『メン アット ワーク 山田詠美対談集』山田詠美

山田詠美の略歴

山田詠美(やまだ・えいみ、1959年~)
作家。
本名は、山田双葉(やまだ・ふたば)。東京都板橋区の生まれ。北海道札幌市、石川県加賀市、静岡県磐田市を転々とし、小学校五年生の二学期から栃木県鹿沼市に転居。
栃木県鹿沼高等学校を卒業、明治大学文学部日本文学科を中退。漫画家としてデビュー。1985年に『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞。1987年に『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞を受賞。

『メン アット ワーク 山田詠美対談集』の目次

風俗と文学 石原慎太郎
口説く快感、溺れる悦楽 伊集院静
エロティックな処世術 井上陽水
運命に逆らってはいけない 大岡玲
インモラルの快楽 大沢在昌
小説を書くこと、読むこと 奥泉光
唯一のブランドを紡ぐ視線 京極夏彦
シンプルな透明なところへ 佐伯一麦
SMは人生の特効薬 団鬼六
「メス化する時代」の男と女 西木正明
楽し懐かし高校時代 原田宗典
人生はすべて色事でよし 水上勉
私たちの修行時代 宮本輝
愛と知性のロジック 村上龍
あとがき
解説 亀谷誠

概要

2001年8月25日に第一刷が発行。幻冬舎文庫。380ページ。

山田詠美と男性作家たちとの対談集。

1998年8月に刊行された単行本を文庫化したもの。

以下、男性作家たちの略歴。

石原慎太郎(いしはら・しんたろう、1932年~2022年)…作家、政治家。兵庫県神戸市の生まれ。北海道小樽市と神奈川県逗子市で育つ。神奈川県立湘南高等学校、一橋大学法学部を卒業。1956年に『太陽の季節』で芥川賞を受賞。

伊集院静(いじゅういん・しずか、1950年~)…作家。山口県防府市の生まれ。山口県防府高等学校、立教大学文学部日本文学科を卒業。CMディレクターを経て、1992年に『受け月』で直木賞を受賞。

井上陽水(いのうえ・ようすい、1948年~)…シンガーソングライター。本名は、同じ表記で井上陽水(いのうえ・あきみ)。福岡県飯塚市の生まれ、福岡県田川郡の育ち。福岡県立西田川高等学校を卒業。代表曲に「傘がない」「夢の中へ」など。

大岡玲(おおおか・あきら、1958年~)…作家。東京都三鷹市の生まれ。武蔵中学校・高等学校、東京外国語大学外国語学部イタリア語学科を卒業。東京外国語大学大学院外国語学研究科ロマンス系言語専攻修士課程を修了。1990年に『表層生活』で芥川賞を受賞。

大沢在昌(おおさわ・ありまさ、1956年~)…作家。愛知県名古屋市の出身。東海高等学校を卒業、慶應義塾大学法学部を中退、文化学院創作コースを中退。1993年に『新宿鮫 無間人形』で直木賞を受賞。

奥泉光(おくいずみ・ひかる、1956年~)…作家。山形県東田川郡の出身。埼玉県川越高等学校、国際基督教大学教養学部人文科学科卒業、国際基督教大学大学院修士課程を修了。1994年に『石の来歴』で芥川賞を受賞。

京極夏彦(きょうごく・なつひこ、1963年~)…作家。北海道小樽市の出身。北海道倶知安高等学校を卒業、専修学校桑沢デザイン研究所を中退。2004年に『後巷説百物語』で直木賞を受賞。

佐伯一麦(さえき・かずみ、1959年~)…作家。宮城県仙台市の出身。宮城県仙台第一高等学校を卒業。上京後、さまざまな職を経て作家デビュー。1991年に『ア・ルース・ボーイ』で三島由紀夫賞を受賞。

団鬼六(だん・おにろく、1931年~2011年)…作家。滋賀県彦根市の生まれ。関西学院中学部・高等部、関西学院大学を卒業。代表作に『花と蛇』『黒薔薇夫人』など。

西木正明(にしき・まさあき、1940年~)…作家。新潟県の生まれ。秋田県仙北市の育ち。秋田県立秋田高等学校を卒業。早稲田大学教育学部社会科を中退。出版社勤務を経て作家に。1988年に『凍れる瞳』『端島の女』で直木賞を受賞。

原田宗典(はらだ・むねのり、1959年~)…作家。東京都新大久保、岡山県岡山市の出身。中学まで東京で過ごす。岡山県立岡山操山高等学校、早稲田大学第一文学部を卒業。コピーライターとして活動しながら、1984年に「おまえと暮らせない」ですばる文学賞に佳作入選。

水上勉(みずかみ・つとむ、1919年~2004年)…小説家。福井県大飯郡の生まれ。寺の小僧を経て、旧制花園中学校を卒業。立命館大学文学部国文学科を中退。1961年に『雁の寺』で直木賞を受賞。

宮本輝(みやもと・てる、1947年~)…作家。兵庫県神戸市の生まれ。本名は、宮本正仁(みやもと・まさひと)。私立関西大倉中学校・高等学校を卒業。追手門学院大学文学部を卒業。広告代理店で勤務後、1977年『泥の河』で、第13回太宰治賞を受賞しデビュー。1978年に『螢川』で、第78回芥川賞を受賞。

村上龍(むらかみ・りゅう、1952年~)…作家。本名は、村上龍之助(むらかみ・りゅうのすけ)。長崎市佐世保市の出身。長崎県立佐世保北高等学校を卒業。武蔵野美術大学造形学部を中退。1976年に『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。

解説は元「ダ・ヴィンチ」編集長の亀谷誠

感想

宮本輝の対談が載っていたので購入。

他の作家をあまり気にしてはいなかったけれど、伊集院静や大沢在昌、原田宗典など、自分の好きな人々も多くいて、ラッキーだった。

山田詠美ということで、セクシャルな内容に触れる側面も。

また対談の相手によっては、テーマの深浅もある。

以下、引用などをしながら紹介。

あの六〇年安保のころは、いろいろあったね。このごろ振り返ってみると、あの渦中にあって一番いい顔していたの誰かって言ったら、岸信介だね。(P.39「風俗と文学 石原慎太郎」)

石原慎太郎のことについて、あまり詳しくはないけれど、責任を負っている男の顔の良さという話で、安保改定を通した岸信介(きし・のぶすけ、1896年~1987年)の話。

また、その続きで、沖縄返還を成し遂げた佐藤栄作(さとう・えいさく、1901年~1975年)の顔も称賛している。

なるほど、面白い。

そうですよね。靴がどうやって脱ぎ捨てられていたとか……。だから、文章が上手いということと、小説家になるということは別のことなんでしょうね。(P.308「人生はすべて色事 水上勉」)

ここでは、水上勉との会話で、山田詠美が語った部分。

文章が上手いのは単なる技術。小説家になるには、細かいディテールにこだわる視点、思考が必要といった話。

さらに話は続いて、単に好感が持てる小説や作家に、面白みは無いといった主旨の発言も。

ある程度、作家であるのであれば、エッジの効いた部分が必要といことか。

「教は百軒の店で断られようと思って行け!!」
(P.335「私たちの修行時代 宮本輝」)

小説家を目指している時に、生活面の資金が心許無くなり、営業の仕事を合間にするようになった。

宮本輝はなかなか営業が上手くいかずに落ち込んでいた時、その雇い主から言われた言葉。

文学とかとは関係ないけれど、大切な精神姿勢だと思う。そうすると、心が軽くなり、肩の力を抜けて、意外と仕事が取れたりするとか。

最後まで読了したとき、これはすごい小説や、日本で再考の歴史小説やと思ったね。ついでやから『平家物語』もまた読んでやったんや。(P.345「私たちの修行時代 宮本輝」)

阪神大震災の身辺の片付けが一段落した後、何もやる気が起きずに二カ月休むことになった宮本輝。

長くて途中で嫌になるような本を読もうと思って島崎藤村(しまざき・とうそん、1872年~1943年)の『夜明け前』を読む。

その前にプルーストの『失われた時を求めて』を読もうとしたが、30ページくらいで、面白くなくて止めてしまったとか。

『夜明け前』はとても面白かったようだ。さらに勢いづいて『平家物語』を読む。

しかも、原文でだ。

さすが、作家である。そんな素養があるのかよ、と思った。感想は、最高に良かったというもの。

山田詠美ファンだけではなく、それぞれの対談に出ている作家に興味のある人には非常にオススメの作品である。

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