『武器としての決断思考』瀧本哲史

瀧本哲史の略歴

瀧本哲史(たきもと・てつふみ、1972年~2019年)
経営コンサルタント。投資家。教育者。
麻布中学校・高等学校を卒業。東京大学法学部を卒業。
東京大学大学院法学政治学研究科助手やマッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、京都大学産官学連携センターの客員准教授も務める。

『武器としての決断思考』の目次

はじめに 「武器としての教養」を身につけろ
ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?
1時限目 「議論」はなんのためにあるのか?
2時限目 漠然とした問題を「具体的に」考える
3時限目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する
4時限目 反論は、「深く考える」ために必要なもの
5時限目 議論における「正しさ」とは何か
6時限目 武器としての「情報収集術」
7時限目 「決断する」ということ

概要

2011年9月21日に第一刷が発行。星海社新書。248ページ。

瀧本哲史が、京都大学で学生に教えていた「意思決定の授業」を一冊にまとめたもの。

ここで言うプロフェッショナルとは、
①専門的な知識・経験に加えて、横断的な知識・経験を持っている
②それらをもとに、相手のニーズに合ったものを提供できる(P.32:ガイダンス なぜ「学ぶ」必要があるのか?)

エキスパートではなく、さらにその上の概念となる、プロフェッショナルになるべきだという主張があり、その定義を明確化している。

さらに続いて、エキスパートとプロフェッショナルの違いを端的に説明。

エキスパートは、指示や命令で、自分のやり方を押し付ける。プロフェッショナルは、相手側を理解し、相手側の条件に合わせて、トータルのサービスを提供する。

近視眼的ではなく、より俯瞰的に問題や課題を見つめて、より深く対処するのが、プロフェッショナル。

そうしたら、そこから修正して、新たな最善解を導き出し、また行動に移す。
「知識・判断・行動」の例でいえば、「知識・判断・行動・修正」という4つのサイクルを回していくことで、より良い結論にいたることができるようになるのです。(P.70:1時限目 「議論」はなんのためにあるのか?)

ここの「そうしたら」というのは、前提が変わったり、理由が間違っていたら、ということ。

そのような場合には、シンプルに修正して、新しいその時点での解を出して、実行すること。

世の中には究極の正解というものはないので、そこで考えすぎて、行動に移せなくならないように注意することも必要。

さらに続いて、ブレたり、変化したり、するのは良いことと主張。

「君子豹変す」や「朝令暮改」など、悪い意味で使われがちであるが、改善をしていくことが、より良い生き方に繋がる。

ブレずに、芯があり、真っ直ぐに突き進むことは、思考停止の生き方になってしまうことも。柔軟性も大切。

メリットの3条件
①内因性(なんらかの問題があること)
②重要性(その問題が深刻であること)
③解決性(問題がその行動によって解決すること)
(P.103:3時限目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する)

ディベートでは、賛成側がメリットを提出し、それが反対側のデメリットを上回ることを主張。反対側は、デメリットが賛成側のメリットを上回ることを主張。

ということで、メリットとは何だろうか、という話。

同様に、さらに続いて、デメリットの3条件も提示される。

デメリットの3条件
①発生過程(論題の行動を取ったときに、新たな問題が発生する過程)
②深刻性(その問題が深刻であること)
③固有性(現状ではそのような問題が生じていない事)
(P.111:3時限目 どんなときも「メリット」と「デメリット」を比較する)

ここでは、「日本は原発を全廃すべきか、否か」というテーマを例にして、メリットとデメリットの定義を詳しく解説している。

さらに身近な例や問題なども記載されているので、実際に思考しながら、ディベートの考え方を学べるような構成になっている。

その他に、メリットとデメリットのそれぞれの条件に対する反論はさらに深く考えるための良い方法であることや、根拠とは反論に耐えたものである、といった内容も。

例題や表、図解などが出てくるので、とても分かりやすく読みやすい流れができている。

感想

現状では、2回読み直している本。

役立つ思考方法として、ディベートの考え方をザッと理解できる内容になっている。

メリット、デメリット、反論、根拠、推論、演繹、帰納、相関、因果など、この辺りの用語の定義と繋がり、順序を明確にすると、決断がしやすくなるということ。

仕事以外にも、プライベートでも役立つ思考方法が身に付けられる。

教養については、教養があると状況に応じて、現時点での最適な、最善な、解答が出せるという。

さまざまな条件下において、適切な決断ができるようになりたいと自分も思うので、また読み直そうと思う。

学生をはじめ、ビジネスマンなどにも非常にオススメである。

書籍紹介

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