清水幾太郎の略歴
清水幾太郎(しみず・いくたろう、1907年~1988年)
社会学者、評論家。
東京市日本橋区(現在の東京都中央区)の生まれ。
独協中学、旧制東京高校を経て、東京帝国大学文学部社会学科を卒業。
『本はどう読むか』の目次
はしがき
1-私の読書体験から
2-教養のための読書
3-忘れない工夫
4-本とどう付き合うのか
5-外国書に慣れる法
6-マスコミ時代の読書
『本はどう読むか』の概要
1972年11月20日に第一刷が発行。講談社現代新書。182ページ。
各種の知的生産系の書物で、度々引用される名著である。
二メートルに足りない身長を持ち、一世紀に満たぬ寿命しか与えられていない人間、食物や飲料を絶えず摂取せねば、また、見苦しい大小便を絶えず排泄せねば生きていられぬ人間、そんな人間を逆さに振るったところで、貴い意味が転がり出て来るものではない。人間の内部に意味があると思うのは、近代思想の生んだ錯覚である。(P.48「2-教養のための読書」)
ここでは、職業や仕事、つまり社会との関係性の中に、人間の意味がある、と言及。
不愉快になるかもしれないが、人間の内部には大した物は無い、外部との関係性に価値があると説く。
その文章に続いて登場するのが上述の引用部分。これは、何かに悩んだり、困ったりした時に、思い返すと良い思考基準かもしれない。
ちょっと肩の力が抜けるというか、気楽になれるような、ある種のポジティブに向かうための一つの考え方として利用できる。
つまり、十枚の原稿の執筆には不必要な大規模な準備を故意にやるのである。五十枚か百枚ぐらい書けば書けそうな準備をやるのである。事情が許さなければ、諦めるほかないが、長い間、私はこの流儀を頑固に守って来た。(P64「2-教養のための読書」)
十枚の原稿のために、十枚分くらいの準備をして、ただその日暮らしを繰り返すよりも、大幅に上回る準備をして、原稿を書くと良い。
プラスになるかは分からないが、少なくとも、あなたの人生でマイナスにはならないと。
より本質的な文章を書けるかもしれいないし。新しい考え方や視点を得られるかもしれない。他の原稿を書く際のヒントが多数見つかるかもしれない。
私も可能な限り、大規模な準備をしていきたい。
本はどんな無理をしても、買わなければいけない。(P.87「3-忘れない工夫」)
例外はあるけれど、図書館や人から借りた本は大切に扱わないといけない。
自分で購入した本なら、書き込みやページの端を折ることも自由に出来る。自由に扱えないのであれば、自己中心の読書が不可能であると。
これは他の多く著者も語っている。身銭を切る事。手元に置いておく事の利便性も。
私もライターという仕事をしているので、基本的に書籍は購入している。気に入った物は特にずっと手元に置いておきたいという気持ちもある。
本を読みながら、「なるほど、なるほど」と理解しても、そういう理解は、心の表面に成り立つ理解である。浅い理解である。本を読んで学んだことを下手でもよい、自分の文章で表現した時、心のそこに理解が生れる。深い理解である。(P.95「3-忘れない工夫」)
本から得られた事を今までの自分の知識や経験と溶け込ませながら文章によって表現すると、より深い理解となるという話。
このブログの主旨も同じである。どこまで私自身が理解出来ているかは不明であるが。
本を読んでいると、何となく分かったような気になってしまうので、注意が必要。
読み終えた後に、内容を振り返りつつ、自分が感動したり、立ち止まったりした部分を、さらに掘り下げて考えて、言語化する。
最終的には、その本が自分の血肉となる。
読む前と読み終わった後では、ほんの少しでも成長や前進、喜びが増えていたら、良いのかもしれない。
左から右へ、左から右へと一つの方向に進んで、絶対に後を振り返らない、右から左へ戻らないという方法を守っていると、読みながら、まだ正確な理解からは遠いにしても、或るボンヤリした感じが生れて来る。そうなれば、もう大丈夫である。(P.147「5-外国書に慣れる法」)
左から右へと忠実に英語を読んでいく。
すると日本語に直す事が難しいので、そのまま英語を、英語として理解出来るようなるという発想。
このルールを厳守して継続すると良いという助言。
またその利点も後段に書かれている。翻訳されていない本を読む喜び。原文の方が理解しやすい場合がある。
素晴らしい本も翻訳されない事が多々あるため。私も英語は継続して勉強していきたいと思う。
『本はどう読むか』の感想
読書好きであれば、どうやったら本から得られるものを最大化できるのか、と一度でも考えた事があるのでは。
そういった興味や関心に応えてくれるのが、この書籍。
本選び、読み方、記憶の方法、蔵書の整理、外国語の習得。
この辺りの内容を、著者の清水幾太郎が自らの経験を回顧しながら、まとめている。どれも具体的であるので、参考になる点も数多くある。
本を読み始めたとしても、詰まらないと思ったら、終わりまで読まずに途中で止めてしまって良い、という意見など。
私も最近では無理をせずに最後まで読まないまま、別の本に移行する場合もある。
また単純に読み物としても面白い。清水幾太郎のエッセイでもあるので。
国内外を問わず、様々な学者が登場したり、古典なども登場。そこを起点にさらに関連本を読んでいくのも良いかもしれない。読書好きな人には非常にオススメの一冊である。