世間」に対し、どうしても馴染めない違和感を抱える人への「肯定」が詰まった一冊。
「ズレていて当たり前」という養老孟司の生物学的な視点は、脳が作り出した社会システムに過剰適応しようと苦しむ心を軽くする。
対話形式で非常に読みやすく、最初の一冊として最適。
次のような人におすすめ
- 学校や会社に行きたくない、社会のルールに息苦しさを感じている人
- 「自分が間違っているのではないか」という不安を解消したい人
- 難しい理屈抜きに、養老孟司の温かい視点に触れて癒やされたい人

2.『養老先生、病院へ行く』養老孟司 / 中川恵一
おすすめのポイント
医療嫌いで知られる著者が心筋梗塞で入院した体験を、東大病院の医師・中川恵一と語り合う。
愛猫「まる」の死や自身の老いという極めて個人的な体験を通じ、現代医療という「システム」と、個別の「身体」との付き合い方を模索する。
ユーモアを交えつつも、病気や病院との距離感を考え直させてくれる実用的な対話。
次のような人におすすめ
- 健康診断や病院通いにストレスや疑問を感じている人
- ペットロスや愛猫との別れに直面し、心の整理をつけたい人
- 自分の体調や老いについて、過度に心配しすぎている人
3.『「身体」を忘れた日本人』養老孟司 / C.W.ニコル
おすすめのポイント
日本の自然を愛したC.W.ニコルとの対話を通じ、都市化によって失われた「五感」や「身体性」の復権を説く。
エアコンの効いた室内で情報ばかりを処理する現代生活が、いかに生物としてのヒトを疲れさせているかを指摘。
森や自然の中に身を置くことが、単なるリフレッシュ以上の「生きる力の回復」であることを教えてくれる。
次のような人におすすめ
- 都会暮らしやデスクワークで、慢性的な疲れや虚無感がある人
- 自然の中に行くとホッとする理由を、論理的に理解したい人
- デジタルデトックスやアウトドアに関心がある人

4.『世につまらない本はない』養老孟司 / 池田清彦 / 吉岡忍
おすすめのポイント
生物学者の池田清彦、ノンフィクション作家の吉岡忍との鼎談による、知的興奮に満ちた読書論。
本を「脳を拡張する外部装置」として捉え、ジャンルを問わず多読・乱読することの愉しみを語り尽くす。
「役に立つかどうか」という基準を捨て、知的好奇心の赴くままに活字の海を泳ぐことの豊かさを再発見できる。
次のような人におすすめ
- 読書習慣を身につけたいが、何を読めばいいかわからない人
- 「役に立つ本」ばかり読んでいて、読書が窮屈になっている人
- 知の巨人たちがどのような視点で本を選んでいるか知りたい人
5.『子どもが心配』養老孟司 / 宮口幸治 ほか
おすすめのポイント
『ケーキの切れない非行少年たち』の宮口幸治をはじめ、小児科医や脳科学者ら4名との対談集。
ゲーム依存、不登校、学力低下など、現代の子どもを取り巻く問題を「脳と身体」の視点から解剖する。
親が子どもを「思い通りに育てる」ことの不可能性を説き、子ども本来の「自然」な育ちを見守るための親の心構えを提示する。
次のような人におすすめ
- 子育てに不安を感じ、つい子どもに厳しく当たってしまう親
- スマホやゲームとの付き合い方、教育方針に悩んでいる人
- 子どもの将来を案じるあまり、視野が狭くなっていると感じる人

6.『「他人」の壁』養老孟司 / 名越康文
おすすめのポイント
精神科医・名越康文との対話を通じ、ベストセラー『バカの壁』の核心である「人間関係の分かり合えなさ」を掘り下げる。
「話せばわかる」という現代の迷信を否定し、他人とは根本的に異なる存在であることを前提としたコミュニケーションのあり方を提案。
職場や家庭での人間関係に疲れたとき、過度な期待を手放すための特効薬となる。
次のような人におすすめ
- 「なぜあの人には話が通じないのか」とイライラしている人
- コミュニケーション能力の呪縛から解放されたい人
- 自分探しや「本当の自分」という概念に疑問を持っている人
7.『文系の壁』養老孟司 / 森博嗣 ほか
おすすめのポイント
工学博士で作家の森博嗣、脳科学者の藤井直敬、スマートニュースの鈴木健、そしてSTAP細胞事件を追った記者の須田桃子という、強力な「理系の知性」らとの対話集。
「理系は言葉ではなく論理で通じ合う」という視点から、言葉や空気に支配されがちな文系的社会の盲点を鋭く突く。
VR技術から科学不正の問題まで、細胞や脳の仕組みをベースに政治経済やメディアを解剖。
読者の常識や「前提」を揺さぶるスリリングな四つの議論が展開される。
次のような人におすすめ
- 「言葉」だけの議論に虚しさを感じ、論理的な思考を深めたい人
- 森博嗣や鈴木健など、先端を走る理系知識人の視点に触れたい人
- 科学技術やニュースの裏側にある「構造」を理解したい人

8.『年寄りは本気だ』養老孟司 / 池田清彦
おすすめのポイント
盟友である生物学者・池田清彦との、忖度なしの社会時評。
「失うものはない」高齢者二人が、SDGsや政治の欺瞞、経済至上主義の限界を痛快に切り捨てる。
表面的なきれいごとではなく、生物学的な本音ベースで語られる日本論は、閉塞感のある現代社会において一種の清涼剤となる。
常識を疑うクリティカルな視点が養われる一冊。
次のような人におすすめ
- ニュースやメディアの報道に対し、裏側の本音を知りたい人
- SDGsやエコ活動などのスローガンにどこか胡散臭さを感じる人
- 社会の建前に縛られず、自由に意見を持ちたいと思っている人
9.『AIの壁』養老孟司 / 羽生善治 ほか
おすすめのポイント
将棋の羽生善治やAI研究者らと共に、人工知能と人間の境界線を探る。
AIは計算や処理はできても、身体を持たないため「意味」や「感覚」を理解できないという指摘は鋭い。
AI時代において、人間が人間らしく生きるとはどういうことか、効率化の先にある価値とは何かを問い直す。
テクノロジーへの過度な期待や恐怖を鎮める哲学書。
次のような人におすすめ
- AIに仕事を奪われるのではないかと漠然とした不安がある人
- デジタル化が進む中で、人間独自の価値を知りたい人
- 羽生善治との対話から、勝負や直感の奥深さに触れたい人

10.『日本の歪み』養老孟司 / 茂木健一郎 / 東浩紀
おすすめのポイント
脳科学者の茂木健一郎、批評家の東浩紀との鼎談。
戦後日本が抱える憲法、天皇、自衛隊といった構造的な「歪み」や「ごまかし」を徹底的に議論する。
なぜ日本社会には主語がなく、責任の所在が曖昧なのか。
歴史的・精神分析的なアプローチで国の形を解剖し、現代の生きづらさの根底にあるシステムエラーを浮き彫りにする。
次のような人におすすめ
- 日本社会の閉塞感の正体を、歴史的背景から理解したい人
- 政治や社会問題について、より深いレベルで思考したい人
- 異なる分野の知性がぶつかり合う、スリリングな議論を読みたい人
11.『死を受け入れること』養老孟司 / 小堀鴎一郎
おすすめのポイント
数千の遺体を見てきた解剖学者と、数多くの死を看取ってきた訪問診療医による、死生観の決定版。
「死は三人称(他人の死)としてしか存在しない」という養老哲学と、現場での実体験が交差する。
死をタブー視せず、日常の延長として捉え直すことで、生への執着や死への恐怖が和らぐ。
老いや最期について真剣に考えたいときの必読書。
次のような人におすすめ
- 自分や家族の死について考えると、怖くてたまらなくなる人
- 病院で管に繋がれるのではなく、自然な最期を迎えたい人
- 「死ぬこと」の意味を、感情論ではなく静かに見つめたい人

12.『なるようになる。』養老孟司 / 聞き手・鵜飼哲夫
おすすめのポイント
様々な対話と思索を経てたどり着いた、養老孟司の境地とも言えるエッセイ・インタビュー集。
幼少期からの記憶や経験を振り返りつつ、「自分の意思ですべてをコントロールしようとする傲慢さ」を手放すことの重要性を説く。
「なるようになる」とは諦めではなく、大きな自然の流れに身を任せる究極の肯定。
読後、肩の荷が下りるような安らぎが得られる。
次のような人におすすめ
- 人生をコントロールしようと必死になり、疲れてしまった人
- これまでの養老孟司の思想の集大成、結論を知りたい人
- 老後や未来に対し、穏やかな心持ちで向き合いたい人
まとめ:脳の壁を超えて、身体の声を聞く読書を
養老孟司の共著・対談本は、現代人が囚われている「脳化社会」の常識を、対話という軽やかな形式で解きほぐしてくれる。
まずは『世間とズレちゃうのはしょうがない』や『養老先生、病院へ行く』から手に取り、自分の感覚が決して間違っていないことを再確認してほしい。
ページをめくるごとに、凝り固まった脳が柔らかくなり、身体が少しずつ楽になっていく感覚を味わえるはずだ。
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