『頭をよくする私の方法』竹内均

竹内均の略歴

竹内均(たけうち・ひとし、1920年~2004年)
地球物理学者、科学評論家。
福井県大野市の生まれ。東京帝国大学理学部地球物理学科を卒業。東京大学大学院理学研究科を修了。
定年退職まで東京大学に勤務。科学雑誌「Newton」を創刊し、編集長を務める。

『頭をよくする私の方法』の目次

1章 「頭」のキレをよくする生活
――「頭脳パワー」を全開にする方法
2章 スーパー情報活用術
――知的情報を最大限に生かす秘訣
3章 「知的生活」の必携アシスタント
――「文明の利器」で頭の効率をグンと上げる
4章 「独創的創造力」を身につける法
――「ひらめき」を生み出す独創力トレーニング
5章 「自己実現」へのライフプラン
――「夢」を実現させる方法
あとがき

概要

1987年5月10日に第一刷が発行。三笠書房。194ページ。ソフトカバー。127mm✕188mm。四六判。

教育事業などにも携わる科学者・竹内均が、知的生活のさまざまな方法を紹介。具体的な方法から精神的な姿勢まで、幅広く解説している著作。

副題は“人の何倍も「頭」と「体」をつかいこなす秘訣”。

2001年11月25日には、『頭をよくする私の方法』(1987年)と『勉強術・仕事術私の方法』(1988年)をもとに大幅に加筆・改筆して再編集した、235ページで同名の『頭をよくする私の方法』が刊行されている。

感想

英文学者の外山滋比古(とやま・しげひこ、1923年~2020年)や、英語学者の渡部昇一(わたなべ・しょういち、1930年~2017年)の著作が好きである。

外山滋比古は、『思考の整理学』

渡部昇一は、『知的生活の方法』

といった代表作がある。

同様に、竹内均の作品も好きで、色々と読んでいる。

実際、書籍としては、かなり古いものにはなるが、古典として大きく役立つ内容。

もちろん、刊行された1987年の当時と現代の時代背景や技術革新などを考慮して読む必要はある。

そこで学ぶの基本姿勢というか、基本的な精神性といった感じかも。

そういったものを吸収しながら、現代の方法、自分だけの方法を生み出そうとしていけば良いかと思う。

以下、引用などをしながら解説。

自分の内からわきだしてくる「やりたい」という思いと「仕事」が一致していることは、人間にとってなによりも大きな「力」である。(P.23:1章 「頭」のキレをよくする生活)

つまりは、自分の好きな事と仕事が一致していると、大きな力が発揮できるという話。

嫌々やっていたら、成果も出ない。

好きで楽しくて満足していれば、結果も出る。

この辺りは、実業家の渋沢栄一(しぶさわ・えいいち、1840年~1931年)や、林学者の本多静六(ほんだ・せいろく、1866年~1952年)の言う所の“職業の道楽化”と似ている。

実際に、竹内均の他の著作だと、上記の二人の話も出てくる。

さらに続いて、あてがわれた仕事を適当に、こなしていると、そういった大きな力を身に付けることもなく、ただただ老いてしまうという。

また「10ではなく、100を目標とする」ように、常に高く、大きなゴール地点を設定すると良いとも。

そのような大きな目標のために、自分にノルマを課して、原稿を執筆しているというエピソードに入っていく。

そのノルマとは毎月四〇〇字詰原稿用紙にして三〇〇枚以上の原稿を書くことである。(P.31:1章 「頭」のキレをよくする生活)

400字✕300枚=12,000字である。

本職の作家でも、かなりの労力が必要となる。

その後に、ちょっとした種明かし的な感じで、詳しい説明が出てくる。

まずは、時間の使い方。細切れの時間を有効に使うという。

15分単位で、物事を処理していくという竹内均。

15分であれば、ちょっとした移動時間や人を待つ時間などにも有効。

そういった時間に、テープレコーダーに自分の考えを記録。

後から、秘書がその録音を文字起こしするといった方法。

現在でも15分単位というか細切れ時間は、当然に有効である。

また、録音デバイスの活用も。

さらには現在では、文字起こしに関して、秘書といった人を介さなくても、文字起こし機能のソフトが普及している。

多少の誤変換は、後から修正すれば良いし、録音時にはキーボードもいらないので、かなり効率的だろう。

デカルトの『方法序説』第二部に、「知的作業のための四つの規則」がある。それは、「明証」「分析」「総合」「枚挙」の四つである。(P.135:4章 「独創的創造力」を身につける法)

ざっくりと説明すると。

「明証」は、明らかに真であること以外は認めいない。はっきりと証明すること。

「分析」は、問題をできるだけ多く、解決に必要な数だけ細分化すること。

「総合」は、思索を順序に従って導くこと。統一的にまとめること。

「枚挙」は、見落としがないか一つ一つ確認すること。

順番は前後するが、デカルト(René Descartes、1596年~1650年)は、フランスの哲学者・数学者。合理主義哲学の祖、近代哲学の祖として知られている人物。

「我思う、故に我あり」という言葉でも有名。

その手前の部分では、独創について説明。

竹内均は色々な著作を読んでみたら「独創とは要素の新しい結合や配列である」と言っていることを確認。

その中の一つとして、デカルトの考え方を紹介したといった流れ。

フランスの数学者であるポアンカレ(Jules-Henri Poincaré、1854年~1912年)の『科学と方法』

地理学者の川喜田二郎(かわきた・じろう、1920年~2009年)の『発想法』

上記の二つの書名も、挙げている。

私の考えでは、「正直」は「約束したことを必ず実行し、実行できそうもないことを約束しない」ことであり、また感謝は「勤勉・正直を実行していささかの成功をおさめた場合には、それを他人のおかげとし、失敗した場合にはそれを自分のせいにする」ことである。(P.193:あとがき)

竹内均、格好良い。

竹内均は、勤勉、正直、感謝を非常に大切にしている。

これまた当たり前と言えば、当たり前のことである。

だが、上記の引用のように、実際に行動している人は、どれだけいるだろうか。

というか、勤勉、正直、感謝の定義が竹内均の場合には、とても深いといった感じか。

これも先述の分析ではないが、言葉の意味、行動の意味を、細分化して、明確にしているということか。

具体的な方法論の他にも、上記のような精神性を語る部分もある。

読んで活力というか、元気をもらえる本でもある。

もっと頭を効率的に使いたい人、自己実現をさせたい人、知的生活について興味のある人などに、非常にオススメの作品。

1987年版もあれば、『勉強術・仕事術私の方法』を合本し、編集・再構成した同名の2001年版もあるので、確認をしてから購入すると良いかも。

書籍紹介

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